第五話 赤ら顔の人に似た鬼たち
矢三郎は持ち前のサバイバル能力と蛮族マインドで独自に鬼()に対する知識を深めていきます。
数々の冒険者を殺戮したその筋では名高い 盗賊六人衆、エイナーを頭目とするチャベス・ナダス・へロール・ハーブン・バリスの六人はいつも通り縄張りを巡回していた。
勝手知ったる縄張りの中に放置された異常なものがせむし男のバリスの目に映る。
「…うわ、こりゃ何だ?人間か?」
「皮を剥ぎとられたゴブリンだな」
「…なんでゴブリンの皮なんか剥ぐんだ?殺すのに手間がかかる割にろくな値で売れねぇのに」
「知らねぇよ ゴブリンの皮のことなんざ。」
「挙句の果てにやっこさん、皮剥いだゴブリンを木に吊るしてやがる」
「ゴブリン同士の喧嘩じゃねぇの?こんなのロクな人間がやることじゃねえ。」
「ところでよォ、今日は街道で冒険者襲わねぇのか?」
「バカタレが!毎日毎日人殺しやってりゃ、足が着いちまうだろうが!」
毛皮とボロボロの鎖帷子を纏った男たちは皮を剥ぎ取られ木に吊るされた小鬼の死体を見つめながら今日の行動について大声で怒鳴り合い出した。
一方、近くの木立で待ち伏せをしていた鎌倉武士、矢三郎経久は困惑していた。
(…何を言っておるか全然わからん)
特徴的に何度も繰り返される「ごぶりん」という単語の他に判別できる言葉は一つたりともなかった。
中世日ノ本の、それも幕府の支配が及ぶギリギリのところで生まれ育った彼は言葉が通じないという状況を初めて知ったのだ。
小鬼を斃した記念に鹿と同じ要領で首から下の皮を剥ぎ取り、死体を木に吊るして奴の仲間をおびき寄せて殺すなり捕らえて話を聞くなりしようと思ったのだが、先に毛皮と変な布の服を着た男どもがやってきた。
男どもの顔をよく見てみると、赤ら顔で顔面がまるで大工衆が神社に奉納する面のようだ。やはり鬼の一種だろうか。
(…めんどくさい。殺せば分かろう)
矢三郎は赤木の愛用の三人張り(張力60kg)の強弓に音もなく矢を番えると、左から順番に射殺していく。
「ぎゃあああっ」
「なっ、何だ!?冒険者か!?」
「アーチャーだ!姿勢を低…ぐぇっ!」
「逃げ…ぐえぇっ」
「ひぃっ」
「ぐげえっ!」
「がはぁっ!」
五人を気づく間を与えずに射殺した。頭目らしい赤ら顔の鬼はこちらを見て気づいたような素振りを見せたが、動く間を与えず射殺した。
「ごぶりん」のそれと同じように「赤ら顔の人に似た鬼」を射殺した後、数分奴らの増援が来ないか用心深く待った後、赤ら顔の鬼の死骸のもとに近づき、様相を見てみる。
目は「ごぶりん」と同じように青っぽく、顔は日を浴びすぎて爛れたような赤ら顔、何やら鎖を編んだような摩訶不思議な布の上から毛皮を纏っている。酒臭い。あと単純に体臭が臭い。
(…臭いし、やはり鬼の類か?)
(うむ、こやつらも鬼なら吊るしておけばよいな。薄緑ハゲ小鬼の死体でヤツの仲間をおびき寄せようと思ったが、鬼というのは敵に首を盗られるのを恥とも思わんらしいな。ヤツらめ、俺を恐れてやってこなかった。
…吊るした死体を恐れるのだから寝込みを襲われることもあるまい。近くで昼寝でもするとしよう。
…あ、一応首は切り取っておくか。)
矢三郎は殺した六人の赤ら顔の人に似た首無しとなった鬼どもを木に吊るし、近くの横穴に入って二日酔い気味だったからか、あっという間に眠りについた。
彼が眠りについてから半刻(一時間)後、謎の集団が森に入った。
異世界人とのファーストコンタクトは血塗られたものとなりました。
皮を剥がされたゴブリンと首無し盗賊たちが吊るされた木はプレデター2のマフィアのマンション状態になっています。
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