え、お前は誰だ?
食堂での話し合いが強制終了という形となり、アンタレスチームプラスレイアは俺が寝ていた部屋へと戻る。
さて、第二回会議タイムだ。
「さて、ジンさんのせいで思ったより聞けなかったけど今日の話でなんか収穫あれば聞きたいんだが」
第一回と同じように俺が仕切る。
さあ、誰からでもいいぞ。
「……はい」
「はい、アンさん」
手をあげるアンさんに対して、先生のように発言を許可する。
「……特になにもなかった」
「座ってください」
なんもないのになぜ手を上げたんだアンさん。
しかも、無表情なのに満足げなのが伝わる。
「では、次は私が。ステラさんの種族で驚いてましたが、ジンさんの種族も泥人間と気付きましたか? あの手に触れてから私の手、ほら、乾いた泥がついています」
次に立ち上がったのはルナ。ルナは説明しながら両手を広げると、確かに乾いた泥がついていた。
手四つの時に付着したものだろう。
「ふーん、って泥人間もあそこまで精巧な人間に見えるんだな」
「まあ、体を構築してるのが泥だからな。滑らかな質感ではあるな。逆に岩人間とかだと分かりやすかったりするぞ。どうしても質感がゴツゴツするし」
成る程。ニックの説明で納得。
岩ではなく、泥だったからこそ気付かなかったのか。
「しかし、ルナの言った事で分かったが、ステラさん、ジンさん、ロカさん、イアさんで四種族全部がいるんだな」
誰でも分け隔てなく受け入れ、その結果が四種族の側近なのだろう。
「そうだね。私の国では誰でも分け隔てる事なく差別のないフラットな国だと思っているよ」
レイアは、誇りを持ってるように凛とした顔で言った。
だとするとますます分からないんだよなあ。
なぜ、レイア達を狙うのか。
さっき話した感じでは右手のタトゥーも、狙う理由も見つけられなかった。
「なんなんだよ、狙う理由……。王様が憎いとかそんなんじゃないのかよ……」
ステラさんの見間違いも、ジンさんの悪態も許す王様。
ありがたく思われる事はあっても恨まれる事は、多分ないんじゃないか?
じゃあ、やっぱりあそこにいた人に理由はないのか?
王様と王女は娘を大切に思い、姉は、妹を大切に思い、側近は恨んでいない。
手詰まりだ。
うーんと頭を悩ませていると、扉がノックされ猫耳が入室してきた。
「失礼します! ロカであります! 先ほどの件でジン殿が謝罪をしたい為、ゼン殿、レイア様を呼んで来て欲しいと言わたので伺ったであります。よろしければ来て頂けませぬか?」
敬礼をしながらはきはきと喋るロカさんに可愛らしさを覚えつつ、ジンさんにお前が来いとツッコミたくもある。
まあ、反省の言葉でも考えているのだろう。そうであって欲しい。というかそうであれ。
「俺はいいけどレイアは?」
「私もいいよ。じゃあ行こっか」
「悪い、そういう訳だから。三人で話し当っててくれ」
俺とレイアがロカの方へ向かうと、三人とも返事をして送り出してくれた。まあ、若干一名不服そうであったが、それは無視することにする。
「では、ついて来て欲しいであります」
ぴょこぴょこ揺れる尻尾に従って、俺とレイアは歩き出した。
□■□
「ここであります」
とある一室でロカが止まる。おそらくジンさんの部屋だろう。
レイアがいるのに良い気なもんだ。あとで嫌味でもぶつけてやろう。
まずはロカが扉を三回ノック。返事が聞こえた為、部屋へと入った。
「失礼するであります!」
「失礼します」
「……失礼するわね」
ロカさん、俺、レイアの順に部屋に入る。
「よ、よく来てくれました。ようこそ僕の部屋へ」
俺たちの挨拶に対する返事がとても弱々しい。先程とは打って変わってしおらしい顔をしているジンさんのお出迎えがそこにはあった。
正直に言わせてもらおう、どうしたお前。お前は誰だ?




