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18話



リディの放った矢によって義男達の存在に気がついた兎は遥か向こう。

義男は少し恥ずかしそうに向かってくるリディを待っていた。


「クロスボウはあまり得意じゃないの。」


まだ恥ずかしいのか言い訳をする。

自信満々に任せて、と言われた気がしたが狩りのお茶目な先輩の姿を愛でている義男だった。


「いつもはどうしているんだ?」


「クロスボウを使うわよ。命中率は良くて半分くらいね。胴体や頭に当たればそのまま絶命する事もあるし、足に当たれば動きが少なくなるからそのままナイフで倒すわ。」


と、腰のナイフをポンポンと叩いた。

そんなものかと返し、昔にクロスボウは命中精度はそこまで高くないと、誰かが言っていたのを義男は思い出した。


「術は使わないのか?」


「なぜか獣は術に敏感なの。

好戦的な獣相手なら逃げないし向かってくるから使えるけど、臆病な獣は言霊を発している時にすぐ逃げるわ。」


なるほどな、と納得した。


「そろそろお昼にしましょ。」


リディが先程の失敗を無理矢理忘れるかのように、高々と叫んだ。

しかし義男は、


「すまない、婆さんから昼飯貰ってないんだ。水はあるんだが」


「そうなの?仕方ないわね、私のを半分分けてあげるわ。」


そう言ってリディは鞄の中から、布で包まれたパンを出した。

どうやらサンドイッチらしく、義男はいくつか分けて貰い食べる。

女性の手料理はいつ以来だ?それより今日狩りで何かしら成果を出さないとあの婆さんの事だ、本当に飯抜きになりそうだ。と、昼食を美味しく頂きながら義男は夜飯の事を考えた。



サンドイッチを二人とも食べ終え、獲物を探しましょ良い場所があるの、とリディが提案してきたので義男達は再び歩き出した。

少し経つと止まって、とリディから注意された。


「おお、すごいな。」


前方の大きな池が水飲み場になっているため、多くの獣がいた。


「今日も沢山いるわね。

射程距離まで近づくわよ。」


上手くないクロスボウを構えてリディがゆっくり低い姿勢のまま近づき、今回はその後を義男も真似て一緒になって近づいていく。

水飲み場にはシマウマ、ガゼル、ダチョウ他にも様々な獣が休んだり、寛いだりして寝転がっていた。

その光景を、まるでサバンナみたいだ、と義男は少し感動した。


水飲み場の周りは草が高く生い茂っている所もあり、そこに二人で身を隠す。

もう少し行くとリディは射程距離に入る。

さらに慎重に近づき、リディは狙いやすいように片膝を立てて、クロスボウを数回射る。

何度か放った矢が水に顔をつけていたシマウマの足と首に当たり、悲鳴のような声を上げる。

その声で獣達が水飲み場から一斉に逃げた。


獣達が逃げるのと同時にリディが立ち上がって、傷つけたシマウマに走って近寄る。

シマウマに辿り着いた時は獣達は辺りにはおらず、逃げようとするが足が痛いのか立ち上がれないシマウマ

にリディが近づき、義男も側まで近寄る。


「アガールゼブラか」


「あら?アガールゼブラは知ってるのね?」


いまんとこ全部アガールつけるだけだし、と義男は心の中でつっこむが、シマウマの流す血に少し気分が悪くなる。



少し可哀想なアガールゼブラだが、今からさらに無惨な光景を見る事に、これが続くのかと一人嫌になる会社帰りサラリーマンの義男であった。

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