『あの嵐の中で。目撃者達の証言まとめ』
王都での混乱が収束した後に報告された、いくつかの不可解な証言をここに記す。
Case.1 “王塔”を駆け登り飛び降りる人間?
「私は見たのです! えぇ! あの嵐の日のことですわ! 間違いありません! お父様に言われていたので私は部屋の外に出ることすら出来ずに窓から街の様子を眺めていたのです! 確かに最初は自分の見間違いかとも思いました、、けれどあれは間違いなく人間でしたわ! 王塔を、まるではしごか何かのように“ひょいひょい”と登っていったのです! 雨で視界が悪かったのですが間違いありませんわ! その人間は頂上近くまで登りきるなり辺りを“ぐるり”見回し、かと思うとなんとそこから“ぱっと”飛び降りてしまったのです! えぇえぇ、わたし嘘などついていませんとも! ぜひ他の人間たちにも聞いてくださいまし!」
Case.2 屋根の上を駆ける人間?
「え、えぇ、そうです…。妹と一緒に南門へと避難しようと向かっている最中のことでした。いえ、、妹はまだ幼いので、ええ…。雨のせいではっきりとした色はあまり自信が無いのですが、、おそらく紺色のローブだったかと思います…。はい、、そうです、、え? そうですね、、たぶん男性だったのではないでしょうか…。そうです、、家の屋根を、次々とまるでスキップしているかのように、でもかなりのスピードで駆け抜けていたんです…。私はしばらくあっけに取られてその姿を凝視してしまいました、、え? いや人を呼ぶほどのことだとは考えませんでした、、えぇ、、周りはかなりの混乱状態でもありましたし、、えぇ…」
Case.3 城壁を登る人間?
「そりゃあたしだってその時は自分の目を疑ったよあんた。あん時はちょうどウチのとはぐれてしまってたとこでね、まああれだけ人でごった返してたらねえ…。だからあたしゃ北門の前からちょっと離れて、兵士さんにでもウチの旦那を探すの手伝ってもらおうかと思ってね、、ほんとどうしようもな人だよ…。え? あぁそうだったね、いや、あたしが見たのはそん時だったのよ。最初はなんか動物か何かが壁に張り付いてるかと思ったんだがね、ほら、トカゲとかそういうのとか、、でもよく目を凝らすとそのするする登ってくそれは人間だったわけよ。まぁ間違いないと思うね、あたしゃ目は良いんだから、こないだだって、、え? ローブ? あぁそういえばそうだね、、え? うーん、、“紺”だったと思うね…それがどうかしたのかい?」
Case.4 突然の青い火
「いやホントだって! だから何回言ったら信じてくれんだよ! そう東門! なんかどぁああってすっげえ炎が見えて! え? いやだからすぐに消えちまったんだって! でもあの魔物達の死体見たでしょ!? え? 見てない? いやすごかったんだから! え? いやだからそんなの見えなかったって! こっちからは結構距離あったしさー、てかそれ調べんのがおたくらの仕事でしょー え? もう? いやいやもうちょっと聞いていってよ! 俺が考えるにあれはさー…」
Case.5 空から降り注ぐ何か
「はっ! 自分は王立軍第5部隊…、、、はっ! かしこまりました! その通りであります! 自分は、西門の城壁上を偶然監視していたところでした。はい。確かに南門にほとんどが集められていましたが、自分は隊長の指示に従い西門へと向かったのであります! はっ、外に人影は無かったと記憶しております…。最初、自分はそれが魔物による攻撃かと思ったのであります、、え、えぇ、はい…。いえ、、自分が見た、見えたのは、何かが落ちて、、いや降って?きたところであります、、え、えぇ…。い。いえ、、そこまでは、、しかし砂埃が収まったかと思うとその辺りの魔物はあらかた、、えぇ…。いえ、、人間の姿はなかったかと、、」
現在、王立軍はこれらの事実確認を進めると共に、証言者たちの精神鑑定も平行して実施することとしている。
なお、このうちの一人については鑑定の必要なし。詳細は別紙にて。
その証言は“真実”として、調査の継続を行うものである。
調査官 ディオッソ・スラー




