ステラさんに聞いてみよう。
「ふむ、では自己紹介も終わったし朝食を食べながら話をしよう。イア、頼む」
「かしこまりました」
全員名乗り終えると王様が全員に着席を促し、イアさんに食事の用意を指示した。
イアさんは簡潔に返答すると、ステラさんとともに一度席を外した。
「さて、此度はゼン殿が聞きたい事があるみたいでな。その為こうして集まって貰った訳だが」
「あら、そうだったんですの? わたくし、てっきりわたくしお父様が御礼の為に招待したのかと思ってましたわ」
「それもあるが……。レイス、客人の前だ。お父様はやめなさい」
王様が主旨を説明すると、レイス様は驚いたように口元に手を当てる。
その際、お父様と呼んでしまった事を王様にたしなめられていた。
「あ、そうですわね。わたくし、うっかりしてましたわ」
たしなめられたレイス様は、てへ。と舌を出して頭を小突いていた。
「そそっかしい娘ですみません。レイカが亡くなって、次はレイスが次の王女となるかもしれないのに……」
王女様が恥ずかしそうに顔をしかめる。
そうか、一番上の姉が亡くなったのであればレイス様が王女になるかもしれない訳だ。……大丈夫か?
まだ全然喋ってないけどちょっと心配になっちゃうぞ?
当のレイス様はといえば、次の王女となるかもと言われたところでドヤ顔を見せていた。
そういうとこだぞ、心配になっちゃうのは。
「いえ。こういう場でもユーモアがあって私も緊張せずにおれそうです」
だが、そんな事言える訳はないので相変わらずの口八丁でごまかした。
「お待たせしました。ではステラ、配膳を頼む」
「承知しました」
軽く話している間にイアさんとステラさんが戻ってきた。
イアさんがステラさんと食事を運んでいく。
白いパンとシチュー、スパイスで味付けされてるような鶏肉のソテー、見た事が無い色のフルーツが並べられる。
そして、カップに赤紫色のドリンクが注がれていった。多分、これはワインか? アルコールの香りがする。
苦手だし、残させてもらおう。
「それでは頂こうか」
王様の一声でみんながナイフとフォークで朝食を食べ出す。
俺はパンから頂いたが、白いパンとは珍しい。ここに着てからずっとライ麦だったからなあ。
「お口に合いますか?」
「ええ」
ステラさんが料理の感想を尋ねてくる。
シチューもソテーも美味しいので、返事にお世辞なく返事を返した。
「それはなにより。……本日は私が見間違えたようで申し訳ございません。てっきり情事、もしくは修羅場を見たと勘違いしてしまい、これはおもしろ……もとい、大変だと思って陛下に伝えてしまいました」
ステラさん、今面白いって言いかけたな。
レイアが頭を抱えた理由が分かる。絶対誇張もしてるな。
「うーん、じゃあステラさんに聞きたい事あるので、それを答えて頂いたら許しますよ」
「分かりました。何なりと」
「では、ステラさんはお城の人で右手に痣とかある人見た事あります?」
「はて、痣ですか?」
ステラさんは顎に手を当て、考えてるようなポーズをとったが、記憶にないのか首を横にふった。
「申し訳ありません、いませんね。私の記憶のメモリの中には存在してません」
「メモリ? なんですかそれ」
「はて、ゼン様は機械人をご存知ないのですか? メモリとは機械人の記憶装置です。これのおかげで私は何も忘れません。陛下のおねしょ癖がいつ治ったかも覚えております」
どう見ても機械には見えないが、ステラさんはいたって真面目にメモリの説明と、王様の恥ずかしい話を話した。
王様のおねしょはどうでもいいが、ステラさんが何も忘れないというならまず間違いなくいないのだろう。
ここにいる人の右手は全て確認したし、再確認の意味も込めて聞いて見たが、いないで確定で良さそうだ。
しかし、機械人とは。こうも人間に見えるものなのか。
「あまりじろじろ見ないで下さいまし。ステラ、恥ずかしい。ポッ」
ステラさんは口だけ照れたように言って、表情を変えずに両手を頬に当てた。
「どっからどう見ても人間なんですがね。肌とかそういう素材なんですか? あと年齢も気になるし気になるところだらけです」
ステラさんのツッコミ待ちの顔を無視して質問をする。
ステラさんは不服そうな顔を一瞬していたが、すぐに表情を戻して口を開いた。
「肌は私を作った人が発明した人工スキンという化学繊維を使用してます。開発者の趣味で作成したみたいですね。それ故、機械人でも私だけがこの肌です」
「へ、へえ。すごいですね」
開発者の趣味でここまで作るのか。
どっからどう見ても人間にしか見えない。ほんと言われなければずっと人間だと思ってたわ。
地球にもいたけどこだわる人間てこだわるととことんだなあ。
「その方が亡くなった後、その方の知人である先先代の国王に私を引き取って頂きました。なので年齢は百をゆうに超えています」
「ほうほう。成る程。あとよろしければ触ってみてもいいですか?」
「ええ。どうぞ」
……ステラさんよ、なぜそこで胸を押し出すんだ。
触んねえよ。だからルナこっち見るな。
俺はステラさんの期待を無視して腕に触れた。
全然弾力がない。カチカチだ。これは確かに分からない。
「あら、ゼン様は女に恥をかかせるなんて悪い人ですね」
ステラさんは、妖艶な笑みを浮かべてドキリとなってしまうような事を言った。
ほんとに人間じゃないんだよな? 俺は、触って見たにも関わらず、未だ信じきれずにステラさんを見ていた。




