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初依頼を初受理しました

 部屋にノックが響き、ピスコさん、シャウラさん、そしてレイアが入室する。


 未だどことなくぎこちない顔をしているレイアだが、先ほどとは違って不安そうな顔色は消えている。


 そして、まずはピスコさんが口を開いた。


「では、依頼を受理したので説明するぞい。依頼内容は護衛そして国賊の長を突き止めるという二点じゃ。そして君たちには絶対的な守秘をしてもらいたいが、このお方は隣国ノーブル国の姫、レイア様じゃ」


「は? え? ピスコさん、どういう事ですか?」


「……少し理解に時間が欲しい」


 アンさんとニックはピスコさんから告げられたレイアの正体に唖然としている。


 まあ、依頼人がとんでもないVIPなんだ、当然だろう。俺は先程聞いていたから大丈夫だが、聞いてなければ同じ反応をしていたに違いない。


「まあ、混乱する気持ちも分かるが、そこはぐっとこらえて!」


 ピスコさんは超アバウトにアンさんとニコラスを丸め込む。


 勧誘の時から思ってはいたが、ピスコさんは若干ゆるいところがある。


 二人ともそれを理解しているのか渋々頷いていた。


「ではレイア様、補足をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「……はい。まずは私を国へと返して下さい。そして、私の敵を探す手伝いをお願いします。敵についてはなにも正体を掴んでおりませんが案はあります。私が囮になる事です」


 ピスコさんから説明を引き継いだレイアは、依頼の説明を行い決意を秘めた瞳で、自らが危険に身を晒すと告げる。


 だが、命を狙うような輩に対してそんな危険に晒すなんて大丈夫なのだろうか。


「レイア、いや、レイア様の方がいいのか? ほんとにいいのか?」


「ふふ、レイアでいいよ。それに、大丈夫。だって、ゼンがいるから」


 レイアは堅い表情をふっと解いて、ふわりと笑った。


 その顔は不安なんて感じられない、全面的に信頼を寄せてくれるようなそんな顔だ。


「だから、お願いします。偽らない私を、レイア・ノーデンスではなく、本当の私、レイア・ノーブルを助けて下さい」


 そして、レイアは深く、それは深く頭を下げた。


 誰も信頼出来ない中、不安でいっぱいの中、俺と出会った頃のレイアはレイア・ノーデンスと名乗っていた。それはきっと誰も信じられないからレイアなりの自衛だったのだろう。


 そんなレイアが俺たちに偽らない私を、と言って名前を明かした。なら、その信頼に応えなければ男じゃない。


「勿論だ。俺に任せろ」


 俺は大見得を切って、サムズアップする。


 レイアは緊張の糸が切れたのか、つうーと頬に涙が伝っていた。


「ああ。出会ったのがゼンで良かった。本当に良かった」


「……いきなり女の子を泣かすなんて悪い男だね、君は」


「ゼン、普段はアンに同意しないが今回ばかりは全面同意だわ」


「前さん?浮気はダメですからね?」


 なぜだかアンさん、ニック、ルナに責められる。ルナに関してはちょっと趣旨が違うけど。


「では、向かうのは明日からにしよう。馬車は手配しておくから明日八時にアンタレス前に集まっておくれ。それまではゼンとルナはギルド直営の宿屋に泊まると良い。シャウラ、案内してやっておくれ」


「かしこまりました」


「後、ニコラスとアンは通行証を渡すのとレイア様に紹介するから残っておくれ。ゼンとルナに関しては以上じゃ」


 ここで、ピスコさんはニックとアンに引き続き残る指示を出し、俺とルナは解散となった。


 明日、いよいよレイアを護衛という異世界初の大きなイベントが発生するんだ。不安も大きいけど大見得切った手前そんな事は口には出せない。


 いや、不安も大きいけどそれよりも絶対に助けたいという正義感が胸に溢れる。


 これもスキル英雄の雛の効果なのだろうかと変に勘ぐってしまうがそればかりは神のみぞ知るだろう、辞書に載ってなかったからな。


「では、前さん、ルナさん、行きましょうか」


 シャウラさんに促されるがふと疑問が生まれ、聞き返す。


「レイアはあとで来るんですか?」


「いえ、レイア様については本日は私の家に泊まって頂きます。流石に一国の姫が男性と同じ部屋で寝るというのは、というピスコさんの配慮となります」


 成る程、それは一理ある。


 そうなればシャウラさんにレイアを任せておいた方がいいだろう。


「わかりました。じゃあ行きましょう。レイア、また明日だ」


「うん! 明日、お願いね」


 レイアはにっこりと笑って笑顔で手を振った。


 俺とルナはレイアの笑顔を背に、シャウラさんの後をついて部屋を出た。






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