14話
褒められると嬉しい。
リディに褒められるともっと嬉しい。
そんな調子に乗っている義男を知らずに放って、リディが続けた。
「最後の方はかなり早い速度だったのよ。
あなた相当鍛えてるのね。感心したわ」
「ありがとう、そこまで鍛えてるわけじゃないんだけど。
それでもやれる所を見せないといけないしな」
きっと革靴のおかげだろうと信じてる義男だが、とりあえず一次試験は合格が貰え喜んだ。
「どこまでもついてくるから、最後の方は少し本気を出してしまったわ。
本当はもう少し遅い速度で、話を聞きながらの予定だったんだけど」
半分まではいかないがそれなりの道程は終え、二人は少しの休憩をとった。
「格好も変わってるけど、鞄も変わってるのね。
そういえば武器も持ってないけど、どうするの?」
義男がずっと手に持ってる鞄をリディが見つけ、そしてそれ以外持っていない事を気にかけた。
「武器なら大丈夫だ、この中に入っている。」
義男には使い慣れた大きめのノートパソコン一台入るくらいの大きさの愛用鞄だ。
肩掛け用のベルトも鞄の奥で眠っている。
その鞄をポンポンと二度叩いた。
「そうなの?じゃあいいわ。
それとどんな戦い方をするの?」
「うーん、戦い方か…」
山や森の中では傘しか使っていないが、少しでもいい格好をしたい義男は悩み、それ諦め鞄から傘を取り出した。
「杖?違うわね。」
閉じている傘を見せたが傘と気付いてもらえない。
義男は本当の使い方を見せるため傘を開いた。
「え?傘?それが武器?どういう事?」
何が言いたいか分からないリディ
傘はこちらにもあるんだなと新たな情報得て、
リディが混乱する姿をひとしきり楽しんだ後、義男が説明した。
「実はこの傘めちゃくちゃすごいんだ。
どれくらいかというと…あっちまでいいか?」
周りを見渡して実験で使える物がないか探す。
少し離れた所に大きくはない木を見つけ、そこまで二人で移動する。
木の下まで来た義男は
こうするんだ、と言いながら傘を振り上げ木を叩く。
木は折れ飛び、それを見たリディが呆然としている。
「それが傘なの?まるでハンマーみたいだわ。」
「まぁ鈍器には変わりないな。
これかなり重いし」
重いという言葉に違和感を感じるリディ
「軽く振り上げてたのに?持たせてもらえるかしら?」
「ああ、ちょっと待ってくれ。」
義男はリディの足が潰れでもしたら大変だと思い、傘を地面にそっと置く。
「じゃあ持ち上げてみてくれ。」
未だによく分かっていないリディは傘の方まで近づき、傘を掴み持ち上げようとしたが、
「え?なんで?嘘でしょ?」
二度三度と腰に力を入れるが傘はピクリともせず、そのままだった。
「もう、なんでなのよ。」
考えても分からない答えに少しイライラするリディ
そんなプリプリしているリディを眺め、リディの頬もプリプリだなとよく分からない事を思う会社帰りサラリーマンの義男だった。