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真実 その四

「ふう、まず、分身はレイスとしてまた戻って下さい」


「わかりましたわ」


 現れた右手側のレイス、もとい分身はレイスに命じられたまま扉の奥へと入っていった。


「すごいなあ、瓜二つじゃないか」


「分身体ですからね。あと、スキル封じの壁の影響を受けて分身体が消えるのもまずいかと思いまして、分身体の表面にスキル封じを付与してます。よって、スキル封じをスキル封じしてます」


「とりあえず、消えないのはわかった、ありがとう」


 分身体が消えないようにしているのであれば大丈夫だろう。


 ルナの機転に感謝しつつ、見えないレイスを探る。


「レイスはどこだ? いたら俺の腰を掴んでくれ」


 見えない虚空に声をかける。


 すると、俺の腰辺りを掴まれる感触を感じた。


 どうやらちゃんといるようだ。


「よし、とりあえずの準備は完了だな。って、ルナどうした?」


 ルナは頬を膨らませながら俺の腰辺りをジロリと睨んでいる。


「むー、抱き着くまでは許可してませんよ!」


 え、俺抱きつかれてるの?


 ルナの抗議を聞いて、腰辺りを見渡す。


 見えないだけによく分からないが、意識すれば確かに抱きつかれてる……のか?


「くうう、前さんの指示じゃなければ透明化(インビジブル)なんて使ってないのにいいいい! 解除したいいいい!」


 ルナは抱きついている? レイスを憎らしげに見つめ悔しそうな声を漏らす。


 やばい、ルナの情緒が乱れてきた。


「解除すんなよ? ほら」


 俺は慌ててルナの頭を撫でてごまかす。


 するとどうだろう。ルナの顔は一瞬にして般若の形相から笑顔に変わった。


「ふ、ふふ、そうですよね。前さんは私の為に嬉しくなる事をしてくれる、私の為に色んなことしてくれる、私の前さんですもんね。浮気を許すのも妻の甲斐性。いや、むしろ前さんがモテて嬉しいと感じるまであります」


 ……チョロすぎるぞ、ルナ。


 呟いている内容は理解しがたいが、機嫌がなおったみたいなので良しとする。


「じゃあ、脱出だ。とりあえず、分身体のいる部屋に鍵をかけて、イアさんを起こそう。起こしたイアさんの記憶は消せるか?」


「はい、起きたらすっかり忘れてると思います」


「よし、じゃあ実行していこう。レイスはここで待っててくれ。スキルが解除されるのはまずいからな」


 見えないレイスに指示を出すと、腰回りの感覚がなくなる。


 ルナはそれを見て嬉しそうにしているし、離れたのだろう。


 俺はレイスのいた牢まで戻ると、分身がいる事を確認して鍵をかけた。


 その足でレイスの元へ戻ろうと、足を向ける前にもう一つ鍵のかかった部屋の前で立ち止まる。


 そういえば、ここには誰がいるんだろう。


 ジンか?


 俺は扉の前まで近付いていくと、扉を三回ノックした。


「……誰がいる?」


 呼びかけるといくつか間を置いて、声が返ってきた。


「……その声は。どうしてここにいるんですか?」


 その声は、やはり予想通りジンがそこにいた。


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