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【使用人と貴族】3-7

ある使用人の話


・・・


その男は、自身も知らなかった“隠し通路”なる通路の中を、自分の主人が付けてくれた護衛の人間と共に走り駆けていた。


この通路は、自分が働いているいつもの屋敷から、メリエ近くの森まで直通で通じているというものらしい、、

そこまで行けば()()()()に備えている馬が何頭か居るとのことだった。

その少し小太りな男は、細い道をぜぇぜぇと走り続けながらも、いまだ館へと残っている自身の主君の身を案じる。

この彼は、メリエを代表する9大貴族の内の一つに長く仕えてきた使用人であった。

そしてこの“隠し通路”を走り抜けているのは、他ならぬその九大貴族である頭首、彼の主人からの命令であった。


ご主人様、、どうか、、どうかご無事で、、


使用人は、自身が仕えている当家こそが、九大貴族の中で最高の名君だと信じていたし、その自信もあった。子供の頃から頭首に直接仕えていたからこそわかることだという自信だった。

通路を駆けるその男の手には、主人から渡された書簡が握り締められている。

こうした状況になったのは、ある一つの報告から始まった。


他の九大貴族が、ことごとく暗殺されていっている、、


そんな報告がされたのは、深夜のことだった。

それからすぐに自分と、そして前を走る護衛だけが頭首の部屋へと呼び出された。深夜に呼び出されたのは初めてのことであり、彼は何か異常事態が起きたのだろうかと考えた。


「それならば旦那様がここから逃げるべきです!」

彼は頭首に向けてそう言葉をかける。長く仕えてきた彼にとってその提言は当然のことであった。

「…私は自分の為すべきことをしてからここを脱出する」

だから心配するな、そのように続ける。

そして私に一通の書簡を渡す。これを至急、王都に居る息子にまで届けて欲しいとのことだった。

「ここを使えば街の外へと出られる」

一番安全な道のはずだ、、

そう告げる頭首の顔は、どこか遠くを見つめている。


しばらくしてから急かされるように、私とその護衛は隠し通路の中へと押し込まれる。


頼むぞ、、


通路の扉が閉まるそのとき、頭首がそのように呟いたのを、私は確かに聞いた。


・・・


ある貴族の話


・・・


使用人たちを通路に押し込んだ後で、その男は()()()()()()()()

クローゼットの奥にあるその隠し扉は、そう簡単に見つけることは出来ないはずだと彼は考える。


最も、狙いが“私”だった場合は、こんなことわざわざする必要もないだろうが、、

彼はそう考えながらも、使用人たちの身を案じる。


その時だった。


「こんばんわ~」

入り口の扉がゆっくりと開き、そこに立っていた“若い男”がそう告げる。


「…何者だ、、」

何の気配もなく突然現れたその男に対して、彼は睨みを聞かせながら尋ねる。

それよりも、ここに来るまで何人もの護衛が居たはずだが、、


「あれ、もしかしてもう俺のこと伝わっちゃてたのかな?」

目の前の男は、こちらからの質問には答えずに続ける。

・・・。

相手に気づかれないように、彼は壁に掛けてある槍へと一瞬目を移す。

何故か相手は何の武器も所持していないかのように見えた。


「だんまりですかー」

そうですかー、と目の前の男は手をぶらぶらさせている。緊張の色などは一切見られない。


「貴様の目的はなんだ、、」

いったいどうやって入ってきたんだ、

彼はいつでも槍へと飛びつけるように身構えながら尋ねる。


「目的?」

あーはいはい目的ねー目的目的、、


「建国」


その男は、よくわからないことを()()()()

何を、言っているんだこいつは、、


「いやー、()()()()さえ牛耳っちゃえば、後は楽そうだしと思ってね」

ほんとは影ながら()()をして欲しかったんだけど、、

「まぁ、それにしてもさ、」

男は続ける。


()()()()一人すでに殺してたからかな?」

()()()で何人殺してもさ、

「特に何も、感じないんだよね」

なんかの“すきる”のせいなのかなー


何を、言っているのだろうか、こいつは、、

「この、、“きちがい”めっ!」

九大貴族の一頭にして現頭首が一人であるセドル・エニ・ユーザリアは、壁に飾られていた槍へと飛びつき、それをその男へと思い切り投げつける。

しかし、


がきぃん、という音と共に、その槍は床へと落ちていく。


「い、、いったい、、どういう、、」

槍は確かに、目の前に居るその男へと突き刺さったはずだった。


なにが、、どうなっている、、


「んーまあ、凡人の攻撃なんざこんなもんだよな」

そう言ってその男は、自身が“弾き飛ばした”槍を地面から拾い上げる。

この槍ついでにもらってくわ


その言葉が、セドルがこの世で聞く最後の言葉となった。


ぐしゃ


セドル・エニ・ユーザリア 享年46歳


※遺体は後に、放置されていたその場所で、腐敗の進んだ状態のものが発見される。

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