犯人探しの目星
衝撃の事実というのはこういう事をいうのだろう。
レイアから告げられたその内容はとても衝撃的で予想だにしていないような事だった。
「レイア、本当なのか?」
「うん、間違いない。城で働くものとなった人に国の誇りを常に携帯させるとして国旗の入ったハンカチを持たせているわ。それに、非売品で外の人間が持つことは出来ない」
レイアが言った内容にほとんど間違いはないのだろう。
つまりは、敵は内部にいた。
それはつまりはレイア達の情報がずっと筒抜けだった。だからこそ、逃げてる途中の馬車が襲われたんだ。
誰かを逃がすための馬車なんてトップシークレット中のトップシークレット。バレるなんて相当頭が切れる相手なんだと思いきや、何て事はない。
全部知っていたんだ。
だが、これはチャンスかもしれない。俺には一筋の光明が見えていた。
「レイア、お前のとこの人間でレイア達の逃走計画を知っているのは何人くらいいる?」
「多分、そんなにいなかったよ。お父様にお母様にお姉様。あと、執事長、兵士長、メイド長、親衛隊長。それくらいじゃないかな?逃走という計画を知っていたのは」
思ったよりも一気に対象が絞れて重畳である。
レイアの言うことが正しいならそれほどこの計画を知ってて関与しているものは少ない。
何も知らせず間接的に協力させたものもいるだろうが計画を知ってるのはそれほど多くはないのだろう。
そこでもう一つの情報が大事になる。ドラゴンのタトゥーだ。
それを持っている人間を探す。そうすればきっと、解決だ。
「レイア、ありがとう。これで一刻も早く向かうべきだと分かった。行こう」
「何かわかったの?」
「まだ仮説だがな。ルナ、そいつらは解放していいぞ。……あーそうそう。お前達に言っておくがまた俺達の前に現れようものなら、さっきの数十倍の苦痛を与えてやる。分かったな?」
「「わがりまじだ!」」
俺が脅すと男達はとても良い返事をする。まあ、やるのは俺ではないが恐怖は骨身に染み付いただろうから二度とはやるまい。
まあ、来たら返り討ちにすればいい。
ルナはゼンさんの慈悲に感謝なさい! と凄んで男達を解放した。
脱兎のごとく逃げて行く男達の背中を見届け、俺は二人と再度城へと向かって歩き始めた。
□■□
男達とエンカウントしてからは誰にもバレることもなく城の前まで辿り着いた。
まあ、そもそも男達にばれたのはターミナルで俺がレイアの名前を出したからによるものだ。人通りの多いところでレイアなんて言わなければそんなもんなんだろう。
自分の迂闊さを反省する。
とりあえず反省はしつつも、城を眺めて感動する気持ちも抑えられない。
見た目はもう完全にTHEお城だ。こんな時想像力が豊かな人はドイツにあるなになに城だ。とか、この構造はいつの時代の。とかいう表現をするだろうが、知識に乏しい俺の感想はシンデレラ城みたいだ。だった。
某テーマパークのシンデレラ城のような外観。今スマホがあれば映えさせたいものだ。
「なあレイア。城の前へと来たが、とりあえずは門番に声かけたらいいのか?」
「そうだね。まずは私が帰った事を告げるわ」
「分かった。だが、これから先はいつも俺から離れるな。敵が内部にいる可能性がある。トイレとお風呂のようなプライベート時間以外は絶対に離れるなよ」
敵が内部にいるかもしれない。
うら若き乙女にこんな事を頼むのは憚られるが、申し訳ないという気持ちもありつつ指示を出した。
レイアは了承するように首を縦に振り、ルナはいいなあとボソリと言った。
流石に事情が事情なだけに、私もお願いします! と言うのは我慢したんだろう。やれば出来るじゃないか。
「じゃあ、声をかけるね」
レイアが門番の元へと歩き出し、俺とルナがそのあとをついて行く。
門番は二人おり、槍で扉を閉じて背筋を伸ばして立っていた。
薄い黄緑色の服に帽子。その胸元には国旗が刺繍されている。これが兵士の服装なんだろう。
「止まれ。誰だお前達」
一人の門番が威圧するかのように問いかける。
すかさずにレイアが三つ編みを解くと、門番はみるみる目を見開いた。
「レイア様! どうされたのですか!」
「事情はあとで。それよりも国王に伝えて下さい。アンタレスの一行の助けによりレイアが戻りましたと」
「はっ! 承知しました!」
レイアを止めた門番は、レイアと分かるやいなや態度を改めレイアの指示に従い一度城内へと入って行く。
待つ事十分程して、先ほどの門番が帰って来た。
「お待たせしました。どうぞお入り下さい。お連れ様もどうぞ」
門番に促され城内へと入って行く。
今から王の接見、そして犯人探しか。
うほー、緊張する……。




