15話
「とりあえず、この傘がかなり重たいのは分かったわ。」
持てない事が悔しかったのか、リディは少し口を尖らせている。
「もしかしてとは思ってたが、やはり俺だけが何故かこの傘の重さを感じないんだな。
どうなってのか不思議で仕方ないな。」
義男はおそらく傘がチートになったのだろう、というのは伏せておいた。
「でもいいわね、これ」
何故?と義男は首を傾げる。
「だって盗まれる心配が無いんだし、他の人には絶対に使えないじゃない。
万が一持ち上げれたとしても、これを振り回す人なんていないんじゃない?」
「なるほど」
手を叩いて感心した。
確かにこれだと盗まれる可能性がないのか、それは安心できる。
いや、その前にやっぱり傘が武器っていいか?ちょっとダサい気がする。
できたら剣や槍とかの方がかっこいいんだけどな、使った事ないが、
と一人で自問自答を繰り返した。
「ところでリディはどんな風に戦うんだ?」
いつまでも答えの出ない傘の良し悪しを決めるのを諦め、リディの方に注目した。
「私?私は近接戦闘もできるけど本職は、術師よ。」
それなりの胸を張って自慢する。
義男にとってはそれが何よりのサービスだった。
そのサービスをしっかりと堪能した後、
「術師ってやっぱり魔法とか使えるのか?」
変な顔で義男を見るリディ
新たなサービスをもらった義男だった。
「魔法じゃないわ、術よ。義男はおかしな事をいうのね」
そう言ってリディは笑った。
「術って言うのか、できたら少し見たいんだが」
「いいわよ、じゃあそれの折れた木にするわ。」
そう言って木に向かってよく分からない言葉を発する。
少し間リディを眺めていると、違和感を感じ義男が反応した。
その直後折れ残った木の根元が吹き飛んだ。
「おぉ、すごいな。
これが魔ほ…じゃない術か、当たったらかなり痛そうだな。」
「人間に放つと吹き飛ぶし、怪我もするでしょうね。」
再びサービスでリディが胸を張った。
「何か言ってたけど、あれはなんて言ってるんだ?」
「言霊よ。あー、なんて言えばいいのかしら?
まず自分の中の気を外に出してあげるの、その出した気を術に変換して最後に放出するんだけど、気を外に出すことや術に変換する事あと放出、その一つ一つを言霊で操るのよ。」
「うーん、何言ってるか全然分からんな。」
「そうね、とりあえず人によって強弱はあれど言霊を発すると全てが勝手に術として行われるのよ。」
リディが投げやりになって説明を諦めた。
ただ術とは想像によって様々な現象を起こすのではなく、ほぼ決まった現象が起こるという事か、謂わば言霊が呪文の様なものだと義男は勝手に決めつけた。
「ところで術は俺には使えないのか?」
もしかしてこのチートが残っている可能性が、と心躍らせていると、
「無理よ、だって義男からは気がほとんど感じられないもの。」
はっきりと断言され、やはり自分にチートは不釣り合いであり、自分が傘達の付属品だと考え始める会社帰りサラリーマンの義男であった。