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姫様と王女様に聞いてみよう。

「ステラとばかり喋ってないでわたくしともお話しませんこと?」


「コラ、レイス。はしたないです」


 俺とステラさんのやり取りを見て、レイス様が不服そうに口を尖らす。


 そのレイス様の姿を見て、王女様が咎めた。


 ステラさんは主が喋り始めたため、俺に一礼すると隣のニックに飲み物を追加していた。


「いえ、いいんですよ。レイス様とも話してみたかったので声をかけて頂き嬉しいです」


「まあ、ゼン様はお上手ですわー!」


 何一つ嘘は言わずにレイス様と話始める。


 レイス様は子供のように目を輝かせていた。本当にレイアの姉ちゃんなんだよな? 妹じゃないよな?


 レイス様は良く言えば、天真爛漫、悪く言えばバカっぽさが丸出しである。ほんとずっとたしなめられてるし、王女様は苦労してるんだろうな。


「レイス様にお聞きしたいのですが、結構真面目な話をしてもいいですか?」


「構いませんわー! なんでも聞いてくださいまし!」


 本人から許可は頂いたのでかなり不躾な質問になるが逃亡時の事を聞くことにする。


 もしヒントになるような事を覚えていてくれたらありがたいのだが。


「それでは、失礼を覚悟しまして。逃亡時の事を教えていただけませんか? 出来たら襲われた時の事とか教えていただけると嬉しいのですが」


「ゼン様、それは……」


 率直に聞く俺に対して王女様が渋い顔をする。


 王女様以前に母親なのだ。娘のトラウマをほじくる恐れがある質問にその反応は正常だろう。


 だが、レイス様は微塵も顔を歪ませなかった。


「あれは丁度二日前。突然馬車が襲われ、レイアとはぐれてしまったんですの。その時、追撃をかける暴漢の盾からわたくしを守る為にレイカお姉様は亡くなったんですの。……私は自分が許せませんわ」


 レイス様の表情に憎しみの色が彩られる。


 目の前でお姉さんが殺されたのだ、その想いは当然と言えば当然なのだろう。


「わたくしは命からがら国へと戻りましたわ。犯人がとても憎いのですが顔を見ることは出来なかったですわ。以上がわたくしの覚えてる事ですわ」


「すみません、辛い事なのに話させてしまって」


「そんな事ありませんわ! 確かに悲しかったけど、ゼン様はレイアを連れて帰ってくれましたわ! これ程嬉しい事はありませんわ!」


 言いにくい事を言ってくれたレイス様に頭を下げる。


 だが、レイス様はそんな事気にしてないと言わんばかりにレイアに抱きついた。


 急に抱きつかれたレイアは驚いてカップに手を当てて飲み物をこぼしていた。


「ちょ、ちょっと、お姉さま!」


 慌てたようにレイアがレイス様に注意するが、レイス様は気にせずにレイアを頬ずりする。


 カップはステラさんがその場に駆け寄ってすぐに片付けていた。


「レイス、止めなさい」


「あ、失礼しましたわ」


 王女様に叱られ、レイス様はしょんぼりしてレイアを離す。


 レイアは、もう! と口を膨らませていたが、その表情は満更でもなさそうだった。


「わたくし、犯人を許せませんわ! だからゼン様、どうか犯人を捕まえてくださいまし! わたくしに出来る事はなんでもしますわ!」


「ゼン様、レイスだけでなく私からもどうかお願いします。レイカだけでなくレイス、レイアも失ってしまったらと思うと夜も眠れません」


 レイス様の言葉に王女様も同調する。


 よくよく王女様の顔を見れば、クマが出来ていた。安心して眠ることが出来ていないのだろう。


「分かりました。私も乗りかかった船です。お任せ下さい」


 かっこつけてレイス様と王女様の依頼を快諾する。


 二人は、ほっとしてような顔をして微笑みかけてくれた。



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