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鎌倉武士は異世界へ 〜武士道とは鬼畜道と見つけたり〜  作者: くらんくしゃふと
第3章 鎌倉武士、異世界でじわじわ頭角を現す
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第二十九話 熱と愛は熱いもの 《中編ノ上》

どうも読者の皆様 誠にお久しぶりです、

そして明けましておめでとうございます! 2018年4月に連載開始した本作も皆様のご感想と応援のお陰で、無事2019年を迎えることが出来ました! 今後とも鎌倉武士は異世界へを宜しくお願い致します!


また、12/31時点でブックマーク4,444件、感想200件、総合評価 13,166ptを獲得していることをご報告させて頂きます。


 


 蛮人の渾身の蹴りがドガァン、バギャアと木製の正面扉を砕く。


 彼や我々が属す種族、細長い手足と華奢な体躯のサピエンスは肉体面では他の人類種に劣る。当然同サイズの動物とは比べるのもおこがましい貧弱さだが、直立二足歩行の為発達した巨大な大臀筋により生み出される蹴りは一説には大型ネコ科動物をも退けうる威力があるという。つまり、投擲と並ぶ、我々が他の動物に勝っている僅かな身体能力の一つであるという事だ。


 …そして、年がら年中やっている格闘・通りすがりの人間ぶっ殺し鍛錬などの賜物である鎌倉武士的肉体、つまり華奢な体躯のサピエンス種としては驚異的レベルにまで練り上げられた、筋肉が骨を曲げて骨内に喰い込むほどに強靭なものである。 そこから繰り出される蹴りがあれば異世界辺境の教会に用いられるような薄く弱い木材、この狭い建物の中に閉じこもった聖衣を纏った者たちの生命線は武器を使う必要もなく簡単に破られてしまう。


 そして何発目かの無慈悲なる蹴りが扉を縋り付くように抑えていた司祭たちごと吹き飛ばした。


 パラパラと地面に木片が落ちる音と共に吹き込む風として現れたるは、鎖帷子に革鎧、長剣・斧・片手剣等で武装した荒々しい風体の郎党たちを引き連れたがっしりした体格の男 青い大鎧に鹿角立物の厳星兜、鹿皮羽織を身に纏い、腰には太刀を佩かず 似合わぬ大剣(クレイモア)を佩き、左手には上長下短の赤い長弓握った男…


 満を持して場に登場したるは異世界転移した鎌倉武士、治承・寿永の乱に武名を馳せし大武辺者 日向太郎光影が後裔 白石矢三郎経久であった。



「ああ、神よ…」


「うわぁあぁあ」


 司祭たちは突如魔狼に乗って襲撃してきた我らが主人公の炯々たる眼光にビビり倒しているが、その一方めその目には自分たちの身に危害は及ばないのでは? なぞと甘い考えが浮かんでいる。 鎌倉武士の脳内を覗いてみれば 間違いなく、


「よし、こやつら殺す 絶対殺す」


 …と思考しているであろう



 戦国時代の宣教師も言っているように、武士とは目付きが気に入らないだけで切りかかってくる生き物であり、そういう目をすることは武士相手の立ち回り、特に限りなく純粋な武士である鎌倉武士相手にそういう目をすることはOUTなものであった。



  …司祭たちはこれまで敵対勢力から襲撃を受けたことがなく 仕方ないといえば仕方が無いのだが、相手は鎌倉武士である。唯一神に仕える司祭に牙を剥く存在は異世界西方では異教徒たる略奪者 北人ノルド、江狄と呼ばれる北方民族ぐらいのものであるが その北人も面倒な立地の癖にさしたる大都市もない西方の内陸部に、そしてその中でも指折りにややこしい地形であるこの地は襲撃しない。


 …故に、彼ら辺境の司祭たちにとって鎌倉武士 矢三郎は初めての真っ向からの敵対者であった。しかも北人よりももっとタチの悪い戦闘のプロなのだからとことんツイてない。


 腰を抜かして身を寄せ合う司祭たちを見遣り、鎌倉武士はぬははと笑う。



「冒険者どもよう教えてくれた。 『きょーかい』にはこれほど武具や金銀があるのだな 守兵も居らぬ、居るのはかような珍奇な者だけじゃ

 …女もおらぬ」


「へへ、俺たちや不信心な精霊教徒くずれなんで正教徒の教会を襲う北人の真似事になんざ全然罪を感じねぇんでさぁ …村人連中やウォルトフの旦那なんぞなら顔真っ青にして泡吹くでしょうがな」


「…よう分からぬ!」


「き、き、き、貴様ァ!ここを唯一神を祀る神殿と知っての狼藉かぁッ!」


 ヤサブロウ様ァ、この剣貰っていいっスか? 

  応、くれてやるが、その前に()()()に打ち直しして貰うてからにせい

 ヤッター!


 …なんぞと呑気な会話を物騒なものを片手にしている連中に憤った司祭長が顔を怒りで赤く、恐怖で青く、間をとって結局紫色にして怒鳴る。神の下僕であるこの老齢の男は野蛮の権化たる鎌倉武士や粗暴な冒険者たちが神の家に立ち入ることを良しとしていなかった。


 ギョロリと目を禿頭の司祭長に向けた鎌倉武士は弓を隣の郎党に投げ渡し、たじろぐ司祭長の目を見据えながら鎧をガシャガシャと鳴らして近づき、底抜けに素直な声で問う。


「ゆーいつしん?なんじゃそれは、誰はそれは、

  それは俺より強いのか、偉いのか?」


「…な、何を言って???」


「言葉に窮さば 即ち負け、己が弱さを憎め!」


 そう司祭長の回答を聞くが早いか、矢三郎は団滅した盗賊団長から略奪した業物の大剣で司祭長を頭から後の時代に唐竹割りと呼ばれる様相に真っ二つに切り裂いて彼の回答を採点した。無論赤点だ。

 司祭長は飛び散る脳漿と血液と肉片を辛うじて視認し悪夢の状況を大脳新皮質で言語化しようとしたが間に合わず、その意識は闇に沈んだ。


 ーーー もし彼に鎌倉武士の言葉に臆せず彼の神について反論できる度胸があれば異世界武士団棟梁こと白石矢三郎に黒点を貰い、この後重用されたかもしれないが、司祭長にその度胸は無かったのだ。そうはならなかった。それが全てである。



「ハン、神だとして、白石の氏神たる水龍様の方が良い」


「う、うわぁああ!こ、殺した!? 何で!」


「ああ!唯一神様何故このような…」


 司祭長が脳みそをぶちまけて倒れたことをようやく理解できた司祭たちは突如恐怖に駆られヘビに襲われた雛鳥のように叫び出した。失禁している者もいる。巨大な金の聖印に退路を塞がれ、背後には下がれない。彼らには前の敵と戦い 生存権を勝ち取る度胸もない。


「むー、もう良い 適当に殺しとけ この館も打ち壊しで構わん」


 そう鎌倉武士は先程恐怖の叫びを上げた二人の頭をカチ割った後 郎党に命じた。




 その日、異世界辺境西部で一つの修道院が焼け落ちた。このことは歴史に記されなかった。



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感想の一つ一つが作者のニトロブーストです! 一言二言でもいいので感想を頂けると幸いです!こまめに返信返せるよう頑張ります!

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