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窮鼠猫を噛んだと思ったら噛み返される

 俺がすみませんでしたと言った瞬間、イアさんがジンさんの元へと転移する。


 ジンさんは呆気にとられ、なんの反応も出来ずイアさんに突き飛ばされる。


 おかげで、ジンさんの剣はルナ達から離れた。


 それを見届けて、俺は左手の平の上にポチを乗せると、その背中に右手で銃を作って光の玉を作った。


 イメージする。当たっても痛くないゴムボールのような玉を。


 ルナに教わって良かった。ルナに教わったから、助けられる。


 アンさんの方向へも狙いを定め、ポチに光の玉を放った。


「うおおおお!?」


 雄叫びを上げながら、ポチが俺の手の平から射出されていく。


「なっ!」


 ジンさんは倒れ込み、レイス様は慌てて駆けていくが、間に合いはしない。


 ポチがポトリとアンさんの側に落ちると、アンさんのロープに噛み付き噛み切った。


「アンさん、転送だ!」


「……!」


 俺の真意を汲み取り、アンさんはこくりと頷くと目の前から消える。


 そして、一瞬のうちに俺の隣にルナ、ニック、アンさん、イアさん、ポチが現れた。


「形成逆転だな」


 俺は右手をレイス様に向けながら、呟く。


 ポチがルナ達のロープ全てを噛みちぎると、ルナ達は自分で猿轡を外して立ち上がった。


「ぜ、前さん。その、捕まってすみませんでした……」


 ルナは伏し目がちに俺に謝罪する。


 謝ることないのに。


 だが、珍しくしおらしいルナを見て、俺は少し笑ってしまった。


「いいんだ、ルナも万能じゃない。でも、無事で良かった」


 そう言ってルナに微笑みかけて頭を撫でる。


 ルナは一瞬で茹で蛸のように顔を赤らめあわあわし始めた。


「それよりも、ルナに手を出したあいつらを謝らせないとな。許す気はないけど」


 右手はレイス様から外さず睨みつける。


 同様に、レイス様も俺を睨みつけている。


 先程までの笑顔は無くなっていた。


「ジン、どうしましょう? 想定外ですわねえ」


 レイス様は、吐き捨てるようにジンさんに言う。


 ジンさんは右手の拳を地面に着けて頭を下げていた。


 明らかな失態だろう、人質を逃したんだ。ここから逆転の目はないはずだが。


「すみません……。プランを変えます。レイス様、お願いしてもよろしいでしょうか」


「ええ、構わないですわ」


 ジンさんの言うプランが分からないが、レイス様は了承する。


 そして、レイス様が右手はジンさん、左手は壁に触れた。


 瞬間、轟音が響いてジンさんの身体が盛り上がっていく。


 まさか!


「しまった、錬金術だ! みんな外に出ろ! ニック、レイアを頼む!」


「分かった! レイア様、来て下さい!」


「え? 待って! ゼン、私も居させて! は、はなして……!」


 ジンさんの右手が、左足が膨らんでいくのを目の当たりにして俺は指示を飛ばす。


 ニックは俺の出した別指示の通り、嫌がるレイアの手を引いて部屋の外に出て行った。


 イアさん、ステラさん、ロカさんも部屋から飛び出して、残ってるのは俺、ルナ、アンさん、そしてレイス様もジンさんだ。


 みるみるジンさんの身体が大きくなっていき、元の身体より二倍程のサイズに膨らんでいる。


「前さん、まだまだ大きくなってます! 城の壁を泥に変えて、全てジンさんの身体を構築してるみたいです!」


 はじめて聞く切迫したような声で、ルナが叫ぶ。


 そんな声出せたんだと思いつつ、ルナのその言い方に事態は割と深刻である事を理解する。


「クソッ、今攻撃しておくか」


 敵の変身を待つ事なく、俺は右手の銃を変身しているジンさんに向けた。


 悪いが、待ってあげる程優しくはない。


「ゼン! 危ないんだぜ!」


「え? う、ああああああ!」


 だが、ジンさんが不意に動き出し俺をその太くなった腕で突き飛ばす。


 ポチが叫んだが、反応する事は出来ずにまるで車が正面から飛び込んできたような強い衝撃に、悲鳴を上げながら飛ばされてしまった。


 痛くはないが、壁を数枚貫通して、最後に感じる浮遊感。


 懐かしいな、オネに来る時以来だ。なんて感じる間も無く、重力に身体が負けていく。


「……ゼン君、捕まって!」


 走馬灯でも見ることになるかと思ってたが、目に入ったのはアンさんと、アンさんの左腕に捕まるルナとポチ。


 転送で来てくれたのだろう。ありがたい。


 俺は伸ばされたアンさんの右手に捕まると、一瞬で地面に座り込んでいた。


 た、助かったのか?

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