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地上にステラ

「面目ありません……」


 イアさんは、可哀想なほど青い顔をして俺とルナに謝罪をした。


 ルナの力で眠らせていたイアさんの記憶を念の為に消した後に起こしてからというものの、イアさんはずっと謝りっぱなし。


 今は階段を登りながらコツコツという足音と、イアさんの謝罪が響いている。


 いや、眠らせた俺達が悪いんだが、それを言ってしまうとややこしくなっちゃう為イアさんの謝罪を受け入れるしかない。


「いいんですよ。ほら、今日はいろいろありましたから」


 俺は謝罪を受け入れつつも気にしなくてもいいと伝えても、イアさんは首を横にふる。


「いやいや、まさか職務中に眠ってしまうなど、あってはなりません!」


 さすがクソ真面目なイアさんはだが、元凶の俺達は謝られる度に胸が痛んでしまうわけで。


 それに、いろいろあったと言ったところで俺の腰にグッと力も入った。レイスも気にしてるのだろう。


「まあ、ほんとにいいですから。な、ルナ」


「そうですよ。前さんが気にしなくていいって言ったのなら、それは王命で気にしろと言われたところで気にしなくても良いのです。世の摂理です」


 ダメだ、同意を求めてはいけない奴に同意を求めてしまった。


 俺信者である女神は、真面目な顔でふざけたことをぬかしおり、俺は同意を求めた事を後悔した。


 イアさんはなんか言いたげで、でも言えないようななんとも言えない表情をしており俺としても申し訳ない気持ちになる。


 違うんだイアさん。俺もこんな事になるなんて思わなかったんだ。


「お、王命を超える程とは思いませんが、私の為にフォローありがとうございます」


 イアさんは、無理矢理考えたような言葉で礼を述べた。まあ、俺だってイアさんの立場だったら同じような事をしていたかもしれない。


 そんな微妙な空気にさせたルナはというと、なぜか誇らしげな顔をして俺のことをチラチラ見ていた。


 さながら、わからせてやりましたよ。すごいでしょ。と言いたげに。


 ああ、ツッコミを入れたいが今大げさな動きをしてなんらかのアクシデントでレイスの存在がバレたら厄介だ。


 もう少し、光が見えてきてるからあと少し登れば寝室前まで自分で戻れる。


 登り切ったらイアさんと別れてルナにツッコミをいれてやる。


 俺はルナの誇らしげな顔にツッコミ欲を抑えながら登り、ようやく地下から地上へと登り切った。


「ふう。ようやく登れたー。イアさん、ありがとうございます。ここからは俺とルナで戻ってくので部屋までの案内は結構です」


「左様ですか。では、私は戻りますゆえ、御用の際はまたお申し付け下さいませ」


 イアさんに礼を述べると、イアさんは軽く頭を下げ、食堂の方へと戻っていった。


 王様に報告をしに行くのだろう。


 イアさんが角を曲がって行くとこを見送った瞬間、俺はルナを見やると、ルナはなぜか照れたように頬を赤く染めた。


「ふふ、いきなり私を見つめるだなんて。さては、先程の事に対するご褒美ですよね? ちゃんと説明できた私偉いですもんね。褒めてもいいんですよ」


「褒めるかバカ。イアさんのあのなんとも言えない表情忘れられないわ。あの人があんな困惑するなんて後にも先にもお前だけしかできん」


「ほ、褒められると思ったら貶されるなんて……。ショック……」


 ルナは大袈裟に、芝居がかったように悲しげにつぶやく。


 食堂からフォークを持ってきたら良かった。後悔しかない。


「くそ、今フォークがあれば刺してやるのに」


 俺は右手を握りしめながらボヤいていると、不意に俺の後ろからすっとフォークが現れた。


「でしたら、これをお使い下さいませ」


「ありが……えっ?」


 淡々と渡されたフォークに、俺はお礼を述べながら掴んで、ピタリと止まった。


 恐る恐るフォークを渡してきた主を確認すると、ステラさんが済ました顔でそこにいた。


 え、なんでいるんだ?

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