暗躍
第6話 暗躍
深夜3時過ぎ。
カジノバー二階の社長室。
あの紳士が座り心地の良さそうな椅子にゆったりと座っていた。
その前には悪さをして怒られてる子供のような黒崎が立っている。
「黒崎、どうゆうことだ?」と、その男は静かに言った。
声は優しいが男の持つ雰囲気は周りに緊張感と恐怖を与える。
いつもは傍若無人の黒崎だが、この男の前だけではうつ向いて震えている事しかできない。
「何故吉田を殺した? 殺しは嫌いだと言って置いたはずだが?」
「社長、すみません。吉田が突然暴れたので・・・」
社長は真っ直ぐに黒崎を睨み
「答えになってないな。お前なら殺さずに簡単に取り押さえられたはずだ」と言った。
「・・・」
「お前はあの女に惚れている。だから邪魔な吉田を殺したのか?」
「・・・」
「俺はまた県警本部長の桜井に頭を下げなければいけなくなったじゃないか。あの下劣な男に」
「すみません・・・」
「なぁ黒崎、俺はお前が好きなんだ。俺を本気で怒らせないでくれ。頼むよ。」
その言葉に黒崎は震えあがった。
「申し訳ありませんでした」
黒崎は知っている。
社長が怒ると凄まじく恐ろしい事を。
黒崎はひたすら謝り続けるしかできない。
恐怖の時間が黒崎を襲う。
黒崎が耐えられなくなりそうになった時、社長が思い出したように黒崎に尋ねた。
「ところで、あの男とはどうゆう関係だ?」と、社長が聞いた。
黒崎には誰の事だかわからない。
恐る恐る黒崎が尋ねた。
「すみません。あの男とは?」
「お前がこの前殴りかかろうとしていた男の事だ」
社長がそう言うと黒崎の顔が少し歪んで
「彼奴は・・・彼奴は俺の人生を狂わした男です」と、怒りを絞り出すように言った。
社長はじっと黒崎の顔を見つめて
「なるほど、彼奴がお前に黒星をつけた最初の男か。しかもお前の惚れてる女も彼奴の事が気に入っている見たいだしな。彼奴が憎いだろ? 黒崎」
黒崎の顔が更に歪む。
「はい、長年恨んでいました」
「良い事を教えてやろう。彼奴は探偵だ。そしてもうすぐ此処に潜入してくる。彼奴を捕まえろ。そしたら今回の事は見逃してやる」
「探偵? どうしてここに?」
「それを聞き出すのがお前の仕事だ。もうヘマはするなよ」と、社長は冷たく言いはなって黒崎に出ていくように手で合図をすると電話をかけた。
「深夜遅くにすみません。西崎です」
「西崎君、困った事をしてくれたね」
「桜井さん、また迷惑をかけます」
「西崎君、いくら本部長の私でも殺人を揉み消すのは大変なんだよ」と桜井は嫌みたらしく答える。
「解っています。それなりのお礼はさせて貰いますので宜しくお願いします」と、西崎は下手に出た。
「まぁ君と私の仲だから頑張ってみるが。お礼の方は奮発してもらわないとな」
「納得いくものを用意するつもりです」
「そうか。俺たちは一蓮托生だからな。はははっ!!」と、笑って桜井は電話を切った。
(下衆野郎が)
西崎は苦虫を噛み潰したような顔で呟いた。
(いずれあいつも地獄に突き落としてやる)
西崎は不気味な顔をして呟いた。