情報整理会議なう
部屋に入り、すぐに扉を閉める。
部屋広いとか、キングサイズのベッド三つもあるんだとか、甲冑のインテリアすげえとか、部屋を堪能したくはあるがそうは言ってられない。
俺は、情報の整理を始めるべく口を開いた。
「さて、整理しようと思う。今の所逃亡計画を知ってたのは王様、王女様、三姉妹、イオさん、メイド長、兵士長、親衛隊長だったな」
「はい、そう言ってましたね」
聞いた情報を確認し、ルナが頷く。これはレイアと王様で意見の齟齬がない。まず間違いはないだろう。
「で、ボスを探す訳だが、一番上のお姉さんが……その、亡くなったから省く」
「いいの、気にしないで」
言いにくい内容で口籠る俺に、レイアは気丈に振る舞ってくれた。
本当は辛いはずなのに、その芯の強さに感心する。
「すまない、ありがとう。続きになるが、王様とイオさんにもタトゥーは見当たらなかったから省く。あとは当然レイアも省く。これで残りは?」
「王女様、次女のレイス様、メイド長、兵士長、親衛隊長の五人ですね」
省けるとこを省いて推理の見直しをはかる。
俺が省いた人を引いて、残った人物をレイアが挙げてくれた。
これで怪しいのは五人だ。
「ただ、お父様もイオさんもタトゥーをしている人はいないと言ってたよ」
「そう、そこなんだよ。そこが分からないんだ」
レイアの指摘に俺も疑問を提示する。
レイアを襲った二人の証言について、ルナは嘘はないと言っていた。
おそらくほぼ間違いなく嘘はついてないのだろう。
そうなると、お手上げになる。
「はあ、わっかんねえ」
「何が分からねえんだ?」
「!? ニック! アンさんも!」
ボヤいて頭を抱える俺の背後からニックとアンさんが顔を覗かせた。
どうやら到着したらしい。思ったより早かった。むしろ早過ぎるくらいに。
だが、正直行き詰まっていただけに新たな意見は助かる。
「ビックリしたぜ。アルデバランにいたらイオっておっさんが目の前に現れたんだからな。転移スキル持ちは一瞬で移動するから心臓に悪い」
ニックは大層驚いたのか、あの野郎。と言ってボヤいた。
「突然現れたら驚くよな。でも、転移でそっちにイオさんが行ったとして随分城に着くの早かったな。走ってきたのか?」
転移を使えるのはイオさんだけだからな。
イオさんは一瞬で行き来出来るだろうが、ニックとアンさんはどうやって来たのだろうか。
「いや、アンの転送スキルだ。転移の上位互換で、人でも物でも運ぶ事が出来る」
ニックの説明を聞き納得をする。
スキルとは才能。それゆえ自分自信に影響を与えると思っていたのだ。
でも、自分以外の物にも影響を与える事が出来るスキルがあるんだ。便利だな。
……あ、そういえばスキルがあったな。
「なあレイア。逃走計画を知ってる人の中で、スキル持ってる人ってこの城の中で何人いる?」
レイアに尋ねた内容は最早粗探しくらいの内容になる。
もしかしたらスキルでなにか工作してるのかもというような浅はかな考えだ。
「うーん、イオさんの転移と兵士長の怪力、あとはレイスお姉様の錬金術くらいかな?」
レイアは思い出すようにスキルを持ってる人を上げていく。
転移は違う、怪力も恐らく違う。錬金術はどうなんだ?
「ニック、錬金術の効果って分かる?」
「錬金術は平たく言えばその物の性質を変える能力だ。石ころをダイヤモンドにしたり、雑草を薬草にしたり出来る」
「それは人体には影響を与えられるのか?」
「いや、出来ないな。土や草や鉄なんて物質ならともかく、生身の肌や内臓とかは出来なかったはずだ」
うーん、じゃあダメだなあ。
ニックの説明で錬金術のスキルの能力は分かったが、人体に影響を与えられないなら意味は無い。
だが、スキルという点は盲点だった。
これは一考の余地があるかもしれない。
「分かったよ、ありがとう」
ニックにお礼を言うとニックはキョトンとした顔で頬をかいた。
「お、おお。役に立てたなら良かった。とりあえずは集めた情報を教えてくれ。俺達も集めた情報を教えるから」
「ああ、分かった」
アンタレス出張ギルドの会議が始まる。
まずは俺達が集めたボスに纏わる情報、そこから導き出した逃亡計画を知ってる者達、そして王様とイオさんのタトゥーの有無を余す事なく説明した。




