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親衛隊長と兵士長に聞いてみようとしたところ……。

「ゼン殿、お言葉だが私達がいる以上、姫様達に手出しはさせない」


 和やかな雰囲気に割って入る声。


 声の方向を見ると、ジンさんが不機嫌そうに腕を組んで立っていた。


 確か親衛隊長だったな。


 まあ、親衛隊長であれば面白くはないよな。ほんとは自分が守るべきなのにその役割を奪われてるのだから。


「じ、ジン殿! 客人になんて無礼な! いけませんぞ?」


 ロカさんは慌てたようにジンさんを咎める。


 ロカさんも兵士長でジンさんと似た立場だが、考え方が異なるようだ。


「これ、ジン。ゼン殿に対するその態度はなんだ」


「お言葉だが陛下、今回の逃亡計画について私ははじめから反対だった。結果、どうだった? 散々だった。あまつさえ、レイカ様を亡くしてしまった」


「ジン!」


 王様が諌めるも意に介さずに悠然と語る。


 だが、その語った内容はとてもデリカシーがあるものではなく王様の逆鱗に触れた。


「……言い過ぎた。だがしかし、私は反対だ。このどこの馬の骨やもわからぬ線の細い小僧ごときでどうしようもないだろう」


 激昂されたにも関わらず、エベレスト並みに高いプライドが邪魔をするのか謝る事なく、続けて俺を否定する始末。


 あまりの言われっぷりに流石に腹に据えかねる。


 王様の手前ダメなのは分かってるのだが、これ以上言われたらぶん殴る。そう思って睨みつけていると、俺の隣から席を叩きながら黒いオーラを放つルナが立ち上がった。


 出たー! 俺がディスられた時名物、ダークルナだー!


「ふふふ。馬鹿も休み休みにして下さいな。何もかも前さんより格下なあなたが、どうしてそんな事を言えるのでしょう?」


 ルナはニッコリと笑顔を浮かべながらはっきりとジンさんに格下と告げる。


 まあ、スキルとか魔法とか確かにすごいの持ってるから真実なんだろうけど、もうちょっとオブラートに包んで伝えてあげてー!


「む、私を愚弄する気か? 容赦はせんぞ?」


 ジンさんは表情を崩してこそいないが、物騒な事を言い始める。


 レスバだと顔真っ赤って言われるぞ。


「あら、先に仕掛けたのはそっちですよ? ですが、私も容赦しません。力比べしましょう。私にも勝てないあなたが前さんに言う資格はありません。王様いいですよね?」


「む。ルナ殿が構わぬなら」


 ルナの提案に、王様は渋い顔をしながらも了承する。


 それを聞くやいなや、ルナはプロレスの手四つの構えをした。


「ふん。あとで後悔するな」


 それに答えるように、余裕そうな顔をしてジンさんはルナの手を取った。


「はっ! 前さん、今こいつの手を握ってますけど浮気じゃないですからね!」


 思い出したようにルナが慌てて弁解するが、そういうのは付き合ってからいうもんだ。


 さっさとやれと手を振ってやる。


「ふぇ!? 今のはハンドサインというやつですね! 流石は前さん、声を発さなくても俺の気持ちくらい分かれという私への挑戦ですね。分かりました、前さんの今のジェスチャーの意味は頑張ったらあとでご褒美を……」


「さっさとやれ」


「はい」


 興奮するルナを落ち着かせるべくピシャリと切り捨てる。


 ルナは捨てられた子犬のようにシュンとしていた。


「もういいか? 手加減はせぬぞ」


「はい。すみません、ロカさん。はじめの合図をお願いしてもいいですか?」


 ルナとジンさんが見つめ合う。


 合図を頼まれたロカさんは王様達の顔色を伺いながら、二人の手を持った。


「れ、レディーファイであります!」


「ふん!」


「があああああああ!」


 ロカさんのスタートの合図と同時にルナの息を吐く声と、ジンさんのうなり声が響く。


 ジンさんは痛みに悶えて膝をついてるが、未だルナは手を離さない。


 容赦ねえな……。


「ほら、どうしたんです? 容赦はせぬぞって言ってましたよね? 容赦してるんですか? 遠慮しなくていいですよ?」


 俺以外の人物にはアルティメットサディスティッククリーチャーと化すルナは、心底楽しそうにジンさんに話しかける。


 ジンさんは額に脂汗をうかべつつ、唸り声しか上げることが出来ない。


 もう、止められるのは俺しかいないな。


「ルナ、もう止めとけ」


「はーい」


 ルナはビックリするくらいの聞き分けの良さでジンさんの手を離す。


 痛みから解放されたジンさんは肩で息をしながら倒れ込んでいた。


「ふむ……。ゼン殿、此度は失礼した。せっかく設けた場が台無しとなってしまったな。申し訳ないのだが一旦食事を切り上げてもよろしいだろうか」


「あ、大丈夫です」


 王様からの提案を受け入れる。


 ここからまた切り替えるのは難しいだろう。


 王様は呆れたようにジンさんを見つめ、もう一度すまない。と呟いた。



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