6話
水を飲み顔を洗いついでに頭を水に突っ込む、そして三十路手前の義男は靴下を洗う。
ようやく気持ちが悪いと感じていた物から解放された。
仕事を終え、山まで移動して次の昼まで夢中で歩き続けそこからさらに日を跨いだ。
「体や他も洗いたいな。
にしても、これだけ履き続けられる靴下が可哀想で仕方ないな。」
靴下に同情しつつ水場に足をつけ、鼻歌交じりで靴下同士を擦りつけながら洗う。
「そういえばこの靴下にも能力みたいなものが付いてんのか?」
水場を見つけ気持ちが大きくなったからなのか義男は、普段なら三日履き続けた靴下を嗅ぐはずはないが、靴下の匂いを嗅いだ。
答えは無臭、
「洗ったことで臭いが取れただけかもしれないな。」
そんな訳はないだろう、と頭で思いながら洗濯を終え、ハンカチを出し足を拭いた。
そして岩の上に立ち靴下を絞り、さらに水気を飛ばすために靴下を回す。
「だいぶ乾いたか。」
日が落ち始める時間になったころ、靴下を回すのを飽きた義男は鞄から弁当を取り出し岩の上で食べつつ、
「これ下ると人に会えたりしないかな?」
人との触れ合いを求め、水の行く先を眺めながら次の希望を口に出す。
そしてその希望を叶えるべく、岩と岩の隙間に入りコートやマフラーで体と顔を覆い休もうとした時、獣の遠吠えが近くから聞こえ傘を手にした。
「かなり近いな。どこにいるんだ?」
立ち上がり手袋をはめ、もう一度マフラーを目を避けて巻き、フードをセットした。
動かず数分待っていたが左肩に衝撃を受けた。
岩の上から飛び降りた獣が義男の左肩に噛みついていた。
しかし相変わらず体に痛みを通さないコートに安心した義男は噛み付いてる獣を右手で殴り、悲鳴らしき鳴き声をあげながら獣が離れた。
月明かりでぼんやりとしか見えないが、どうやら狼のような獣だった、しかし狼を見た事ない義男だがこれもまた想像よりも大きい。
夜の暗闇では相手が何匹いるかも分からない。
とりあえず上から来られるの厄介だ、と岩の隙間から出て行った。
それでも見えない相手にどうしようか、と悩む義男に獣が足に噛みついてきたのが分かり、そのまま傘でフルスイングしおそらくかなり飛ばした感触を感じて、そのまま立ち尽くす。
その後狼達の新しい作戦が始まった。
「あぁ、鬱陶しい。」
大した衝撃や痛みはないが、獣たちはヒットアンドアウェイで引っ掻き噛みつきしては逃げを繰り返す。
これでは傘もあたらない。
とりあえず傘を振り回してみる義男
数度あたる感触を残し、これでいいかと十分ほど振り回していると獣達の攻撃の気配が止んだ。
「これで終わってくれよ。」
そう願い少し時間をおいて、また岩の隙間に戻って行き完全防備で横になる。
そして寝る前の一言が、
「今度は風呂入りてぇ…」
新たな欲望が膨れ上がる会社帰りサラリーマンの義男だった。