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レイス様再び

 たくさんの情報が追加されたので、一旦整理をしたい。


 俺の足早にルナ達の元へ向かう。


 せっかくもらった情報、忘れるわけにはいかない。


「ゼン、色々聞いたけど整理できそう?」


「どうだろう。今はこんがらがってるけど、こんだけ情報があれば分かる事もあるかもしれない」


 レイアの質問に曖昧ながらも答える。


 自信はないが、得た情報が使えないとも限らない。


 整理をすれば別の何かを掴めるかもしれない。それくらい今持ってる情報は増えているからだ。


「ふんふんふーん! あ、ゼン様! 奇遇ですわね!」


 正面からご機嫌そうに鼻歌を歌ってレイス様が現れる。


 早く戻りたい時に限って、足止めってあるよね。俺だけかな?


「もー、レイスお姉様、そんなスキップしてはしたないですよ」


「む、レイアはお母様に似てきましたわね。折角の再会なんですから細かいことは抜きにして欲しいですわ」


 レイアが注意すると、レイス様は口を尖らせてぶーたれる。


 どっりが姉なんだ。


「ゼン様、こんな口うるさい妹はほっといて私とお話ししません事?」


「ああ、大丈夫ですよ」


 レイス様はレイアに舌を出して見せたあと、俺に話しかける。


 まあ、断る理由もないので了承した。


「嬉しいですわ! 愛しの妹を助けて下さった方がどんな方かと思えば、とっても気さくで。わたくしの周りは、わたくしよりも一回りもふた回りも上の方ばかりでずっと窮屈でしたの」


 レイス様は不満そうな表情で胸中を打ち明ける。


 周りに年上しかいないなんて気を使って仕方ないだろう。少なくとも俺は嫌になってグレてしまいそうだ。


「友達と呼べる人もいなくて。でも、ソアレがいますわ。隣国の王子様ですの」


「ソアレ?」


「ほら、レイカお姉様の相手の人」


 嬉しそうに目を輝かせて誰か分からぬ名称を出すレイス様。


 きょとんとする俺に、レイアがそっと耳打ちしてくれたので理解する。


 ああ、その人か。成る程な。


「ソアレはわたくしを一人の人間として見てくれましたわ! ですからとっても大好きなんですの。勿論ゼン様も大好きですわよ。妹を助けてくれたんですもの」


「ははっ。ありがとうございます」


 随分と温度差のある大好きだなと感じる。


 ソアレさんの事を語るときはミュージカルの恋する乙女のような仕草を見せたが、俺に対しては事務的に処理される。


 悲しき温度差。まあ、差があるのは致し方ないんだろう。


「レイアの事、どうやって助けたんですの?」


「エニグマに襲われてたところを、ルナと一緒に倒しました」


 何度目かになる説明をレイス様にもする。


 レイス様は衝撃を受けたのか、ポカーンと口を開けていた。


「え、エニグマって、あのエニグマ? ……ですの?」


 あまりの衝撃に、ですわ口調を忘れてしまうレイス様。


 レイス様の口調って作ってる口調なんだ。と思いつつ、肯定する。


 レイス様は信じきれないのか、口が塞がらないままだ。


「う、嘘みたいに凄いですわ……! ふふ、レイアは凄い人と出会えたのですわね! 姉としてとっても嬉しいですわ!」


「ちょ、お姉様!?」


 正気に戻ったのか、きちんとですわ口調を戻したレイス様はレイアに抱きついた。


 レイアは動揺したように慌てているが、その顔は赤い。照れているのだろう、可愛らしいもんだ。


 しかし、レイス様はほんと抱きつくのが好きなお姫様だなあ。


 俺は運動会で頑張る子供達を見守る父親のような目で二人の微笑ましい光景を見守っていた。子供いないけど。


「ゼン様もどうですの?」


 レイス様は俺の視線に気付いてのかレイアを離して俺に向かって手を広げる。


 え? いいんですか? レイアに似たそのナイスバディな身体に飛び込んでも?


 しかし、急激に背筋に走る悪寒が、俺にハグをするなと警鐘を鳴らす。


 これは、ルナがどこかで見ているかもしれない。奴ならいてもおかしくない。


「お、お断りしておきます。お気持ちだけ」


 心の奥底から絞り出すようにレイス様の申し出を断る。


 悔しい。こんなラッキー絶対無いのに。女神に飼いならされている自分が憎い。


「あら、残念ですの。ではまた次の機会ですわね。次はレイアを助けたお礼も兼ねさせてもらいますわ! 失礼しますの」


 天真爛漫なレイス様は、次の機会という素敵な言葉を残して去っていった。


 これは、期待してもいいのかな?


「ゼン、ちょっとだらしない」


 レイアがじろりと横目で睨んで指摘する。


 おっといけない。俺は、緩んだ顔を意識して元に戻した。

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