関係者だョ!全員集合
レイアの準備が出来たので食堂へと向かう。
食堂には大きく長い机に白いテーブルクロスがかけられており、食器が八人分各椅子の前に並べられていた。
多分俺達と、王様、王女様、レイアの姉ちゃん、レイアの分だろう。
ニックとアンさんは先に着席しており、俺達に気付いたイアさんが俺とルナをニックの隣に案内した。
レイアはというと、ステラさんが端に座るアンさんの正面に案内していた。
「よう、ゼン。どうしたんだ、疲れた顔して」
席に着いた俺の顔を見て、ニックが少し心配そうに言う。
「まあ、ちょっとな」
俺は適当に言葉を濁してごまかした。ルナだけだったら説明するんだが今回の疲れの原因は王様にもある。
だが、王様が原因でとは言えないからなあ。
「そうか。だが、王様が来たら気を張るんだぞ?一国の王様がただの冒険者に会ってくれるだけでもすごいのにこうして会食するなんてまずありえないんだ。粗相があってはまずい」
ニックは少し緊張しているのか上ずったような声で注意してくる。
だが、俺は逆に粗相をいっぱい受けてるせいか、割と大丈夫じゃないかな。と余裕で構えていた。
「まあ、気をつけるよ。それより、ここって俺達だけ?」
ニックの注意をとりあえず受け入れて、周りを見ながら質問する。
王様、王女様、レイアの姉ちゃんはまだ来ていない。
それに、兵士長、親衛隊長らしき人もいない。
「ああ、まだみたいだな。だが、王様達は多分そろそろだと思う。大きな男性と小柄な女性が呼びに行くって行ったたし。多分あの二人が兵士長と親衛隊長じゃないかな」
「ふーん。分かった、ありがとう」
ニックに御礼を言って、食堂の入り口の方に目をやった。
どういう人なんだろう。
それから程なくして、靴音とともに四人が入室した。
ニック、アンさん、ルナ、レイアが立ち上がったのを見て、俺もそれに習う。
王様は俺の左前の席へ座る。その次に、王冠をしたレイアよりグラマラスな金髪の淡い水色のドレスを着た女性が俺の前の席へ座った。最後に、レイアによく似た黒い髪の淡い緑のドレスを着た女性がルナの前の席に着いた。
大きな男の人と、小柄な女性は、隅の方に立つイオさんとステラさんの隣でと立っていた。
「すまない、待たせた。さて、まずは互いに自己紹介から始めよう。私はノーブル国国王、ルクス・ノーブルだ」
王様は名を名乗ると、軽く会釈をした。
「私はノーブル国王女、ミラ・ノーブルと申します。この度は娘を助けて頂き、心から御礼申し上げます」
次に名乗ったのは王様の隣の王女様。そして、深々と頭を下げて御礼を言われる。
心臓が縮み上がるほどの恐縮をした。昨日の王様もそうだが、王族が頭を下げるという行為ってだけでドキドキしてしまう。
まじまじと見ると、目はレイアとは少し違うな。レイアは丸くくりっとした目だが、王女様は切れ長で綺麗な瞳だ。
お上品に微笑を浮かべるその口元は、やや妖艶さを感じてしまう。
そして一応右手を見るが、何もない。
「次はわたくしですわ。わたくしはレイス・ノーブルと申しますわ。以後、お見知り置きをお願いしますわ!」
その次はレイアの姉ちゃんが名乗る。ですわ口調で名乗り、ドレスの端をつまんで会釈をした。
この人はレイアのお姉ちゃんだと分かる。ほんとにそっくりだ。
違う点をあげるのであれば、黒い髪と天真爛漫な雰囲気だろうか。
八重歯が少し見えたのも実に可愛らしい。
右手を観察するが、何もない。
これで、王族関係者は以上か。
「では、続いては私、イア・ビアークです。執事長をしております」
お次はイアさんが名乗る。相変わらずぴっちり三十度の角度で頭を下げた。
「私はステラ・テレジアといいます。メイド長をしております、ペコリ」
その次はステラさん。名乗った後、自分でペコリと言って頭を下げた。
ツッコミたい。だが、あっちサイドが誰もつっこまないとこを見るとそういう人なんだろう。
だが、顔を上げるときに垂れたその青色のセミショートの髪を耳にかける姿に若干の色っぽさを感じた。
くそう、アンさんと同じくらい無表情フェイスの癖にエロスを感じさせやがって。
おっと、そんなことより右手には……何もないな。
「自分は、ロカであります。兵士長を務めているであります!」
お次は変わった口調の小柄な緑の髪の女性。猫の獣人のようで、耳と尻尾がある。
このロカさんが兵士長のようだ。
人は見かけによらないというか、このなりで怪力持ちとは。まあ、そういうスキルがあるから兵士長なんだろうし、プレートメイルを着てても動けるのだろう。
ロカさんの右手にも何もない。
「私は、ジンと申す。親衛隊長を務めるものだ」
最後は、大きな赤い髪の男性。剣士のようで、腰に剣を差している。
兵士長と違って軽装備で、動きやすさに特化したような出で立ちだ。
そして、ジンさんも右手には何もなかった。
これで、以上か。
自己紹介のおかげで関係者の顔と名前が分かったが、全員右手にタトゥーどころか傷さえもないという事が分かった。
仕方ない、次の一手を考えよう。
「では、次は私達の番ですね。私は前です。ギルドアンタレスの冒険者で……」
名前を名乗りながら、次の一手を絞り出す。
ここからがボス探しだ。




