8話
平原を抜けぽつぽつと建っている家や畑を見つけ、雨の中そちらの方へと向かう義男
しかし雨だからなのか人が見られない。
さらに家の方へと近づき、ようやく男が一人農具を持って走っていた。
言葉通じるのか?と思いながら、
「すいませーん」
第一村人に向かって手を振りながら叫んだ。
こちらに気がついた村人がこちらに気づき手を上げるが、途中何か不審に思って上げた手を下げた。
それでも義男は村人に近づいていき側まで駆け寄った。
「なんだ、おめぇ?見ねぇ顔だな。
それになんだその格好?」
挨拶する前に向こうから、義男の顔と格好を指摘してきた。
それでも言葉が分かると思い喜びを隠しながらは、
「どうも、初めまして。道に迷ってしまい困っていたんですよ。」
男が気にした格好についての返事はしなかったが、とりあえず状況を説明した。
それでも男は怪しむばかり、
「お金もないので、住み込みで働ける場所があれば教えてくれませんか?」
続けて義男が男に向かって望みを口に出した。
「住み込みだ?そんなところこんな村にあったか?
とりあえず村の長の所に連れて行ってやるだ。」
少しだけ訛り混じりで聞こえる答えを義男は聞きながら安堵した。
もしかしたら何とかなるか?もしくは野宿からおさらばできるそう思いながら、村人の後をついていった。
ついでに何か情報を得ようと話そうとしたが男は少し先を不機嫌そうな雰囲気で小走りで進んだ。
とても気さくに話せる状況でもなさそうだ、ということで黙って後をつける。
ただ、たまにこちらを見ては首を傾げを繰り返していた。
男は明らかにさしていた傘を見ていた。
珍しいのか?と思いつつ質問してこない男の後ろ姿を見ながら、いくつかの家や田畑を通り過ぎ、少し大きく周りよりも古い家の前まできた。
「シンディ婆さん、シンディ婆さん」
男が大きな声と一緒にドアを叩き目的の人物の名前を叫んだ。
「どうしたんですか?そんな大きな声で。」
恰幅の良いおばさんが玄関の戸を開け出てきた。
「なんとも言えねぇんだが、この男がよぉ」
二人してこちらを見て、
「初めまして、渡会義男です。
道に迷ってしまい、お金もないので住み込みで働ける場所を探しているのですが」
義男にとって、怪しくないぞオーラいっぱいの笑顔で挨拶するも、
「はぁ…」
恰幅のいいおばさんが義男を頭の天辺から足の爪先まで観察してきた。
会社帰りサラリーマンの義男にとって精一杯の笑顔は全くの無意味で全然届かなかったようだ。