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幼年期7

 訓練で父親と走っているときに先日の彼の母親のために金を手っ取り早く稼ぐ方法を聞いてみた。


「お父さん、なんの前例もない人間が大金を手っ取り早く稼ぐ方法ってないかな?」


 父親は走りながら、しばらく頭の中で話を組み立ててから口を開いた。


「あるにはある。ただしリスクがとんでもなく高くなるぞ」


「一応聞いてもいいかな?」


「例えば、この町の近くにある山に住み着いている怪物を討伐すると数年は暮らしていけるほどの大金で売れるだろう」


「それはリスクは……」


「簡単に死ぬぞ。小作人にすらなれない捨て子とかの中にはまれにそういう魔物を討伐で成功したという話もあるがおとぎ話レベルだな……。どうしてそんなことを聞くんだ?」


「えっ、いやぁ。好きな女の子に何かプレゼントしようと思って……」


「ああ、なるほど。俺と違ってお前はそういうのに積極的なんだな。でもプレゼントは金額じゃなくて気持ち。つまりどれだけそのプレゼントに自分の時間をかけるかだぞ」


「そうなのかなぁ」


 前世の記憶の同僚の話では、プレゼントの金額が低すぎて離縁したとか聞くけどなぁ。


「というか、プレゼントを金額で測るような女と仲良くしようとするとかそれこそ時間の無駄だぞ」


 そういわれてその視点は確かに自分になかったなぁと思いなおす。


「そっかー。ありがとう。俺も自分でプレゼントを作ったりするよ」


「それがいい。俺はそこをはき違えてたから失敗したんだよなぁ……」


 おいやめろ、母親と不仲なのじゃないかと思ってたけどそんなこと言われたら普通の子供は心に傷を負うぞ。


「それって子供にいうことかな?」


 そういわれて父親は頭をかいてつぶやく。


「そうだな。ごめんな。俺が本当は解決しなきゃいけない問題なんだよな……」


 この父親は悪人じゃないというより間違いなく善人なんだけど、いざという時の我の強さとかが足りないんだよなぁ。


 どんな人間にも欠点はあるんだし仕方ないけどさぁ。


「なにか僕にできることがあれば相談してね」


 そういって愛想笑いをしておく。


 絶対に巻き込むんじゃねぇぞ!俺は人間関係に関してはまじで子供以下なんだからな!


「ハハハ、子供に心配されちゃぁおしまいだな。ごめんな」


 そういって朝の訓練を終えた。


 家に帰り、そのままで私は町に向かった。


 先ほどの父の話の中で出た魔物と呼ばれる存在の情報を得るためである。


 この方法をとるにしても情報は必要だからである。


 私の身分が騎士の息子であったためか、その問題の山について聞くとみんな父が解決のために私に情報収集していると思ってたくさんの話をしてくれた。


 特に山に近い場所で農作業をしている小作人はそれはそれは弁舌に話をしてくれるものであった。


 すまねぇ親父ぃ……。


 父親にあらぬ期待をさせてしまったが、その話を要約すると、


 1、魔物の大きさは2メートルぐらいの人型。ただし目は一つだけで肌は緑色をしている。


 2、魔物は農作物を求めて畑に姿を現し人間を襲うこともある。その場合父親たちの自警団が追い払う。


 3、その魔物は人間を引きちぎったりするほど怪力である。


 4、その怪物を討伐するために必要になる金額が損失を大幅に上回るから領主は討伐するつもりはない。


 ゲームで言えばトロールとか名前がついてそう。


 んー。どこかの大企業の工場では作業場の安全に投資するよりも、ケガをした人間に慰謝料を払ったほうが安く済むから安全性がある程度ないがしろにされるとかと同じ不平等のにおいがするなぁ。


どこでも、というよりこちらの世界のほうがそういう不平等は横行しやすいか。


そもそも爵位とか最初から明確に身分差別があるし……。


 さてこれを私やジャックでやれるかといわれると厳しい、というか無理だな。


 どうすっかなぁ。どうやって金を作ろうかな。


 アイディアで勝負できる商品とかはたいていは娯楽品だけど、そもそもこの町の住民にはそんな娯楽を買えるか金がねえんだよなぁ。


 そう思って歩いているとちょうどよく問題の渦中にいるジャックに出会った。


「アック。なんか聞いたぜ、いろんな人間に魔物のことを聞いてるって。お前の親父が討伐してくれるのか?」


「いや、そうじゃないよ」


「そ、そうか。ちょっと期待してたんだけどな……。じゃぁなんでそんなことを周りに聞いて回ってるんだよ」


 私はジャックに今までの話をした。


「なるほど。確かにその魔物を討伐すれば母さんの治療費は稼げるな」


「お前俺の話を聞いてたか?リスクが高すぎるって話をしたつもりなんだけど……」


「うるせぇな。というかお前ちょくちょく上から目線だよな。むかつく」


「え、ああごめん」


 ああ!、やっちまった!前世でもこの性格が何度も災いを生んだのに!。


 私は何となく彼に何か話す気力をなくしてしまい、彼がひとりで考え込んでいるのを一抹の不安とともに見守っていることしかできなかった。




 その日の夜。


 自警団の武器庫に忍び込む1人の人間がいた。

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