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13話



「女神じゃないか」


義男は、今まで口にした事のない言葉を口にした。

それほど美しい人間が目の前にいた。

レディシュの長い綺麗な赤毛の髪、きめ細やかな白い肌、 少し青みがかった大きな瞳にシャープな鼻、程よくふっくらした唇、肉付きはあまりなさそうなスマートな体

義男からしたらまさに、女神。


「何言ってるんだい、この男は。

リディ、この男は」


「初めまして、渡会義男といいます。

狩りについて、色々ご教授お願いします。」


婆さんの言葉の途中をぶった切る暴走気味の義男であった。

普段ならこんな事を絶対にしないと誓えるほど義男は興奮していた。


「え、えぇ…ちょっと待って狩りを教えるの?

この男、大丈夫なの?」


「さぁ、どうだろうね?まぁ大丈夫だろうさ。

リディすまないが、頼まれてくれないかい?」


リディの不安をかき消すほどの答えをあげない婆さんがそれでもお願いする。


「あなた経験はあるの?」


リディが真剣な目で義男を見る。

少し照れながらも義男も真剣に答える。


「本格的な経験はない、だがある程度生き延びる自信はある。

だから頼む、教えてください。」


昨日の憂鬱な態度から一変して、頭を下げ本気だという事をできる限りの態度で示した。


「まぁいいわ、今日一日一緒にやってみましょ。

だだしそれでダメなら諦めなさいよ。」


「ありがとう、助かるよ。

足だけは引っ張らないように頑張るつもりだ。」


そう言って義男は手を差し出して握手を求めた。

リディもそれに対してよろしくと応え、狩りに行く荷物を準備しに、再び家の中へと戻った。


「じゃあそういう事で帰るよ、リディ頼んだよ。

あんたもしっかりやんなよ、金を稼げると証明しないと今日から飯抜きにするよ。」


外から大きな声でリディにお願いした後、ツンツンな婆さんが一人帰っていった。

しかし飯は抜きでも家にお邪魔していいという事か?そう義男はとった。

そして、たまにある隠れたデレをくれた婆さんの後ろ姿に大きな声で礼を言った。




「じゃあワタライヨシオ、私たちも行くわよ。」


再び家から出てきたリディが、婆さんとは逆方向に歩いていった。


「義男でいいよ。どこまで行くんだ?」


「義男ね、わかったわ。

今日は義男もいるし比較的安全な場所がいいわね。

できたら走って行きたいけどいいかしら?

それと行きながらあなたの事を教えて。」


あなたの事を教えて、義男からしたらかなりドキドキする言葉をもらった。

これまで運動などほとんどしていなかったが、チートな革靴のおかげで山や森を日中、食事とたまに休憩する程度で嘘みたいに移動して自信から、


「ああ、足にもそれなりに自信がある。

なんでも聞いてくれ、なんでも教えるさ。」


と上ずった声で返した。


それから出発し、徐々にスピードが上がっていき景色が流れていった。

先頭を行くリディがたまについてきてるか後ろを振り返るが、まだ大丈夫だとアピールする。


後ろにぴったりとついていきながら、義男はどれくらいの速度で走っているのか気になったが分からない。

ただ日本で運動もしてもいないのに、体感では全力疾走でずっと走っているのと変わらないくらいのスピード感な気がした。

ただそれも社会人になって運動のしていない義男の曖昧な記憶だ。

そしてかなりの速度で三十分ほど走った後、


「まさかついて来るなんて、すごいのね義男」


と褒められた。



走りながら後ろを確認し、また速度を上げ走っていく。

リディがまるでストーカーから逃げてるみたいだと思ったが、

最後のたった一言で、幸せな気持ちでどこまでもついていけそうな気がした会社帰りサラリーマンの義男だった。

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