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すねるチョロイン

ようやく、シリアスひと段落

「あ、前さんおそーい! 全くもう、私を寂しがらせるなんて素晴らしい度胸ですね。私は会えない数秒ですら会いたくて会いたくて震えてるのに。あ、もしかして前さんは私の愛を試してるんですか? そんな、試さなくても私の愛は間違いなく前さんだけのものですよ。ただ、会えない間に私の愛を増幅させようという考えのもとでしたら、その考えはあってますね。この短い期間の中で私の愛のパーセンテージはストップ高ですよ。さあ、寂しい私にあなたの温もりを、さあさあ」


 帰ってきていきなりルナが鬱陶しい。


 なんなんだこいつ。どうしてこんなテンション狂ったんだ。


 さっきまでシリアスだったじゃないか。バランスとってるのか?


 俺が引き気味でいると、表情に気付いたのかルナは自身の両手の人差し指をツンツンと付き合った。


「前さんの表情が冷たいです。だってー、せっかく私いっぱい活躍したのにご褒美少なくないですかー?それなのに前さんはレイスさんにハグされてるし、ちょっと鍵閉めに行っただけでしばらく帰って来ず放置プレイだし。私、ちょっと蔑ろにされてません?」


 ちょっとじゃないよ、だいぶだよ。


 ルナの不満をつらつらと聞くが、蔑ろにしてる自覚はある。


 だが、ルナがまともであればここまで蔑ろにはしないんだが。


 とはいっても、頭撫でるだけじゃダメになってきたんだろう。


 チョロインがチョロくなくなってきたし、なんとかしないとな。


 とはいえルナを頼らなければならないのも事実だし、不本意だが謝っておくか。


「すまないな。だが、ルナをどうしても頼らなければいけないし、実際頼りにしてるんだ。だから、頼むよ、ルナが頼りなんだ」


 俺は頭を下げて本心で謝る。


 こんなとこでへそ曲げられても仕方ないし、もし許してもらえなければちょっとくらいルナの言う事聞くことにする。そういう決意を持って頭を上げると、ルナは顔を真っ赤にして両手を頬に当てて恍惚とした笑みを浮かべていた。


「前さんが私を頼らなければならない……。私を頼りにしている……。私が頼り……。うへへ」


 ルナはじゅるりとヨダレをすすり、女神とは思えない表情でニヤニヤしている。


 ダメだこいつ、威厳なんてねえ。


 だが、好都合だ。このまま一気に褒めて機嫌なおしてもらうか。


「ルナが一番の頼りだ。頼むぜ」


「私が一番!? ……ふふふ、まっかせてくださーい!」


 計画通り。


 一気に目をハートに輝かせるルナを見て、俺は内心ほくそ笑んだ。


 どうあがいてもルナはルナだ。


「よし、それなら早速頼らせてくれるか? イアさんを起こしてくれ。もちろん眠らせた記憶を消してな」


「わかりました! 前さんの一番である私に任せてください!」


 ルナは胸をどんと叩いて、イアさんの元へ屈むと、手をかざしブツブツと呪文を唱え始めた。

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