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ステラさんにもう一度聞いてみよう。

 収穫はあった。でもまだ足りない。


 ジンさんの部屋から戻っていく道すがらも頭を悩ませる。


 守るなんて見栄を切ったものの、犯人の尻尾はお城の関係者という情報と右手の痕という情報しかない。


 だが、ステラさんがお城の人の中で右手の痕がある人はメモリの中にいないと聞いた以上、情報がこんがらがってしまう。


 これではダメだ。


「ゼン、大丈夫?怖い顔してるけど」


「ん? ああ、大丈夫」


 レイアに心配そうに顔を覗き込まれ、ごまかして返事をする


 いかんいかん、顔に出てしまってはレイアを心配させてしまう」


「あら、ゼン様。守るべき女性を心配させてはいけませんよ?」


「おわっ!?」


 不意に後ろからした抑揚のない声に、驚き振り返る。


 そこには、メガネを手で上げてキリッとした表情のステラさんが立っていた。


「いや、心配かけたくはないんですが、考え事しているとどうも無意識に顔が変わってしまって」


「いけませんね。私のようにパーフェクトなプログラムを入れてみては? 表情はこのように自在に変えれますし、プログラムされた命令通り動く為完璧な存在でいれます」


 ステラさんの淡々と語ってるのにも関わらず、表情は笑顔になったり、怒った顔になったり、泣きそうな顔になったり忙しい。


 ほんと凄いなステラさん。しかもプログラムのおかげで命令通り動ける完璧なメイドか。


 凄いとは思うが俺にはプログラムは入れられないなあ。


「それは凄いですね。完璧なんですね」


「ふふん、そうです。ありとあらゆる家事をこなし、ありとあらゆる敵から姫様をお守りし、ありとあらゆる秘密を暴露する。それこそ、完璧なプログラムを持つ機械人、ステラなのです」


 俺の適当な褒め言葉に気を良くしたのか、ステラなのです。のところで仮面ライ●ーV3のようにシャキーンとポーズをとる。


 しかし、しれっと流したけど最後のはダメだろ。家政婦●見た! ってか? やかましいわ。


「ごめんなさい、ステラさんはいつもこうなの」


 顔を赤くしながら、レイアがステラさんの事を謝る。


 ああ、うん。謝る事ではないけれど、恥ずかしい気持ちは分かるよ。


 お姫様の心、メイド知らずなのかステラさんは、はて。と言って首を傾げていた。


「ところでステラさん、何か用事ですか?」


「あ、そうですね」


 一向に話が終わりそうになかったので流れを変える。


 声をかけてきたということは、ステラさんが俺に用事があるのだろうと思い聞いてみたが、当たりのようだ。


「実はですね、少々お聞きしたいことがありまして」


「なんでしょうか?」


「私に聞きました、右手の痕についてです」


 なにかと思えば収穫のなかった右手の痕についての事だった。


 メモリにやっぱりありましたって事なのか? だとしたら本当にありがたいんだが。


「右手に痕がある人を見ているんですか?」


「いえ、見ていません」


 期待を込めて聞いて見たが、ぴしゃりと否定される。


 くそっ。ぬか喜びさせやがって。


 じゃあ、なんなんだ?


「しかし、ひと月前まで手袋をしていた人がいたのです。とはいえ、これが何を意味しているのかは分かりませんが」


 ひと月前といえば、レイカ様とレイス様が襲われた辺りか。


 ステラさんも理由がわかっていないのか頭に疑問を浮かべているかのような顔をしているが、聞いてみて損はないだろう。


「誰ですか? 教えてください」


「ジンさんです。まあ、手袋外してもそういう痕はなかったので関係ないでしょうが、ひと月前以上のジンさんの右手は赤い痣があるかと言われれば分かりません。完璧でない答えをしてしまった為訂正をさせて頂きました」


「ジンさんがですか。……そうですか、ありがとうございます」


 有益かどうかも分からない情報をもらい、とりあえず礼をする。


 ジンさんはひと月以上前は手袋をしていたが、急に手袋をしなくなった、か。


 本当に意味が分からない。別に気分転換かもしれないしそうじゃないかもしれない。


 さらに頭がこんがらがってしまうが、ステラさん自身は訂正できてスッキリしたのか頭を下げて立ち去っていった。


 くそう、もやもやを残しやがって!

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