親衛隊長と兵士長に聞いてみよう。
「二人には、レイア達が狙われていることについて聞きたいんです。何故狙われているのかが分からなくて」
俺は、ジンさんとロカさんに率直に疑問をぶつける。
動揺とかは無さそうだが、その顔は二人とも暗い。
「わ、分からないです。と、突然だったので……。ひ、ひと月前、何の前触れもなく、レイカ様とレイス様に遠くから矢が放たれる所から始まったのです……」
ジンさんの説明で狙われ始めたのはひと月前という事は分かる。
前触れもなくか。本当だろうか。
「本当に何もですか? 何もなかったですか?」
「な、何もなかったと思うんですが……」
「いやいや、あったでありますよ! ほら、レイカ様のお見合いがあったであります!」
再確認すると、ジンさんは思い出せなかったようだがロカさんが思い出して手を叩く。
お見合いか。うーん、どうなんだろうか。
「あ、確かにあったね。隣の国の王子だったかな。三男で、私達の幼馴染なの。知っている仲だったからお見合いはつつがなく終わったけど。……まさか、そいつが?」
「いや、つつがなく終わってるならその線は薄いんじゃない? それに、レイア達が狙われる意味が分からん」
レイアから補足をもらうが、特に問題なくお見合いを済ましているのなら問題はないのだろう。
だが、起きてるのがお見合いだけとなるとこのお見合いに意味があるのか?
「ところでその相手はレイカが亡くなった事を知ってるんですよね? 今後はどうなるのですか?」
「一応は政略結婚なのでレイス様、もしくはレイア様どちらかと結婚となるであります。私達は婿に来てもらう立場でありますから。三男であろうと、隣国の方が強大な国の王子。我が国と隣国とのパイプを締結するには必要な事であります」
政略結婚! レイアが?
驚きのあまり目を見張る。
そうか、王族ともなれば子供であろうと政治に利用されてしまうのか。
レイス様もしくはレイアが国の為に結婚するのか。
「まあ、多分次はお姉様だと思うけど。そしてそのまま国を継ぐんじゃないかなあ」
「それは分かりませぬぞ。先方様次第ではレイア様も十分あり得るであります。先方様に選ばれた方こそ、次の王女様になるでありますし」
レイアの楽観的な意見に、ロカさんが待ったをかける。
ほう、次の王女がレイス様かレイアか。
ここに来て加速度的に情報が集まる。
だが、未だ何も掴めてはいない。
喉の奥に引っかかった小骨のような、何かが足りない。
「選ばれた方が次期王女という事は選ばれなかった方は?」
「別の国に嫁ぐことになるであります。王家とはそういうもんであります」
俺の疑問に対して、ロカさんは淡々と言い放つ。
当たり前だと言わんばかりだ。
だが、耳と尻尾を垂らしている辺り、納得している訳ではないんだろうなあ。
ロカさん、あんた嘘つきだね。
「とりあえず狙われた時期がお見合いのあとからというのは重要かもしれない。覚えておきます。ちなみに他に何かありませんか? 些細な事でも構いません」
二人とも腕を組み考え込むが、どちらも口を開かない。
恐らくは覚えてないか、印象にも残ってないのだろう。
「なければ大丈夫ですよ?」
「申し訳ないであります」
「す、すみません」
申し訳なさそうに、ジンさんとロカさんは頭を下げた。
だが、今回話した内容はさっきまで知らなかった事だ。
知ってるのと知らないのとでは意味が違う。
「い、今の内容で、犯人は分かりそうですか?」
「うーん、推理してみない事にはなんとも……」
「そ、そうですか……」
ジンさんは頭を垂れて大きく息を吐いていた。
そ、そんな露骨にがっかりしなくても。
恐らく期待してたんだろうが、その態度はちょっぴり悲しい。
見てろよ、絶対解決してやるからな。
「とりあえず、今回はありがとうございました。伺った内容を元にもう一度考えてみます」
俺はジンさんとロカさんにお礼を言うと、レイアとともに部屋を後にした。




