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【アキラ・コバヤシ】3-8

『国王が哲学することや、哲学者が国王になることは、期待されるべきことではなく、また望まれるべきことでもない。なぜなら、権力の所有は、理性の自由な判断をどうしてもそこなうことになるからである。』(永遠平和のために/Immanuel Kant)


・・・


王都からメリエへと向かって()()()()、コバヤシはただただ急ぎ森の中を走り抜けていた。

その背には赤毛の少女がしがみつき(とても楽しそうである)、更に両脇にそれぞれ一人ずつ女性を抱えている。


「ばびゅ~ん」

その背中の少女はやたらと楽しげに声を上げる。両脇の女性二人は何かを我慢するように口をきゅっと結び、前方をじっと見つめている。

「これが一番酔わない方法かもしれないんじゃないかと気づいたのよ…」

左脇に抱えられている“エルフ”は、抱えられたときにコバヤシへそう告げていた。


右脇に抱えられているルゥという名の“サキュバス”は、抱えられた最初こそ嬉しそうにしていたものの、少し前からメイと同様の状態へと移行している。つまり、酔ってしまっていると言える。

さすがに今後はきちんとした移動手段を作っておかなきゃなと、コバヤシは考えざるを得なかった。


しかし今回は“非常事態”だ、、


彼は、王都で受けたサポセンからの“call”を思い返す。


・・・


『今回の件は、こちら側からしましても、そしてコバヤシ様からしましても、非常に“良くないケース”となってしまっているのです。最悪の場合、、』

そちらの“世界”が壊れてしまうかもしれません。


()()()()()()とは、また大きく出たものだな、、

『“緊急事態”ですので』

サポセンは更に続ける。


『そちらの世界に、()()()が直接干渉することは出来ません』

ですがこのままにしておくのもこちらの本意とは言えません。

『全ては“彼”を()()()として選んでしまったこちら側に責任がございます』

“彼”の行動結果を予測できなかったこちらの不手際です、とサポセン(これはおそらく“奇術師男”だろうとコバヤシは考えていた)は続ける。

『しかしこちらが出来ることはといえば、せめて直近である転生者のコバヤシ様にこうしてコンタクトを取ることぐらいなのでございます』


ただ、、


『もしコバヤシ様が、そちらの世界のために動いてくれるというのであれば、』


こちらとしてはそれを“サポート”する用意がございます


コバヤシは、それを聞くなり「ずいぶんと都合の良いことを、、」と考える。


『もちろんコバヤシ様の自由でございます、』

ただし、、

もしこちらを手伝っていただけるようであれば―

サポセンはコバヤシへ、ある一つの()()をするのだった。


『また、この後しばらくのあいだcall機能が繋がりにくくなるかもしれません』

その“男”の現在位置なのですが、、コバヤシ様が()()()()()()()に―


その時、コバヤシはふと嫌な予感がするのを感じた。

ついさっきの噂話「おい、聞いたかメリエの話、、」


彼の額に、一筋の冷や汗が流れる。


・・・


コバヤシは森を走り抜け、今度は草原を駆けていた。


メリエまで後どれくらいだろうか、、

少なくとも彼の《マップ》にはまだその街の名は表示されていなかった。

日はすでに沈み、辺りを照らすのは月明かりのみである。それでもこの世界では、十分に周囲を見渡せるぐらいの明るさがあるのだった。


この世界が()()()()って、、

コバヤシには“世界が壊される”ということが具体的にどういうものかと上手くイメージすることが出来なかった。サポセンに聞こうにも、あれ以来ずっと繋がらない。


彼は、“ヒーロー”のような動機で行動していたわけではない。それをコバヤシは、自分で一番理解していた。


人が誰かを助けるのは果たしてその誰かを本当に考えてのことだろうか。

おそらくそういった人間も確かに居るのだろう。

しかし、と彼は考える。

誰かを助けたいと願っている()()()まずそこに居る。

その人間を救うことによって、実は自分こそを救っているのではないだろうか、、

そんなことが、彼の頭からはこべりついて離れないのだった。


どちらにしろ、「世界を救うため」などという理由とは()()()ものが彼の、コバヤシアキラという人間の行動原理であった。


メリエのみんなは無事だろうか、、

彼はもちろん、他人の心配も人並みにはする。最初に王都を飛び出したのはこれが原因だとも言うことはできよう。やたらと理屈付けようとするのは自分の悪い癖なのだろうとも思う。

それにしても、と彼は再び考える。

メリエで()()()が起きた。

彼が王都で手に入れることが出来た情報はそれぐらいであった。それからすぐに王都を飛び出してメリエへとこうして向かっているのだった。


ふとそこで、背中に乗っかっている少女が静かになっていたことに気づく。

どうやらそろそろ()()()の時間のようで、なんとかコバヤシの背にしがみついているといった様子であった。


それなりに走ったもんな、、


ちなみに両脇の二人はすでに“死に体”である。

「…みんなごめん、、もう少ししたら休憩するから、、」

それまであとちょっとだけ頑張ってくれ、、

すると両脇からなにやらもごもごという返事が聞こえる。

本当にごめん二人とも、、


「ぅ~ん、、ドラコ、、ぜっとぜっと、、ぜっとぉ、、むにゃ、」


…漫画かな?

背中の赤毛少女がそう呟く。


Zzz...


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