第三話 一騎打ちと一日の終わり
鎌倉時代での生活の紹介は今話で終わりですね。
ーーー 鎌倉時代に「流派」はない。幼き頃より武芸鍛錬を積み重ねてきた者たちが世代を重ね、作り上げ、守ってきた「一族」こそが「流派」だったからである。
…当然 一族の数だけあった流派の殆どは今日には失伝・あるいは併合している。
さあ、敵の臓物を地にぶちまけるは山下の薙刀か白石の太刀か。
ーーー 勝負は一瞬であった。
山下長治は奇声を上げ相手を威圧、大きく薙刀を振りかぶって力任せに振り下ろした。
小手先の勝負をせず、その巨大な体躯から発せられる殺気に溢れた声と説明不要の威容を活かし、敵を威圧・その隙を突いて 更に身体を巨大に見せる渾身の振り下ろしで一撃で仕留める。
代々体格に優れる山下家ならではの薙刀術である。その心構えは後の示現流に通づるものがあるか。
振り下ろしに手応えを感じた山下であったが、急に使い慣れた得物の重量変化を感じとる。穂先が切り飛ばされたのだ。
山下がそれに気付かぬうちに顔面に太刀の一閃、
矢三郎が薙刀の穂先を切り飛ばした一太刀を構え直さず 摺り足で踏み込み、そのまま顔に切りつけたのである。顔をもろに切りつけられた山下は思わず獲物を取り落とす。
…… それは、山下一族の敗北を意味していた。
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半刻で山下一族は根絶やされた。山下当主に呑まされ泥酔していた殆どの者は苦痛を感じる間もなく殺された。泥酔していた女たちは叩き起され 郎党たちの慰みものとされた後、殺された。幾人か見込みのありそうな子供は白石家の郎党として貰い受けた。
矢三郎は山下の邸と土地を手に入れ、1番上の弟、矢四郎に管理を任せた。
その後は白石邸に帰還、下から3番目の弟が仕留めた猪と、認識している限り一番末の弟が仕留めた鹿を捌き、皆で鍋を囲んでつつきつつ、功を労い、酒を浴びるほど呑んで寝た。
いつもより少し忙しい1日であった。
さて次回より新章突入でございます。