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鎌倉武士は異世界へ 〜武士道とは鬼畜道と見つけたり〜  作者: くらんくしゃふと
第4章 異世界鎌倉武士団 VS 異世界騎士団 〜矢三郎大暴れ〜
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第三十八話 異世界鎌倉武士団、北へ征く

お久しぶりです 2020年も鎌倉武士は暴れ回ります!よろしくお願い致します

「白石矢三郎経久!礼土悪衆(れどあくす)が棟梁舟戮(ふねりく) 討ち取ったり!」


「「「「「うおおおおおおおお!!!!!」」」」」


 鎌倉武士と異世界の騎士との決闘は武士である矢三郎が制した。


 血が噴き出す騎士フネリックの生首を掲げたこの物語の主人公 矢三郎は城壁の敵兵に向き直るや否や、血に染まった太刀を宵の月に掲げて、大気を震わせ吼える。


「いざァかかれや者ども!この城は我らがものぞォ! もののふの力をばいざ見せん!!!」


「「「「「応!!!」」」」


 …王国暦300年代のヤーク地方で2番目に歴史的な夜となったその秋の宵、異世界鎌倉武士団は一息に城壁に取り付き 空が白む頃にはレドアクス城を占拠、彼らはその武力と恐怖を持ってその後のわずか六日間でレドアクス領全土を掌握した。


 騎士の所領が武士に()()されたのだ。


 鎌倉武士という異質な存在はゆっくりとだが、確実に異世界での影響力を増しつつあった。


 ーーーーー


 鎌倉武士のレドアクス領掌握から二日後


 異世界西方ド辺境 ヤーク地方

  レドアクス騎士領 レドアクス城内 大食堂


「ヒャッハァー旨ぇ!騎士はいいもん食ってんだなァ!」


「ジャン!腸詰めこっちにくれ!」


「なぁら代わりにチーズ寄越しな!」


「犬なんかに骨やるな!俺が食う!」

「ケッ 腐れハーフオーク野郎め!」


「今の誰が言った!」


「ったく レドアクスの土地ァ シケた女ばっかだぜ!」


「シケた男にゃお似合いよ!」


 …まさに混沌、そうとしか言いようがない空間である。


 街のゴロツキ(冒険者)から武士団員(ヒャッハー)に転職した荒くれ者、

 堅実な農夫(ビビり農夫)から武士団員(騎士殺し)となった村人衆、

 山の狩人(山の蛮族)から武士団員(ガチの蛮族)と化した山の民たち、

 三者三様に生きていた獣たちの群れが一人の長によって交わり、混沌を生み出している。


 …その雑多な群れの長、戦斧が意匠にあしらわれた長椅子に腰掛けた一人の男、眼光の鋭さ尋常ではなく、この()世界には存在しない鎧、大鎧を纏った一人の鎌倉武士である。

 彼は酒を飲んで頬の感覚が少し鈍る程度に軽く酔い、無自覚に殺気がシラフの時より多く噴き出している。

 そのおっかない様子の首領に気安く話しかける者は普段以上に皆無であり、ヒラの武士団員たちは首領に怯え様子を窺いつつ彼()から離れた席でヒラだけでドヤドヤと盛り上がっている。

 畏怖される件の男と会話しているのは家子や隊長格として周りに座っている冒険者や高位の武士団員たちだけだ。


「人の首をば庭先に飾ることは肝要ぞ… 物の怪を遠ざける また腐臭に慣れることは…」


「首じゃなきゃダメなんスか?(はらわた)は?あと肝臓とかも…」


「やはり首であろう 切って置くのみ、煩ひ無し」


「どうせなら全身串刺しにして飾ろうよ」


「なれば舌を抜き、皮を剥ぐが良いぞ」


 …などと漏れ聞こえる内容だけでどう考えても普通の人間が入っていける会話内容ではない。

 この幹部とヒラが別れて宴会をする構図は一見、身分によって距離感が広がり良くないのではと思うかもしれない。

 しかし、これは無法者の集まりである武士団員が上下関係及び礼儀作法(※鎌倉武士基準)を習得する良い機会なのだ。

 …しかし、一方で宴会とは無礼講でもある。

 酔っ払った女冒険者が角杯から酒をこぼしながら千鳥足で矢三郎の前に進み、げらげらと泣き笑いながらも(一応敬語で)矢三郎に話しかける。


「矢三郎様ァ とうとう城捕りですぜ!

   こ こ こっからどうするんですか?」


 彼女はそう言い終えると同時に脚がもつれて派手に地面にひっくり返る。

 女冒険者を矢三郎はチラリと見遣り、彼女の質問に興味を持って静かに彼の方に視線を向ける武士団員たちをジロリと見渡す。 矢三郎は太刀を掴んで立ち上がり、


「我らはこの石壁城には留まらぬ!代官置きて、北へ往く!」


 斯く、石造りの大部屋をビリビリと震わせるほどの大声で吼えた。


「北っスか?」


「其は何故の事か?」


「わからん」


 金属音を立てて太刀の鞘尻が机に叩きつけられるとざわめいていた大部屋は再び静かになる。


礼土悪衆(れどあくす)は族滅し、礼土悪衆荘(れどあくすのしょう)は、我ら白石が横領した!」


 郎党たちの中から「そうだ」「俺らが勝った」などと言う呟きが漏れ聞こえる。


「…しかし、北に礼土悪衆のともがらと云う 泥武(どろーむ)めと武郎党(ぶろーと)なるが健在なれば、我らの礼土悪衆荘の支配とて確かなるものでは無い!」


「おお」「そうか」「確かに」という気の抜けた声が漏れ聞こえる。…矢三郎の言ったことは武士であれば誰であっても当然に気づくことであるが、彼らは武士では無い。

 個人的な戦闘・狩猟が生業の冒険者や狩人、農夫は言うまでもなく、まだ『戦』というものを彼らは知らないのだ。


 しかし、この矢三郎は『戦』の何たるかを知る武士である。 彼はそれなりにとるべき戦略的な行動を知っているのだ。


「…故に我ら白石の武士(もののふ )は、南から泥武・武郎党を噛み砕き、この荘の支配を定かなるものとし、泥武・武郎党が所領までをも、押領せんッ!」



「「「「「応!!!!!」」」」



 武士団の目標は定まった。あとは実行するのみである。


今から矢三郎が起こす『戦』 は、


 これまでのような、一つの武士団と一つの騎士家が私怨から事を構える小規模なものではありません。

 …二つの連合した騎士家と争い、勝つ。


 それは異世界鎌倉武士団にとって“白石(シライシ) ”というイエの力を誇示し、敵を族滅して奪った領土を防衛する為の重要な一手なのです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] きたー!! 更新きたー!! [気になる点] なん首を置くと言われても 当たり前たよなぁ…程度の感想になってきた 自分の価値観が怖い(笑) [一言] たくさん更新してくれると嬉しいです! 待…
[一言] 蛮族→押し込み強盗→武士団への変化ですね。 ただこの世界、土地支配の正当性を担保する朝廷なり幕府なりが無い分領内統治や外交で色々苦労しそうですね。
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