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カジノバー

第2話 カジノバー


3日後の週末にマサが吉田を連れて待ち合わせ場所に現れた。


マサはいつもと違いスーツ姿だったがまるで似合っていない。


「おい、マサ。まるで七五三だな」と俺がからかうとマサはちょっと怒って

「だって10年ぶりのスーツだから・・・」と言い訳した。


吉田は普通のサラリーマンで独身の一人暮らし。


見た目もどこと言って特徴はないが、ひとつだけ気になるのは目が落ち着かない事だ。


(何か隠しているな)

と俺は感じたがマサには黙っていた。


俺は吉田に愛想よく挨拶して、三人はさっそくカジノバーに向かった。


その店は表通りから一本入った五階建てのビルにある。


玄関入口から、ある部屋に連絡し、顔確認の後オートロックが解除される。


エレベーターは二階の受付に直行だ。


他の階には止まらない。


一階から二階に行く階段は封鎖されていて通れない。


つまり二階の受付を必ず通ら無ければならない仕組みだ。


エレベーターには当然監視カメラ。


受付では会員証と同行者の身分証の提示を要求された。


受付を済ました後、二階から三階には階段で。


三階の店に入る時は黒服が身体チェック。


携帯は預けなければいけない。


異常とも言える用心深さだった。


そして漸く店に通される。


入って右奥に長いバーカウンターがあり、中央には数台のルーレット、左側はバカラやポーカー、ブラックジャックなどのテーブルが並んでいる。


ディーラーは皆可愛いバニーガールだ。


俺はバーカウンターに座り、フレンチコネクションを頼んだ。


吉田とマサはルーレットで遊んでいる。


俺は店内を改めてじっくりと観察した。


カジノ特有の喧騒と矯声、歓喜と怒号。


煙草の煙と暗い照明。


週末の夜という事もあって店内は混んでいた。


年齢層も幅広い。


若い女は大体禿げ親父に連れて来られているし、若い男達は有閑マダムの燕だ。


世の中は狂ってる。


ここはその縮図とも言える場所だ。


よく観察していると、入ってくる客の中には黒服に連れられて直接奥の扉に導かれる人達がいた。


みんな金持ちそうだ。


顔を隠してはいるが有名な芸能人やスポーツ選手、知識人と呼ばれる人達もいた。


(どいつもこいつも腐ってやがる)


俺はバーテンに

「奴らはどこに行くんだ?」って聞いた。


バーテンは

「興味があるなら上の者に話して見ますが」と言った。


馬主のバッチを然り気無く付けてたのをバーテンは見逃さなかったようだ。


暫くして年配の黒服がやって来て俺を奥の扉に案内してくれた。


そこはまさに欲望の坩堝と言える場所だった。


広さはさっきの部屋の半分くらいだが内装は豪華になっている。


俺はとりあえずカードで百万円分のチップと交換しブラックジャックの席に座った。


ディーラーは美しい女だ。


テーブルには俺を含め三人。


ひとりは誰もが知っているプロ野球選手だ。


レートはチップ一枚五万円。


ディーラーが「プレイスユアベット」と合図した。


俺はベッティングエリアにチップを二枚置く。


後の二人もチップを置いた。


ディーラーが

「ノーモアベット」と言いカードを二枚ずつ配っていく。


俺のカードは7と8


俺はテーブルを軽く叩く。


ディーラーがもう一枚カードを配る。


5だ。


俺は手を横に振る。


俺は20


ディーラーがカードを開く


6とクイーン


もう一枚引く



俺達の勝ちだ。


チップが2枚増えた。


今度はチップを4枚置く


俺のカードはジャックと9


俺は手を振る。


ディーラーのカードは2と3


当然もう一枚引く



さらにもう一枚


4だ


また俺の勝ち。


他の二人は負けだ。


ディーラーが俺を見つめた。


綺麗な顔が少し悔しそうだ。


俺のチップは8枚になった。


その8枚を置く。


カードが配られる。


俺のカード


スペードのジャックとエース


ブラックジャックだ。


美しいディーラーは呆れたように俺を見ていた。


そして軽く微笑んだ。


俺はここで席を立ちディーラーに礼を言ってこの部屋から出て行く。


チップは24枚増えて合計44枚。


金額にして220万円。


120万の勝ちだ。


チップを現金に代えてマサの所に戻って行く。


マサは夢中でルーレットにはまっていた。


「マサ、帰ろう」


「え〜拳ちゃん、もう少しだけ」


「駄目だ」と言ってマサの目を睨んだ。


吉田に挨拶して俺はマサを連れて二階の受付に降りて行く。


受付で携帯を返してもらう時に会員証を渡された。


「またのお越しをお待ちしています」と黒服が意味ありげに言った。


俺は

「ああ、また直ぐに来るよ」と笑って言ってやった。


エレベーターで一階に降り外に出ると漸く俺は安心して


「この仕事はかなりヤバイな」と俺はマサに言った。


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