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勇者である事を知る

 森を歩く事三十分。


 後ろでの痴話喧嘩は絶える事は無かったが、それ以外は特に問題なくあのエニグマとやらも出て来なかった。


 異世界を感じた事といえば魔法とエニグマくらいで、それだけでも十分凄いっちゃ凄いんだけどなんだか、物足りない。


 ……なんて思っていたらいきなりどーんと現れたよ、異世界っぽいのが。


 森を抜け、開けた草原の先の方に石壁が広がっているのが見えた。


 広大な大地に広がるその光景にRPGの街の入り口を思い出す。これだよ、これこそ異世界なんだよ。


「おー、でっかい壁だ。レイア、あれがレイアの行ってた街?」


「そう、あの先には街が広がってるよ。ドレートって街。色んな商人や冒険者が行き交っているからたくさんの種族が入り混じっているよ。魔王との戦争のあと最初に復興した街だったかな?」


「ちょっと待って、気になる単語がすごく出て来たんだけど」


 さっきまで全然だったファンタジー要素が、今のレイアとの会話の中でてんこ盛りになって出て来た。


 何、冒険者って。何、種族って。何、魔王って。そんな沢山の情報、すっごくワクワクする!


「ごめん、ちょっと聞きたいんだけど、冒険者って何?」


「え、冒険者って、冒険者だよ? 常識だよ?」


「そ、そうなんだ」


 レイアは俺の質問に対してそんな事も知らないの? と言いたげな目を俺に向けて来た。


 俺は異世界人で、ルナ様は女神様なので君の常識は俺たちの非常識なんです。


 一般人がいないパーティだし、そんな不思議そうな目で見ないでくれる?


「私達の住んでた所はここから凄く遠い所でして、少し常識に疎い部分があるかもしれません。なので教えてもらえませんか?」


 すかさずルナの言いくるめが入る。上手い言い訳だ。それにオネの常識を知っておく良い機会かもしれない。


 ここはルナに便乗しよう。


「俺からも頼む。街に入るのに、あまり恥はかきたくない」


「そっか、それなら私の答えられる範囲なら答えるよ」


「すまない、助かるよ」


 快く了承してくれるレイアに感謝し、頭を下げた。


「えっと、冒険者はギルドの依頼を受けて稼ぎを出す事を生業としている人の事だね。モンスター倒したりしてるよ。どの街にもギルドがあるし、登録をすればどの街でも依頼を受けたり狩ったモンスターを売ったり出来るよ」


「なるほどなー。んじゃ、種族は?」


「種族っていうのは、私達なら人族になるんだけど他にも三種類種族がいるの。動物の身体能力を持つ獣人族や、機械で作られた機械人族、突然変異して物質が生命を持った魔人族の四つだね」


「四種類も!? すげえ!」


 レイアの話は聞けば聞くほど興味がそそられる。ファンタジーをなんかようやく感じている気がする。


 あとはさっき触りを聞いたけど一番気になるし重要な勇者と魔王についてだ。多分、この話こそが俺がここに来た目的だと思う。


「最後に、魔王については?」


「それは伝承になるんだけど、千年前に魔王トザーデとさっきの四種族の戦争が起きたの。でも圧倒的な力を前に人々は為す術も無かったんだけど、女神様の加護を受けた勇者が魔王を討ったとされているの」


「え?もう倒しているのか?」


「違うわ。そこで終わりではなくトザーデは復活を宣言しているの。いつかは不明だけど、伝承どおりならトザーデが復活した時にはまた女神様が次の勇者に加護を与えるという話」


「な、なるほど」


 勇者と魔王の話をかいつまんでやると、昔勇者が魔王を倒したけど、魔王はいつか復活を宣言。で、復活した際には女神様が次の勇者に加護を与えると。


 うんうん、成る程ね。その勇者って多分俺じゃねえか。


 という事はだ。魔王は復活しているという事か。それが俺がここに来た目的か。少なくとも今聞いた話だけでまとめるならそうなる。


 おいおいおい、人々が為すすべもなかった相手にさっきまで一般人だった俺が勝てるのか?


 加護どころか女神様本人がついて来てるからある種最強は最強だけどさあ。


「他には聞きたい事ある?」


「そうだなあ、その都度聞かせてもらうよ。今は入って来た情報がかなり多くて。ルナは?」


「私は、いつ前さんと二人きりにさせてもらえるか聞きたいですね」


 とんでもない話を聞いてもなおルナは平常運転である。


 いや、まあ召喚をした本人なんだからそりゃそうだよな。


「そうだなあ、あんたがゼンの半径十メートル離れてくれるなら考えるよ」


「ふふふ、冗談が得意なんですね。張っ倒しますよ?」


「冗談じゃないんだよなこれが」


 せっかく喧嘩をやめたと思ったのに早くも喧嘩を再開する二人。


 俺はその二人に呆れつつも諌めた。


「はいはい、喧嘩するなー。とりあえず何もないなら行くぞー」


「「はーい」」


 喧嘩を止めて二人を促すと、二人の返事が綺麗にハモる。


 仲良しだな、と心の中で笑ったが当人達は再度睨み出した。

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