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【門、貸し借り】1-10

あくまで体感だが、どうやら半刻というのは30分程度のように思われた。

コバヤシは奥に見えてきた巨大な壁を眺めながら考える。


要塞、と言われても納得できる。魔物を警戒してか人間を警戒してか分からないが、、

巨大な壁の内部が街なのだろう。ぐるっとこの壁は街を一周しているのだろうか。


「あれがメリエの街です」

そう言うリーシアの言葉からは安堵がにじみ出ている。

「思っていたよりもずっと大きい街みたいですね」

コバヤシは近づいてくる巨大な壁の上に目を凝らしながら言う。


「もう少しで西門が見えてくるはずです」

おそらくこの巨大な壁の中へと通じる門がいくつかあるのだろう。


「あれです」

リーシアはそう言いながら前方を指差す。


それはかなりの大きさがある門であった。巨大な両開きの扉が今はどちらも開いており、門番と思われる人間が二人ほどその真ん中に立っている。

二人は小さいながらも剣と盾をそれぞれ所持していた。


あの奇術師男の言うことを信じるならこの世界の文明レベルは中世程度らしいが、、銃火器類の発達はどうなのだろうか。


門の外には自分達と門番以外の人間を今のところ見ることが出来ない。


「少しここで待っていてもらえますか?」

リーシアはそれだけ言うと門番達に向かって一人歩いていく。


どうやら事情を説明してくれるようだが、、

そういえば文明レベルが中世程度の世界でこの格好はどうなのだろう、、リーシアさんは特に何も言わなかったが


リーシアさんと話している門番二人がこちらをにらみつけるように見る。

しばらくすると三人がそろってこちらに向かい歩いてくる。


申し訳なさそうにコバヤシを見ながらリーシアさんが口を開く。

「あの、、コバヤシさん、、」

「はい、なんでしょうか」

「…身分証なんて、持って、ないですよね、、」


あ、、、


そうだ、ここで自分が服以外は何一つ所持していない無一文裸一貫であることにようやく気が付く、、


「……持って、無いですね」

スーツのポケットには財布はおろか携帯すら入っていなかった。もちろんここが異世界だとするならあったとしてもどちらも役には立たないと思うが、、


門番二人の目つきが更に厳しくなる。


そりゃそうか、、こんなにも怪しい人間を街に入れることはためらわれるのだろう。

まいったな、、最悪この街の近くで野営でも試みてみるかなどと考えていると


「あの!」

リーシアさんが口を開く。


「彼は悪い人間ではありません! 私が保証します!」


門番二人はリーシアさんの方を今度はねめつける様に見る。


「先ほども言いましたが、彼が私を助けてくれたのです!」


ん?


「彼の身元はクウォーター家で保障します!」


もしかするとあの時助けたことはとっくにばれていたのだろうか。そんなそぶりはこれまで無かったと思うが、


「…すこしこちらで待っているように」

門番の一人がそう告げ、コバヤシとリーシアを残し、門番の二人は門の奥へと歩いていく。


「あの、リーシアさん。先ほどの、自分がリーシアさんを助けたうんぬんというのは一体、、」

「コバヤシさんがどう主張しようと、私はあのとき助けられたのです」

にっこりと、彼女はコバヤシにそう主張する。

「…そうですか」

いつまでもうだうだと言い訳するのも野暮に思えたので、この話はここまでにしておこう、、


再び先ほどの門番二人がこちらへと帰ってくる。何かを確認、または話し合いでもしていたのだろうか、、

「その男の臨時証明書と入場許可をこちらで発行することにした」

なんと、、思ったよりも頭が柔らかい方だったみたいだ。少し驚く。


「それは、ありがとうございます」

そう言いつつコバヤシは頭を下げると、周りから不思議そうな目で見られる。

何かおかしなことをしたのだろうか、、

「…ただし、街で何か騒ぎを起こした場合は通常の刑罰より多く加罪され、クウォーター家にもそれが至る場合もあると心得ろ」

もちろん騒ぎなど起こす気も無いが、身分をあそこまで保証してくれたリーシアさんには心苦しく思う、、


「…わかりました」

とても大きな借りをリーシアさんには作ってしまっているなと考えながらコバヤシは答える。


「それではまず身分証の発行料と入市税、合わせて6シルだ」

「・・・。」


まずい。。非常にまずい、、


「あの、、、」

コバヤシがどうしたものかと考えながら口を開くと


「私の入市税と合わせて8シル、ここにあります」

リーシアさんがそう言ってなにやらコインのようなものを門番のうちの一人へと渡す。


「…リーシアさん」

あまりにも長い間、他人の優しさに触れていなかったコバヤシは不覚にも涙を流しそうになる。


「必ずや利子をつけてお返しいたします…」


そう言うと、リーシアさんは再びこちらに振り向き、彼女の、魅力的でそして悪戯な笑みを見せるのだった。

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