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ギルドに加入した理由

「ゼンはピスコさんに認められるくらいの本当にすごい人なんだね……」


 レイアは零すようにポツリと言った。


「レイア、どうした? なんか変なこと言ったか?」


「ううん、そうじゃないんだ。……お世話になった人をほんと打算的な目で見てる嫌な女だなって思ったらなんか自己嫌悪しちゃって」


「どういう事だ?」


 レイアの言ってる事はあまりよく分からないが打算とかよくわからない不穏な単語から察するに明るい話題ではないだろう。


 だが、暗い顔をしているのを放っておけるほど薄情ではない。


「……実は、私はある国の姫なんだ。って言ったら信じる?」


 なにを言ってるんだ? これ、笑うとこ?


 頭にいくつものツッコミワードが浮かんだが、驚いた顔をしているのは俺以外はシャウラさんだけだった。ルナもピスコさんも分かっていたかのような顔をしている。


 ピスコさんのスキルや、ルナの規格外の存在である事を考慮するに、どうやら嘘ではないのだろう。


「にわかには信じられないが、どうやらルナもピスコさんも否定しない辺り嘘じゃないらしいな」


「し、信じてくれるんだ」


「一応は、だぞ。だが、その姫様がなんで森に? 勝手な想像だが王宮にでもいるんじゃないのか?」


「それは……、私には姉が二人いるんだけど、私達姉妹全員を狙う国賊がいる事が分かったの。私の父が私達を安全な場所へと避難させていた時に、乗っていた馬車が襲われて姉二人とははぐれてしまった」


 だから森に一人いたのかと説明を聞き納得する。


 姫様がただあんなとこにいる訳はないが、想定外だったんだ。だからあんな所にいたんだ。


「そしてさまよっていた時にエニグマに襲われ、もうダメだと思った時にゼンが助けてくれた。その時に、エニグマを倒すような実力者といれば安全だ。そう思って態度を変えてあなたに好意をよせたようにしてた」


 レイアの態度が豹変してたのは確かにエニグマを倒した話をした辺りからだった。通りで合点がいく。


 それに、いくつか思い起こせば変だなと思っていたことも出てくる。


 この街に入った時に行った賄賂。


 あれって当たり前のようにしていたけど、街に怪しいものを通すのに納得させるなんて、結構な額を積まなければあれ程あっさり引き下がらなかったのではないか?


 それに俺とルナの服装についてなにも言わなかったのも、階級の違いから常識に疎かったのかもしれない。


「そして、ゼンがピスコさんに認められる程の実力者なら私の事をきっと助けてくれるはず。って、すっごく打算的な考えをしてしまった……。本当にごめんなさい」


「……レイア、謝る事はないぞ。確かに驚いたが利用したくなる気持ちは分からなくもない。すごいって思える人には助けて欲しいって俺も思ったりはするし」


「でも、それでも気がすまないの! ごめんなさい」


 レイアは姫でありながら深く深く頭を下げていた。


 本当に謝る事ではないんだけど、これは一体どうしたもんか。


 頭をひねり知恵を油のように絞り出し、一つピスコさんの勧誘があったからこその考えが浮かんだ。


「ピスコさん、このギルドって依頼を受けてそれをこなすんですよね?」


「え? あ、ああそうじゃが?」


「その依頼ってどんな事があります?」


「なんでもあるぞい。モンスターの退治や採取、人探しや行商の護衛まで様々……。おー、なるほどのう」


 どうやらピスコさんには俺の意図が伝わったらしい。


 あとは、ルナを説得出来るかどうかだが、ルナを見てみると少々むくれていた。


「また、前さんは……」


「ダメか?」


 秘技、対ルナ用困った顔攻撃。


 絶対効果あるはずと思って冗談半分で表情を作ってみると、ルナはうーと唸った。


 どうやら本当に効果があったらしい。


「仕方ないですね。支えるのも妻の務めですから」


「ルナ、ありがとう。んじゃ、ピスコさん俺はアンタレスに加入するよ」


 ルナの言動をスルーして、ピスコさんの勧誘を承諾する。


 ピスコさんは嬉しそうに笑い、まだ理解出来ていないようなレイアがえ? と声を漏らした。


「レイア、アンタレスは護衛の依頼を受け付けてるんだがどうだ?」


 俺の意図にようやく気がついたのか、レイアは喜んでるような困惑しているようなよく分からない顔をしていた。


「なんで?」


 レイアのなんとか引き出したような一言に俺は笑いながら返した。


「俺は勇者だからな。困っている人を助けるのが生業なんだ」


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