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黒幕の尻尾

「「ずびばぜんでじだ、いだいなるゼンざま」」


「はい、次です。リピートアフターミー。偉大なる前様、ダニよりも矮小な私を許して下さい。はい」


「「いだいなるゼンざま、ダニよりもわいじょうなわだじをゆるじでぐだざい」」


 今現在俺の目の前では、大男とブルドッグ男がボッコボコの状態で正座をさせられ、ルナの言葉を繰り返し言わされている。


 ちなみに最初の台詞はすみませんでした、偉大なる前様とルナが言わせた。


 濁点が多すぎて最早原型を留めていない。


 それにしても目の前には能面のような笑顔を貼り付けたルナがいる状態は、男達の心中を察する。


 悲しいかな俺達は今、人通りの少ない路地裏に居る。


 男達の悲しき悲鳴は善良なる市民には届かない。


「前さん、このゴミ……じゃなかった。このカス共どうします?」


 ルナが困ったように俺を見ながら尋ねてくる。


 俺はそんな事よりゴミとカスの何が変わったか知りたい。


 いや、それも知りたいがとりあえずはだ。


「ちょっと質問させてくれ。お前らのボスは誰だ? 何が目的でレイアを狙ってる? 教えてくれたら解放するぞ?」


 敵サイドこっちの手に落ちてくれたのなら好都合だ。


 聞きたい事もあるし、ポッキリ折れた心に漬け込んで救いをチラリと見せる。


「じ、じらないでず」


「お、おれもでず」


 大男とブルドッグ男が交互に質問に答える。だが、大して有益な情報はない。


 これは嘘か誠か。


「前さん、こいつらはほんとに目的も何も知らないみたいですよ」


 ルナが二人を見ながら俺に耳打ちをする。


 有益な情報ありがとう。鼻息さえ荒くなければ褒めてたよ、うん。


 しかし、ルナがそういうって事は恐らくはほんとに知らないのだろう。使えねえ。


「じゃあ、ボスの事で知ってる事なんでも教えろ。有益な事を教えた方を解放してやる」


 質問を変え、少しでも情報を引き出させる。


 今度は解放条件を絞ってやった。どちらかは逃がすと言った。これで二人は何か知ってる事はないか頭をひねるだろう。


 それが目で分かるくらい、男達の顔は真剣そのものだった。


「あっ! ボズばみぎでにダドヴーがありまず! あがいどらごんのでず」


 大男がハッとしたように発言をするが、何を言ってるかさっぱり分からない。


 ルナがボコボコにしすぎたからな。


「ルナ、こいつらの翻訳頼んでいい?」


「かしこまりました。まずは、『ボスは右手にタトゥーがあります! 赤いドラゴンのです』と言っています」


 ルナ翻訳のおかげで大男の言った情報が理解出来る。


 さすがルナだ。めちゃくちゃ有益な情報を得ることが出来た。


「まっで、おれも! ボズばノーブルごぐのごっぎのばいっだばんがぢをもっでまじだ」


 今度は負けじとブルドッグ男も声を張って情報を喋る。


 相変わらずなにを言ってるかわからないのでルナを見る。


「え、見つめられちゃ恥ずかしいですよ」


「茶番はいいから翻訳してくれ」


「ちぇっ、つれないですね。えー、『待って、俺も!ボスはノーブル国の国旗の入ったハンカチを持ってました』と言ってますね」


 ルナ翻訳でこれまた有益な情報が手に入る。


 どうやらこいつらのボスは右手にドラゴンのタトゥーを持っていてノーブル国の国旗の入ったハンカチを持ってるのか。


 俺が得た情報に満足していると、レイアはポツリと呟いた。


「そんな……。そんな訳が……」


「レイアどうしたんだ?大丈夫か?」


 顔色が真っ青になるレイアの背中をさすりながら、落ち着くように尋ねる。


 レイアが震える声で絞り出したその内容は俺が予想だにしていない事だった。


「……ノーブル国の国旗のハンカチ。これは執事、メイド、兵士達に配られています。つまり、城の内部に敵がいます」



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