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街へ入るあまり良くない手段

 オネに対する質問コーナーも終了したという事で、また歩き出し門の前までたどり着いた。


 近づけば近づく程気付かされるその石壁の高さに、すげえと一言声が漏れた。この先には何が待っているのだろうと、期待半分、不安半分な気持ちである。


 門の前にはRPGでよくあるようなプレートメイルに身を包み、腰に剣をぶら下げた兵士が二人立っていた。一人は若く、一人はヒゲを蓄えたおじさんである。


 俺達が近付くと、若い兵士が驚いた顔を見せてすぐに剣を握った。


「止まれ、そこの男と銀髪の女。怪しい格好をしてるな」


 怪しい格好だと? 全身ユ●クロでスニーカーって普通だと思うんだけど……。と悩んで二秒で思い出す。


 しまった、ここは異世界じゃないか。ルナもレイアもなんのツッコミもしなかったけど確かに浮いてるよな。


 ルナのローブもまあレイアと比較すればジャンルが違う。レイアはRPGでいう中世時代の村娘が着る庶民の服装に身を包んでおり、おそらくこれがスタンダードなのだろう。


 しかしどうしよう、ヘラヘラ笑ってごまかしてはいるが解決策が思いつかない。


「怪しい者を通すわけには行かない。通行手形、もしくは身分を証明出来る物を提示しろ」


 若い兵士は警戒を解かないまま、通行手形か身分証明書を要求したが、残念な事にどっちも持っていない。


「ルナ、俺って身分証明出来る?」


「失念してました。少し時間があれば偽造出来るのですが」


 この女神様は相変わらずとんでも無い事をさらっと言う。


 女神がこんな事言っていいの? 絶対ダメじゃない?


 いや、まあ仮に出来るとしてこんな警戒されてる状態だと、急に偽造した証明書出す訳だから最悪捕らえられるよなあ。


 これは詰んだかもしれない。


 と、思っていたのだが俺が若い兵士と対峙している間にレイアがおじさん兵士の方へと向かい何やら話し込んでいた。レイアがボソボソとおじさん兵士に耳打ちし何かを渡すと、おじさん兵士は若い兵士の前へと出た。


「失礼致しました。どうぞ、お通り下さい」


「え? いやいや、しかし先輩……」


「しかしではない。私が許可を出すんだ。さあ、どうぞ」


 納得いってないような若い兵士をよそに、おじさん兵士がニコニコと笑いながら門を開いて俺達を促す。


 不気味な程の掌返しではあるが、ラッキー展開である事には変わりない。ありがたくその申し出を受け取る事にした。


「なあ、一体何をしたんだ?」


「さあ? なんだろね?」


 門を抜けてすぐにレイアに尋ねてみると、レイアは悪戯っぽい笑みを浮かべてキラリと光るコインを見せてきた。


 成る程、賄賂か。全く、うちの女性達は犯罪者ばかりとは恐れ入る。


「なんにせよ、助かった。ありがとう」


「助けられたからお互い様だよ。それにお礼はまだ早いかな。私のお礼はここからだよ」


 そう言ってレイアが前を指差す。


 その指差す先には活気溢れる市場が広がっている。屋台のような小屋にバスケットいっぱいの果物を売る店、吊るされた洋服を売っているお店が立ち並んでいる。


 そこに、動物の耳や尻尾を持つ人、機械の身体の人、皮膚が泥や土で出来てる人など多種多様様々な人が居た。


 感動で言葉が出ない。俺は異世界を全身で感じていた。


「さあ、何をしよっか」


「とりあえず服を買いたい。俺もルナも浮いてて恥ずかしい」


 若い兵士が怪しいというのも理解出来る。


 それくらい俺とルナの服装は浮いていた。


 道ゆく人の目線が気になる。ジロジロと見られてるし、見世物じゃないと言いたい。


「じゃあまずは服を買いに行こっか。ゼンの服、選んであげる」


「あ、レイアさん、それは結構です。前さん、私とお揃いの服にしませんか?」


「ルナ、残念ながらゼンの服は私とお揃いの予定だから」


 なんで目立たないように服装変えようとしてるのに目立つ事しようとするかなあ。と、服の事で喧嘩を始めたルナとレイアに呆れる。


 ちょっと喧嘩しすぎ感も否めないので、ここは一度お灸を据えるか。


 胸に悪戯心を芽生えさせつつ、俺達は服屋のある方へと向かった。

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