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光の魔法の使い方

「ルナ様、あれは一体なんですか?」


 絶命した熊を眺めながらやや引き気味でルナ様に尋ねる。


 助かったのはありがたいが、とんでもなさすぎて怖い。なにあの発光体。なにあのバチバチ。なにあの威力。その全ての疑問をその一言に込めた。


「あれは光魔法ですよ」


「え、あれが光魔法?」


 相変わらずさらっさらと当たり前だと言わんばかりにルナ様は言いやがる。でも、俺の内心は冷や汗ダラダラである。


 あんなとんでもない能力の才能を、俺は持っているのか。


 ちらりと熊に目をやると、熊のお腹の辺りに五十センチ程の丸みを帯びた凹みが痛々しく残っている。


 野球ボール程のサイズが破裂したからあんな風に膨らんだのかとその生々しい痕に背筋が冷えた。


 さっきも思ったけど、ルナ様単品でなんとかなるんじゃないのか?


「前さんも同じ魔法を使えるので折角なのでどうです? 撃ってみます?」


「撃ってみます? って、そんな簡単なものじゃないでしよ?」


「いや、簡単ですよ。あなたは光の魔法使いなんですから使えなかったらこっちがなんで? ってなります。いいですか? 指先に精神を集中させて球体をイメージして下さい」


「……やってみますけど、期待しないで下さいね」


 心の中では半信半疑だが、騙されたと思って言われた通りにしてみる。


 指先に神経を集中させて、球体よ出ろ。とイメージする。


 こんなんで出るわけが……。と思っていたら、指先でバチバチと光の球体が出た。


 えええええ、出ちゃった……。


「流石は前さんですね。光魔法が出せる素質があるとはいえこんな濃厚な白は今までの才能を持った者の中でも私もはじめて見ます」


「え、そうなんですか? って、今までって言うけれど光魔法って貴重なんですよね? それをいくつか見たような口ぶりだとルナ様の年齢って……」


「おっと、前さん。レディの前で年齢の話はいただけないですね」


 能面のような笑顔を貼り付けてルナ様は俺に威圧感を放った。どうやら地雷を思いっきり踏み抜いてしまったらしい。怖い、漏らしそうだ。


 落ち着け俺。クールになるんだ。なんとか機嫌を取らねば。


「え、えーと、ルナ様の年齢は分かりませんがほんとお綺麗ですよね、あはは。とっても麗しいというか」


 ダメだ、とってつけたような言葉しか出て来ない!なんだよ、お綺麗とか麗しいとか!言葉覚えたチンパンジーでももっとまともに褒めるっての!


 こんなんで怒りを鎮める人なんてどこにも……。


「お綺麗だなんてそんな、麗しいだなんて……」


 居たわー。目の前に居たわー。


 ルナ様は頬に手を当て照れたように身体をくねらせていた。


 もうルナ様相手ならそこら辺に落ちてる雑草をプレゼントしても一生大事にするような気がする。まあ、機嫌が直ったならなにより。


 そんなことよりだ。


「ルナ様、この球体どうしたらいいですか?」


 俺の指先にはまだ先ほど作った球体がバチバチと音を立てて残っている。


 いやー、消えるかと思ってたが消えないなあ。このまま俺の指先には球体が残ったままなのか? だとしたらやだなあ。


「ああ、すみません。では、出来た球体を……そうですね、空に向かって撃ちましょう。手元から飛ばすイメージをして下さい。そうすれば、飛んで行きます」


「手元から飛ばすか。よし!」


 俺は空に向かって右手を構え、銃から飛び出す銃弾をイメージした。すると、球体は手元から勢いよく射出され、空に向かって行った。


 少しだけ感じる疲労と、高揚感が俺の全身を駆け巡る。


 これが……魔法。


「良いセンスです。流石は私の前さん。光魔法はイメージをすればイメージの通りの形で発動します。今後、オリジナルの魔法もどんどん作って下さい」


「は、はい」


「あ、そういえばさっきの悲鳴はどうだったんですか?」


「あ」


 間抜けな声がポロリと漏れる。熊を倒してその倒した過程が衝撃的すぎて正直、忘れてた。


 いや、囮になって逃げたから恐らくは大丈夫だと思うけど。でも、一応見ておこう。


「多分大丈夫とは思うのですが、一応見に行っていいですか? あの女の人、助けられたと思うんですが」


「ん? 女ですか?」


 なんだろう、またもやルナ様が能面のような笑顔になった。なにやら背中から暗いオーラも見えているような気がする。


 今度は何も変な事を言っていないはずなのに、一体どうして?


「え、ええ、女性です」


「……分かりました。様子を見に行きましょう。……場合によっては牽制してやらなくては」


「はい?」


「いえいえー、お気になさらずー」


 相変わらず能面笑顔を貼り付けたまま、ルナ様はスタスタと歩く。


 俺はすごすごと後ろをついて行きながら、ルナ様の不機嫌の理由をぼんやりと考えていた。



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