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【ユウキ・イチノセ Ⅲ】3-3

「へぇ~、ここが“ギルド”ねえ、、」

イチノセは、メリエにある冒険者組合を訪れていた。

彼が目を覚ました場所から一番近い街が、このメリエという街であった。

辺りをぐるりと見渡すと、彼はその“理想の異世界感”に心が震えるのを感じる。


そしてやっぱり最初は“ギルド”だよな、、!

彼はそんなことを考えながらも、受付と思われる場所へと足を進める。


「とりあえずあれっしょ? “冒険者”ランクとかあるんでしょ?」

まあ俺の実力だったらどうせ一番上からで良いんだけどな

イチノセは、先ほどからこちらを見ていた一人の受付嬢へと話しかける。

その受付嬢は一瞬「?」マークを顔に浮かべるが、すぐに「ギルドへは初めてでいらっしゃいますか?」と返してくる。

というかギルドの受付嬢っていったら()()()美人って相場が決まってるだろうがよ、、

彼は目の前の冴えない女性をねめつけながら考える。


「あーそうそう、ギルドって初めてだからさ、とりあえず冒険者として登録したいわけよ」

ぶっちゃけ俺強いよ?

そう受付嬢に告げてから、彼は周りを見回す。


どいつもこいつも、モブみてえな顔しゃがって、、

俺は違う、、とイチノセは静かに呟く。


「そ、そうですか、、」

その呟きまでは彼女に聞こえなかったようだ。


それでは、

「“冒険者登録”をさせていただきますので、身分証のご提示をお願いします、、」

受付嬢は少しびくびくしながらもイチノセに対しそう告げる。


「あーはいはい、“身分証”ね、、」

そう言って彼は、受付へと一枚のカードを差し出す。


・・・


彼がギルドを訪れるその少し前…


「「止まれ」」

二人の男が、イチノセ(《言語踏破スキル》使用)に対してそう声をかける。二人の声からは警戒の色が強く感じられた。

「身分証を出してもらおうか」


「…は?」

イチノセは、尋ねてきた男を睨みつける。


ようやっと街を見つけたと思ったら、、“身分証”だぁ?


「…すんませーん、いまちょっと持ってなくってー」

なんで新しく作ってもらっていいっすか?

彼は舌打ちの後にこう続ける。


「身分証を新しく発行する場合は再発行料が必要になる」

門番と思われる男はそう告げる。


「・・・だりぃわ」


《精神魔法;対人》


イチノセは試しに自身の“スキル”を一つ使用してみる。

すると突然、彼の前に立っていた門番二人がゆらゆらとふらつきだす。


へぇ、、()()()()()なるのか、、

彼は(おそらくは)この街の門番だろうと思われるその二人の様子を観察しながら、スキルの効果について少し考える。


「んじゃおつかれさん」

そしてイチノセはそう言すと、門番二人に“みぞおち”を決める。

「がっ!」

「うっ!」

気を失って倒れそうになった門番二人を、イチノセはそのまま受け止める。


さてと、、、

彼は両手に抱えながらも、その二人をそのまま()()()森の中へ連れて行く。幸いなことに誰にも見られてはいなかった。

大の男二人(鎧着用)を担いでも全く重くない、、きっとステータスの恩恵だろう。

そんなことを考えながらイチノセは再び笑みをこぼす。


ドサッ


担いでいた“荷物”を森に入った少し奥の地面へと降ろす。ここならば人目も気にならないだろうと彼は考える。


まずは、、

イチノセは、降ろした“荷物”の所持品をあさり始める。


「…これか、、?」


彼は門番の一人から“木製のカード”のようなものを見つけそれを取り出す。そこには、おそらくこの界隈の言語であろう言葉で男の名前らしきものが記されていた。スキルのおかげでなんなりとこの言語も読むことが出来る。


模倣コピー


彼は更に手持ちスキルの一つと、そして手近にあった手ごろな木を使い、それと全く同じような“木製のカード”を作成する。


《偽造》


そして次に、そのカードへ自分の名前を刻んでいく。これは手近にインクのようなものが無かったので、()()()()()()()利用することにする。


「…こんなもんか、、」

男は、完成したカードを少し眺める。


あとは、、

とりあえずの資金も調達させてもらおう。


こうして彼は、()()()()()、メリエの街へとその足を踏み入れるのだった。


・・・


― “ユウキ・イチノセ” ?

見たことも聞いたこともない珍しい名前だわ、とネリネはその差し出された身分証を見て考える。どことなく名前の響きが“あの人”に似ているような気もした。


「はい、確かに、、」

ではこのギルドの説明をさせていただきますねと、彼女は続けようとする。

「あーそういうのいいっていいって」

どうせだいたいは分かってからさ

目の前の“イチノセ”と名乗る男は、そう言ってネリネの言葉をさえぎる。


“彼”の見た目は、喋り方の印象よりもずいぶんと幼いように見える。もしかしたらまだ二十もいってないぐらいではないだろうか。前髪が長く、その目は隠れがちであり、なおかつあまり正面と向かって喋ろうとしない。またその名前の響きだけではなく、彼の髪の色が真っ黒なのも“あの人”と良く似ていた。


だけど態度は()()()違いだわ、、

目の前のこのイチノセとかいう男が入ってきてからずっと、ギルド内がぴりぴりしているのを感じる。

まあ無理もないわね、と彼女は考える。

しかしイチノセは、そんなこと知ったことではないといった感じで更に続ける。


「とりあえず“魔王”居たらソッコーで倒しに行こっかなって」

え? んだよ居ねえのかよ

「んじゃドラゴンとか倒しに行くわ」

“ドラゴンスレイヤー” ユウキ・イチノセとかっこよくね? はは

「え? なんだよそれもねえのかよ、、」

は? 最初はこの最低ランクのしか受けられない?

「いや俺()()つええからそんなん無視して余裕っしょ」

ちっ、使えねえなてめえら

「んじゃなんか金になりそうなアイテムとかモンスターとか教えてよ、ソッコーで取ってくっから」

はいはい、それじゃちょっくら稼いでくるわー


“彼”は、そう言うなり、高笑いしながらその場を後にする。

冒険者になったばかりの人間のなかには、いわゆる“ビッグマウス”と呼ばれるような行動を取ってしまう人間が居ないこともない。そしてその誰もが、例外なく“現実”に打ちのめされ、ある者はその命すら失い、ある者はその口を閉ざす。


その時ギルドに居た誰もが、先ほどの男もどうせそういう類いだろうと考えた。

すぐにでも忘れてしまうだろうと。


誰もが、その時はそう考えていた。


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