女神と姫とのバトル。からのイアさん
よろしくお願いします。
王様は、快くとは言い難いが渋い顔でレイスとの面会を了承すると、イアさんを手招きレイスのいる牢までの案内を指示した。
イアさんは驚いたが、今回は特に何も言わず事務的に頷いた。
「陛下、それではゼン様をご案内させていただきますね」
「うむ、頼んだぞ」
イアさんは指示された内容の遂行を王様に確認し、王様は頷く。
そこで、俺は恐る恐る右手を挙げた。
「あのー、すみません。あそこで暴れてるルナも連れて行ってもいいですか?」
キョトンとした表情の王様とイアさんに、申し訳なく思いつつ左手でルナを指差す。
「ダメったらダメです! 前さんは私だけいたら十分なんですから!」
「えー! 連れてってよー!」
ルナは、レイアと言い争っており、先程神妙な顔で話してたのは何処へやら。今は怒りの顔できゃーきゃー言い合っていた。
恥ずかしい。いつも王様に何か言う時ルナは暴走している気がする。
あれ? 暴走してる気がするどころじゃないよな? 割と暴走してるよな?
王様が苦笑いを浮かべ、イアさんがやれやれと肩を竦めた後、どうぞと掌をルナ達の方に差し向けた。
俺はそれは深く頭を下げると、そろそろ取っ組み合いを始めようとする女神と姫の元へと駆けた。
「絶対ダメですからねー! というか、私と前さんは愛しあってるから割り込む隙間はな……」
「誰が愛しあってるだ!」
「ひでぶっ!? ぜ、前しゃん。フォークで刺すとかついに殺意を感じますよ」
妄言を吐き散らすルナの頭目掛けて机の上に転がっていたフォークを突き刺す。多分死なんだろうと根拠無しに突き刺したが、抗議をするくらい元気そうなら大丈夫だろう。
涙目で頭をさするルナを睨みつけると、悲しそうに口を紡ぎ、レイアにニヤニヤと笑われていた。
「ちょっと付き合って欲しい所があるんだ」
「え? 付き合って? そんな、告白なんて心の準備が……ってうそうそうそ! 前さん冗談です! フォークはしまって、そう、そのままゆっくり置いて!」
話が進まなくなる為ボケられないようフォークをちらつかせるとルナは慌てて取り繕い、フォークを下ろすように懇願する。
もう一発刺しても良かったが、これ以上やっても仕方ないしフォークを机の上に置く。
ルナは安心したように胸を撫で下ろしていた。
「で、何ですか? どこに行くんですか?」
「いや、ちょっとな。付いて来て欲しいんだ」
「? まあ、わかりました」
ルナは眉を潜めたが、特に詮索する事なく了承してくれた。
良かった、今詮索されると少しややこしいからな。
そう思ってちらりとレイアを見ると、ニヤニヤした顔が一転、頬を膨らませて目を釣り上げていた。
「じゃあ、話はまた今度ですね。私の前さんがどうしても私を呼ぶから行かないと行けなくなっちゃって」
「むー! ぐぎぎ……!」
勝ち誇って煽るルナを、悔しそうに歯ぎしりして睨むレイア。
これ以上ここにいるとまた喧嘩して長くなりそうだ。
「ルナ、挑発するな。レイア、すまないがそういう訳だから少し借りてくぞ」
「え、あ、前さん強引に引っ張らないで下さーい! 強引なのはベッドの上……あいたー!!」
喧嘩を始めようとするルナの腕を掴み、イアさんの元へと向かう。
またしても変な事を言うルナの腕をつねって黙らせつつ、お待たせしているイアさんの元へと向かうと、イアさんはなんとも言えない生暖かい目で俺とルナを見つめた。
やめろおっさん。あなたは真面目なタイプなんだからこっち側の反応するんじゃない。あらあらまあまあみたいに口に手を当てるな。
イアさんまでもがちょっとノリに付き合うようになってしまった事にゲンナリしつつ、案内をお願いし、俺とルナはイアさんの後へ続いて歩き出した。
次回投稿は3/12日を予定しております。




