【“着信”】2-32
そろそろ日も完全に落ちるかというところだった。
沈んでいく夕日は、周りを囲む城壁のせいで王都の内側から眺めることはできなかったが、上空に広がる茜の空を見るだけで、その美しさは簡単に想像することができる。
王都内はすでに平穏を取り戻しつつあったが、様々な場所で復興作業が行われているようであった。無理もないかとコバヤシは考える。
そういえば、、
「ゼフィーさんは大丈夫だろうか、」
コバヤシは気になったことをふと呟く。
「あー、、あの人なら大丈夫よ」
意外と強いのよホントに、そう言うメイの顔には少し笑みが見える。
別に“意外”でもないなと、コバヤシはあの筋肉を思い出しながらも、それを口には出さなかった。
城壁の外で沈みゆく夕日を想像しながら、彼は今後の予定を考える。
「みんな、聞いて欲しい」
コバヤシは三人の方へ向けて自分の考えを伝える。
復興作業を手伝いたい気持ちはあるが、、
「出来るだけ早くこの王都からは離れようと思う」
今回は少し、色々と派手に動きすぎたと思う、、
さすがに自分があの魔族を仕留めただなんてことをばれるはずはないだろうが、それでもやはり今回は、念のために早めの避難をと考えるコバヤシだった。
「とりあえずこれからメリエ行きの旅馬車が出ないかだけでも確認してくるよ」
まあまだおそらくは無理だろうがと思いながらも、彼は動き始める。
― おい聞いたかよあの話、、
しかしそこで彼の耳に、一つの会話が聞こえてくる。
― …メリエが、、、
メリエ? メリエがどうかしたのだろうか、、
コバヤシは少しだけそちらへ耳を傾けようとする。
その時だった。
ジリリリリリリリ…!
突然コバヤシの脳内にけたたましいベルの音が鳴り響く。
あまりに突然のことに彼は頭を抑える。ベルの音はまだ鳴り響いている。
なんなんだいったい、、
こめかみを押さえながらもコバヤシは、そこで自身の“call”が点滅していることに気づく。
どういうことだと、少しそちらに意識を向ける。すると、
『突然に申し訳ございませんコバヤシ様』
ところどころジジッジジッという途切れるような音と共に、これはもしかしたら最初の奇術師男だろうか、サポセンの声が聞こえてくる。
「アキラ、大丈夫!?」
メイとルゥの二人が心配そうにこちらを見つめていた。
コバヤシは二人に大丈夫だと言って手を振る。
ドラコもこちらをじっと見つめていた。こちらは何を考えているかは分からない。
『緊急の…ジジ…事態が…ジジジジ…せいしまし…ジジ』
ノイズがひどく、ところどころ聞き取れない。
『これから…ジジ…話すのは…』
そこでぷつんと、一瞬止まる。
『“第四次転生者”についてでございます』
ノイズが消える。




