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レイスの心を知りたくて

よろしくお願いします

「ここから先の部屋となります」


 イアさんから案内されたのは城の地下深く。


 階段を何段降りたかわからない。灯りは蝋燭が灯す心細い光が十メートルに一つ。


 ただただ無機質な足音が三人分響くだけ。


 そうして五分程降りた、その先にその扉があった。


「成る程、スキル封じなど対策は完璧にしてあるんですね」


 まじまじと扉を見つめて納得した様子のルナを見て、イアさんはほうと息を漏らした。


「いやはやルナ様はご慧眼ですな。ご明察の通りです。どんな犯罪者でも逃げる事は出来ないでしょう。さて、この扉の先に閉まっている扉が二つございます。一番奥の扉がレイス様の扉となっております。鍵をお渡ししても?」


「あ、受け取ります」


 イアさんはひとしきりルナを褒めた後、扉の先の説明を淡々とされる。


 そして、鍵を一つ取り出すと俺に手渡した。


「万が一がありますので、ゼン様、ルナ様が入られましたら扉を閉めさせていただきます。私が鍵をかけたのを確認してからレイス様の扉を開けて下さいませ。また、お話が終わられましたらお声がけ下さい」


「わかりました」


 イアさんが注意点を伝達し、俺が了承すると、イアさんは目の前の扉に鍵を差し込み捻った。


 かちゃりと高い音が響き、イアさんがノブを引くと、ギイと金属の軋む音、ゴゴゴという重たい音を鳴らしながら扉が開いた。


「それでは、行ってらっしゃいませ」


 イアさんが手を扉の先まで差し向けて会釈をする。


 この先にレイスがいるのか。


「ルナ、行こうか」


「はい」


 俺とルナは恐る恐る扉の先へと進む。


 視界の先にはまだ距離があるものの、十個程扉があり、五個ずつ左右に分かれている。


 左側の奥側から二つ扉が閉まっており、残りは扉が開く開いた状態になっている。


 恐らくは手前にはジンがいるのだろう。


「ゼン様、一度閉めさせていただきますね」


「あ、はい」


 扉前で待機していたイアさんの声にハッとして返事を返す。


 俺の返事を聞くや否や、イアさんは扉を閉めた。そして、かちゃりと高い音が鳴ったのを確認すると俺は受け取った鍵を見つめた。


「前さん、突然どうしたんですか?」


 二人きりになってすがにルナは声を潜めて質問をしてくる。


 まあ、それはそうだよな。


「いや、これだけ大きな事が起きてたのに呆気ないなと思ってな」


「呆気ないと言いますと?」


「あっという間に終わったというかなんというか。いい事なんだと思うんだけどさ。いや、正直捕まえたあとにあそこまで変わったレイスを見て憑き物が取れたのかなと思ったんだけどあれは最早別人になってたよなあと思って」


 思い返せば戦ってる最中のレイスは凶戦士も真っ青な狂ったお姫様だった。しかし捕らえた後はどうだろう、本当に別人のようになっていた。


 戦ったから反省したのかもしれない。


 いや、むしろそうだと思うんだが何よりも王様と話した事が少し引っかかる。


「それに、レイスとレイアって同じような育て方をしていたらしい。正直戦ってる時のレイスはおかしい人だったが、戦った後のレイアを思うレイスは、国を大切に思うレイアと同じで温かい人と感じた」


「確かに、言われてみれば別人のようになってましたね」


「捕まえる前と後の違いって、スキル封じの縄だけどさ。これは俺の推理だが……レイスに催眠系のスキルをかけた第三者がいたと仮定して、スキル封じの縄で縛った事でその催眠スキルも封じられたとしたらどうだろうか」


「!? ……すごい推理ですね。暴論くらいです。ですが、考えてもなかったです」


「可能性はあるか?」


「わからないです……。ただ、ないとも言えません。わからないが適切です。した事がないので」


「やっぱりか。だから、ルナに来てもらったんだ。した事がないならしてもらおうと思ってな」


「え? それはどういう事ですか?」


「いいからいいから」


 俺はルナの返事を聞かずに歩み始める。


 ルナは慌てて小走りに俺の後ろを付いてきた。


 そして、一番奥の扉に辿り着くと、息を一つ吐いて声をかけた。


「すみません、起きてますか? 前です」


次回更新は3/13を予定しております。

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