真実 その二
よろしくお願いします。
「レイス、レイナは本当に死んだのか?」
「はい、この手で確かに。……あれ? お姉様は死にましたの? 私が……どうやって殺しましたの? 思い出せない」
俺の質問に、レイスは頭を抱えて悶え出す。
絞り出すようにブツブツと呟いてるが、明瞭な答えは返っては来ない。
「ルナ、レイスの状態は元に戻せるのか?」
「もちろん。私を誰と思ってるんですか?」
なかなか頼りになる返事をしてくれるよ、ルナは。
これで発言がダメよりじゃなければいい奴なんだがなあ。
「頼むよ」
言葉少なにお願いすると、ルナはコクリと頷いてレイスの頭上に手をかざす。
「ぐっ……! あああああああああああ!!!!」
すると、レイスは苦しみだし、悶絶しながら獣のように唸り声をあげた。
「ルナ! レイスはどうしたんだ!?」
「今、思い込みを元の状態に戻しました。つまり、頭が正常な状態に記憶を整理したのです。今は記憶が混濁してしまったので混乱してるのでしょう。じきに、良くなります」
ルナは、レイスにかざしてた手を頭に乗せてレイスの頭を撫でる。
良かった、問題はないみたいだ。
未だ苦しそうな声をあげてはいるが、ルナは大事な時には適当な事はしない。大丈夫だろう。
少しずつレイスは荒かった呼吸を整えていくと、ゆっくりと顔を上げた。
額には脂汗が出ており、前髪がおでこにペッタリとついてしまっている。
「大丈夫か?」
俺が声をかけると、レイスは俺を見つめ凛とした表情で口を開いた。
「はい。思い出しましたの」
「じゃあ、やっぱり生きているのか」
「ええ。お姉様はわたくしの思い出した記憶の中では死んだと思えと言ってましたの。何でと思ったのですが、意識した途端になぜだか不意にお姉様が死んだと思ってしまったんですの」
確か思い込まされてたと言ってたのだから、意識させてしまえばそう思ってしまうのか。
それは厄介な能力だな。
レイスの説明を聞きながら、顎に手を当てて頭を悩ませる。
「どうしてそんな事をしたのかはわかりませんの。ただ、あの日のお姉様はお姉様のようでどこか違った。服装が庶民的な服装でしたの。あと、もう一人いましたの。お姉様の側に。確か、『ブラッド様の為だ、躊躇うな』と言ってましたの」
「! 本当にその名を出したのですか? 間違いないのですか?」
レイスが記憶を辿りながら出した情報。
その中で出たレイカと違う人物と、その人物が発したブラッドという言葉にルナが大きく反応して、レイスの肩をゆすった。
「ちょ、ルナ様! い、痛いですの……」
「答えなさい! ブラッドと発したのですね?」
痛がるレイスに尚も質問をいや、詰問するルナ。
流石にやりすぎだ。
「ルナ! どうした! 落ち着け!」
俺はレイスからルナを引き剥がすと、レイスは怯えたようにへたり込み、ルナは服を正して頭を下げた。
「すみません、冷静をかきました」
「だ、大丈夫ですの。でも、どうしたんですの?」
ルナの謝罪を、怖がるようにレイスは受け入れた。
「……ブラッドは、前さんを、勇者を呼んだ目的です。ブラッドから、このオネを救って欲しいのです」
次回更新は3/17を予定しております




