真実 その五
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「まあ、ちょっと用事でね。気分はどうだ?」
扉越しにジンに声をかけてみると、ジンの苦しそうな笑い声となよなよとした返答が返ってきた。
「ふふ、こ、こんな所に用事ですか。ぜ、ゼン様には驚かされますね。き、気分は最悪です。と、言いたい所ですが晴れやかですよ。き、霧が晴れたような気分です」
ジンも憑き物が落ちているような雰囲気を感じる。
きっとスキル封じの影響のところだろう。
「多分、ジンは自分の気持ちを思い込まされてたんだろう。確証はないけれど、ほぼ確実だと思う」
「ははは、お、面白い事をおっしゃられますね。き、気持ちを思い込まされてたですか。……あるかもしれないですね。ぼ、僕はとんでもない事をしでかした。い、今では震えてるんです。な、なのに、あの時の僕は僕じゃなかった。な、なんであんなことしちゃったんだろうと思うと震えが止まらないんです」
ジンの声音が震える。信じられない事をしでかした後悔と恐怖が彼の心を蝕んでいるのだろう。
本来のジンはあまり強気な方ではない。あの時の戦いが異常だっただけで、今は正気に戻ったような状態なのだろう。
それ故に、事の大きさを自覚してしまったのだと思う。
「倒した俺が言うのもなんだが、大丈夫か?」
「い、いえ、倒された僕が言うのもなんですが、倒してくれてありがとうございます。ゼン様のおかげで、間違いを犯し続ける事なく終われました」
相変わらず苦しそうな声ではあるものの、ジンの震える声が心なしか穏やかに落ち着いた気がする。
「まあ、さっきも言ったが、ジンは操られてたんだと思う。なんだったら牢から出て真犯人探す手伝いをしてくれるとありがたいんだが」
「ふふ、ぼ、僕が悪いと言わず操られてたことにしてくれてありがとうございます。し、しかし、僕は今とても怖いのです。て、手助けしたくても怖くて。……ごめんなさい、僕はいけません」
牢から出すという提案をジンから断られる。
その声は本当に申し訳なさそうでか細い。
まあ、無理強いは出来ないだろう。
協力を得られないのは残念ではあるが、真相を見つけ出していつか助けてあげるか。
「わかった。だが、待っててくれ。いずれ真実を明らかにして帰ってくる」
俺は一方的に約束し、返事を聞かないまま扉の前を後にする。
ジンの事だ、そんな事をしなくてもいいと言われると思ったからだ。
だから、これは俺の一方的な押し付けの約束だ。
悪い事をしたら反省はすべきだ。だが、その理由が本人の意思に関係がない場合は、適切に判断されるべきとも思う。
今、ジンがこの牢にいるのは適切なのだろうか。
状況だけ考えればしでかした事の大きさからはここにいるべきだろう。
だが、俺の推理通りであれば、別の視点の考えも必要だろう。
だから、俺は真実を明らかにしてやる。
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