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細いワイヤーのような可能性

「だがよう、早速嗅いでいるんだがお嬢の匂いがここにしかないんだぜ。扉の方から匂いがしないんだぜ」


 くんくんと鼻を鳴らして部屋を物色するポチだったが、早速行き止まりにぶつかる。


 扉から出ていないって、じゃあどっから出て行ったんだ?


「もしかしたらスキル? ほら、アンさんて転送スキル持っていたから」


「ああ、そういえばそうだったな」


 それなら忽然と姿を消し、なおかつこの部屋にしか匂いが残っている理由も納得出来る。


 ただ、そうなると何故消えたのかという理由が説明出来ないんだよな。


「いや、お嬢がスキル使えるような状況ならオレがこんな召喚されるのおかしいぜ」


 ポチはポチで納得できないのか理由をつけて否定する。


 まあ、俺よりもアンさんとの付き合いがあるんだ。概ねポチの意見は間違ってはいないだろう。


「うーん、でも分からないんだぜ。謎だー!」


 ポチは混乱してるのか、落ち着かずにくるくる回る。


 俺も謎が深まってばかりで混乱状態だ。


 まずは整理した方がいいかもしれない。


「ちょっと、状況を整理しよう。先手を打たれた以上無闇に動いたらダメだ」


「……そうね」


「そ、そうだぜ!」


 レイアとポチは俺の意見に同意してくれた。


 よし、推理を進めよう。犯人が動いたということは、少なくとも今城の中に黒幕がいるはず。


 今日聞いた話から黒幕を絞っていこう。


「まずはジンさんとロカさんから聞いた話だ。狙われたのはひと月前。そして、さらに一週間前、お見合いがあったんだよな?」


「うん。お見合いはつつがなく終了して、お姉様とソアレの婚姻は確定って矢先の事だったね。確かに思い返せばそれ以降だよ、私達が狙われるようになったのは」


 レイアが考え込みながら、情報に補足する。


 きっかけはお見合いを前提で進めてみよう。


「じゃあ、お見合いがきっかけだとして、なぜそれがきっかけとなったかだ。あり得るとするなら相手の国の中にそれを良しとしないものがいるか、こちらの国が納得しないかだが」


 あくまで素人考えで意見を述べる。


 正直政治には詳しくない為、きっかけを考えるとするならばこう思うといういたってシンプルな考えともいえない思いつきでしかない。


「少なくともノーブルは隣国とのパイプが持てるから利はあっても害はないかな。相手も、三男であるソアレが婿入りして時期王になる。決して悪い話ではないと思う」


 俺の意見に対し、レイアが良く噛み砕いて否定する。


 恐らくはもっとこういう理由があってゼンの考えは間違っている。と、言うんだろうが、俺の知能レベルに合わせて説明してくれるのは本当にありがたい。


 だがしかし、ここで否定されてしまうと結局は、レイア達を狙う理由がここで無くなってしまう。


 恨みこそあればそれがきっかけで火がつきそうなものだが。


「うーん難しい話をしてるんだぜ。オレにはちんぷんかんぷんだぜ」


 ポチはオレとレイアの会話が全く分からないのか、伏せをして顔を地面につけていた。


「もっとシンプルじゃないのか? 例えば、恋慕抱くとか! オレならお嬢が結婚するなんて言った日にゃあそいつ嚙み殺しちゃうぜ」


 おお、物騒なこと言うわんちゃんだこと。なんて事を言うんだ、全く。


 ……だが、考えもしなかった意見だ。


 今まで俺はレイア達を狙うイコール国ぐるみで狙っている内容だと思っていた。


 だがしかしだ。


 個人的に狙っているとしたら?


 俺の頭の中に、ある人物の台詞が思い出された。


『ソアレはわたくしを一人の人間として見てくれましたわ! ですからとっても大好きなんですの』


 レイス様の言ったこの言葉。とっても大好きが、友愛ではなく愛情だったなら、姉のお見合いがつつがなく終了したと聞いて、どう思ったのだろう。


 ワイヤーのようなか細さを感じる一つの可能性。


 レイアを見ながら、その可能性を口に出すのが躊躇われた。

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