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速攻バレました

 ドレートの街と同じような門の前に辿り着く。


 外は日が落ちて、星が煌めいている。


 馬車が門の前で停止すると、ニックは外に降りた。恐らくは門番に通行許可証を見せているのだろう。


 俺たちの賄賂侵入とは違いギルドで手続きをしているはずだ。


 程なくしてニックが馬車へと戻り馬車が再び動き始めた。


「よし、このままターミナルまで運んでもらってそこから別れるぞ。俺達はまず馬車をこのノーマンにあるギルドのアルデバランへと置けるようまず頼んでくる。ゼン達はターミナルから城まで向かってくれ」


 ニックは行動を指示するが、降りる場所として指定されたターミナルというのがよく分からない。


「ターミナルってなんだ?」


「なんだゼン、ターミナルを知らないのか? 馬車を乗り降りする為の場所だよ。馬車の乗り降りは決められた敷地や私有地以外はターミナルのみなんだ。それに、ターミナルからの方が城は近いんだ」


 成る程、イメージはバスターミナルかな?


「分かった、ニック教えてくれてありがとう。じゃあレイア、到着したら案内頼むな」


「うん、任せて。その代わりゼンは私を守ってよね」


「任せておけって」


 姫様は頼りにしてると言わんばかりに右手をグーにして俺の前に伸ばし、それに応えるように俺も右手をグーにして叩いた。


「私も頑張りますよ」


 女神も負けずに右手をグーにしてぶつけた。


 二回目の濃いパーティ結成。俺たちはたくらみ顔でにやりと笑いあった。


「もう着くぞ」


 ニックが言うのとほぼ同時に馬車が停止する。ターミナルについたのだろう。


 俺とルナとレイアは立ち上がり、ルナとレイアは先に降りた。


「ゼン、悔しいがお前は俺より強い。だから頼りにしているぞ」


「……ゼンくん、気負いすぎないように。……無理だと悟ったら先輩である私達を待ってたらいい」


 ニックとアンさんの期待と激励を背負い、任せてくれと言わんばかりにサムズアップで応える。


 ニックは生意気だぞと言って笑い、アンさんは少し口角が上がった。ような気がした。


 俺は手をひらひらと振って馬車を降りると、馬車が動き出した。


 俺は半日分の疲れを取るように大きく伸びをして辺りを見渡した。


 ドレートの街よりも大きな街だ。街並みこそ同じく中世時代のような様相だが、明らかに人が多い。流石は首都なんだろう。


 それに、ヨーロッパにあるような城が見えるのもドレートとは違う。あれこそが、レイアの実家なのだろう。


「レイア、あの城か?」


 指差しながらレイアに尋ねてみるとレイアはこくりと頷いた。


 やはりか。本人から言われると、やっぱりこいつは姫なんだなあと思う。


「よし、行こうか。俺が先頭、真ん中がレイア、ルナが後ろを頼む」


「「はい」」


 俺の指示に二人の声が綺麗にハモる。


 昨日はこれで喧嘩していたのに、今は睨み合いをしない。普通のことなのにありがたい。


「よし、行くぞ。あ、そうそう、レイアは顔を伏せていてくれよ」


「わかった。とりあえずここから真っ直ぐね」


 隊列を組み、レイアナビゲートのもと俺たちは歩き始める。


 なるべく人の多いところを避けるように歩き、顔を見られないように考慮。


 完璧な作戦だ、これで絶対誰にもバレることなく行ける。そう確信して歩いていた。


「ちょっと待ってもらおうか」


 だがしかし、路地に入ったところで大柄な人間の男とナイフを持ったブルドッグの獣人の男のコンビが俺たちを後ろから呼び止めた。


 まさか、バレたか? いや、考慮してたはず。バレてない、バレてない。


「何か用事?」


 平常心で男達に聞き返す。声も震えてないし怪しいところはなかったはず。


「そこにいるレイア様に用事だな。生きてちゃ困るんだよ」


 な!? なんでバレたんだ! 俺たちの作戦は完璧だったはず!


 まさか、こいつらも見透かす目を使える奴がいるのか? だとしたらまずい!


「なんでわかった!?」


 スキルだったらまずいしバレた理由を探る。


 俺の質問に男二人はキョトンとしたあと、大男の方が口を開いた。


「なんでって、ターミナルでレイアなんて言ってるからじゃねえか。まる聞こえだったぞ」


 ……俺のせいじゃねえか。


 やっちゃったぜ☆


「ゼン、ちょっと勘弁してよ……」


 レイアのジト目が俺の心をぐりぐり抉る。その視線が痛いです。


 俺はすまん、とレイアに手を合わせて謝り男二人に向き直った。


「よくぞ見破ったな」


「いや、自分で言ったんじゃん」


 かっこつけてごまかすが敵サイドからツッコミが入る。


 心が痛いが気にしない。


「謙遜することはない、見破ったお前達を褒めてやろう」


「いや、だからお前が言ったんだろ?」


「お前達の中にも頭が切れる奴がいたんだな?」


「……なあ、こいつ頭がおかしいぞ?」


 全力でごまかす俺をみかねて、大男がコソッとブルドック男に耳打ちをする。


 だが、その言葉がこの中で一番触れてはいけない人の逆鱗に触れてしまった。


「ゼンさんの頭がおかしいですって?」


 地の底から響くような声、怒りのあまり怒髪天をつきそうな髪、怪しく光る眼、その全てがルナから発せられる。


 ルナの両手からは光の発光体が表れており、もう間も無く男二人はやられてしまうだろう。


 ルナ、気持ちはうれしいがごまかす為とはいえあんな事言ってた俺の頭はおかしかったぞ。


 俺は男達に球体がぶつかる様を見届けながら心の中で呟いた。






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