16話
「それに言霊を覚えるのはすごく大変なのよ。
私も小さい時から必死で覚えたわ。
まぁ覚えると言うより感じるって言った方が、正しいかもしれないけど。
死ぬまで終わりが見えそうにないって感じるわ。
それでも年々術の威力が上がってるから、間違ってはないと思うんだけどね。」
さらに訳の分からないことをいうリディに対して、
「へー精霊みたいものとの親和性が高まっていくのかな?」
「いい事言うじゃない。言霊が精霊との会話ってのは昔から言われてるのよ。
あまり信じられてないけどね」
何となく呟いた義男に、今まで一番の笑顔でそう言ってきた。
言霊によって放ちたい術をその精霊とやらと会話をし、外に出した気を精霊に渡して、精霊が術を放つ。
こんな感じなのかな、と義男は推論した。
ただ義男には言霊とやらが何語かも分からない、理解できそうにもない。
「やっぱり術は無理そうだな。」
「そうね、体内の気が多い人ほど言霊が感じやすいみたいだしね。義男からはやっぱり気は感じられないし。」
リディの説明と義男の推論で結局術が使えなさそうな事しか分からず、だめ押しの攻撃をくらった。
「まぁ、いいじゃない。あなたにはその傘があるんだから。
大抵の敵なら楽に倒せるわよ。」
リディの傘を中心に褒めるフォローに、そうだなと淋しく返し、
再び目的地へ向かうよう言われる。
そして二人がまた速度上げ木の残骸が残る場所から去っていった。
それから走り続けて数分、
「今から行く場所にはどんな獣がいるだ?」
と、義男が疑問を口に出した。
「そうね、今日は他の獣からしたら比較的大人しいアガールホースだったりアガールラビット他にも結構いるわよ。」
「全部アガールって名前がつくんだな。」
「だってここアガール大陸だし。」
え?という顔して可愛らしく義男を見る。
アガール大陸のアガール山脈覚えやすくていいな、と思い並走する。
そして三十分以上走り続けもう一度休憩を挟み、走る事を繰り返した、二人はようやく目的の場所付近に辿り着いた。
辿り着いてすぐ休憩をしながら二人で座って話していた。
「それにしてもよく迷わないな。
ここで一人にされたら村まで辿り着く自信がないな。」
義男の言葉に、リディは背負っていたリュックを開け、ある物を取り出し見せてくれた。
「これがあるから大丈夫よ。」
見ても分からない物に、なんだそれ?と義男が問う、
「方向石よ。
ある地点に片方の石を置いておくと、そっちの方角を指してくれるの。」
また出てきた不思議物質を手に取り
「本当だ。向きを変えると少しずつ戻っていく。
なんだこれ?方位磁針みたいな物なのか?
それにしても知らない物が沢山あるな。」
「全く義男はどこで育ったのよ。
方向石を知らないなんて、変わってるのね。」
義男が日本育ちという事をまだ知らないリディは不思議がっていたが、
それでも丁寧に教えてくれるリディに義男は感謝しつつ、方向石があればリディの跡をつけれるな、と完全にストーカーの発想になっていた会社帰りサラリーマンの義男であった。