真実 その三
よろしくお願いします。
ただでさえ音がない空間の音がさらに死んでいくほど無音を感じる。
一時間が経ったかのような数秒。
ルナの言った事がとてつもなく重大で重い。
「おいおい、という事はこの国を滅ぼそうとしてる奴のレベルって一国どころか世界すら壊すような奴なのかよ……」
ようやく絞り出す事ができた言葉。
あまりにも強大すぎる敵の見えた尻尾。
ルナは否定をしない。無言の肯定ととらえても差し支えはないのだろう。
「そうなってくると、レイナとそのブラッドの繋がりがわからないな」
「……もしもの話ですがよろしいですか?」
より推理を深めようと悩む俺に、恐る恐る手を挙げてレイスが発言する。
なんだろう?
俺はレイスの方を向くと、聞く姿勢をとった。
「お姉様は、この国を真の平等にしたいと言っていました。王も平民も貴族も奴隷も何も無い真の平等に」
王様が言っていたレイナは違う考えを持っているというのはこの事だろうか。
もし、真の平等という理想に対して限界を感じていた時に、ブラッドという強大な力が現れたとしたら……。
「ルナ、今回の件はレイナが黒幕、裏でブラッドって奴が糸を引いてるのは明らかだと思う。そして、今現在国を混乱に陥れようとしているのであれば、ソアレって奴のいる国にも何かしらの影響を与えてるかもしれん。この国と関係のある国だからな」
「で、あれば次はそちらの国まで行くという事でいいんですかね?」
「ああ。早ければ明日にでも出発しよう。今日という事件がどんな影響を与えたかわからない。ニックとアンさんにはアルデバランの方まで説明をしに行ってもらい、まずは俺達で向かおう」
「いいですけど、どうやって?」
「あ」
取り急ぎの指針は定まったものの、行く為の手段がない。
なんならどうやってブラッドとの関連性を探るかもわからない。
急ぎ過ぎた穴だらけの指針。だが、一刻を争う。
「……そうだ。レイス、お前はソアレと仲は良いんだよな?」
「え、ええ。昔馴染みですわ」
「よし、だったら付いてきてくれ」
「「……え?」」
俺の突拍子もない提案に、レイスだけでなくルナもキョトンとした顔をする。
二人の声はハモり、俺を見つめていた。
「い、いやいや、ゼン様? わたくし、自分で言うのもどうかと思いますが一生の幽閉をされておりますのよ? 出られるわけありませんわ!」
「大丈夫大丈夫。ルナえもんがなんとかしてくれるから。な、ルナ。バレないようにやってくれよ」
慌てふためくレイスをなだめつつ、ルナに話をふる。
「え、いや、出来ますけど。本気ですか?」
「本気だ。なんだったら真の黒幕をとらえてレイスの無罪も勝ち取る気だからな」
「……前さんって私の事規格外とか思ってるかもしれないですけど、前さんの考えってよっぽど規格外ですよね。まあ、いいです。妻は黙って夫の三歩後ろを付いていきます」
誰が夫だ。とツッコミたくなるが、今ヘソを曲げられても困るので何も言わない。
ルナは呆れ顔になりつつも、腕を回してやる気を見せた。
「分身召喚! 透明化!」
そう唱えたルナは右手は何もない空間を、左手はレイスをとらえて掌をかざす。
するとどうだろう。右手の先からは、レイスが現れ、左手の先にいたレイスはその場からいなくなっていた。
次回投稿は3/18




