表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鎌倉武士は異世界へ 〜武士道とは鬼畜道と見つけたり〜  作者: くらんくしゃふと
第3章 鎌倉武士、異世界でじわじわ頭角を現す
39/61

二十八話 鉄と愛は熱いもの 《前編》

お久しぶりです!さあ、二十八話、三十話の大台まであと一話を残すところとなりました!


異世界へ転移したるは由緒正しき鎌倉武士・白石矢三郎経久! 銀板階級冒険者になったが早いかヤツは田舎の領主一族を族滅して土地を乗っ取り、領民や冒険者を吸収、武士団を作った! その後、近隣一帯の大領主の後継を嫁に娶って勢力拡大!


さあ、鎌倉武士の明日や如何に! お待ちかねの第二十八話ご開帳!


 


 ーーー 鎌倉武士の異世界転移から1ヶ月と少し後



「この、浮気者の矢三郎さぁあぁん!!!!! 」


「むおお!待て待て!たかが女子を二人囲うと言うだけではないか!炎を出すなッ!」


「何がたかがですかー!!!!!」



  …このカオスな状況が発生しているのはゴブリンと鎌倉武士に惨殺された()()()()()()調()()()()()()の生首が飾られている以外はごくごく普通にのどかな異世界農村 シェルバの旧領主舘、現白石矢三郎経久宅が門前であった。


 件の場所では涙を滝のように流した顔をくしゃくしゃにしたエルフの娘 ペル、そんな崩れた表情でも尚美しい顔立ちのペルが鎌倉武士へ嫉妬と怒りを具現化した細龍の面相の浮かんだ火炎流を放っていた。


 魔術師としての経験が浅く 多少齧った程度であっても持ち前の有り余る魔力と嫉妬の力だけで鎌倉武士を洒落にならないレベルで焦らせる炎の細龍を放てるのだからつくづくエルフとはチート種族である。


「そりゃそうなるぜ ヤサブロウサン… 」


 女の嫉妬の炎に物理的に焼かれかけている鎌倉武士を遠巻きに哀れみ若干批判的なのは『赤角』パーティのビビりなパーティリーダー、アゼルハートだ。 彼は農民出身らしく熱心な正教徒で、教義に反する一夫多妻には否定的である。

 …しかしそれでも片思いしてたギルドの受付嬢との縁談を矢三郎に組んで貰ったのだし、鎌倉武士(怖い蛮族)に夫婦観の違いについて文句を言うほど彼は馬鹿なやつでもない。矢三郎の怒りを買わないように考えられているうちは長生きできるだろう。


「そうかなぁ? 凄い強い首長は女の人いっぱい独り占めにしてるらしいし、矢三郎は凄い強いからペル以外あと()()ぐらいなら良いんじゃない」


 批判的なアゼルハートに対して蛮族北人(ノルド)出身の子供、追跡者(トラッカー)のアバは一夫多妻について理解があるようだ。と言うよりアバの出身民族や鎌倉武士にとっては一夫多妻は常識なのだ。


 …鎌倉武士ならば本妻の他にも多くの側室や妾を持ち子を産ませまくって一族を増やし、その子らが家督を巡って殺し合うまでが様式美である。


 ダンナの浮気相手、亀の前の邸を手下に命じて更地にし、ダンナに頼まれて亀の前を匿っていた哀れな部下の伏見さんを流刑に処すまで怒りが収まらない何処か北条政子さんのような方が変わっているのだ。血統主義的な一面のある武家社会の頭領として、矢三郎や先代以前の白石家当主たちが子孫繁栄の為 多くの女を囲うのは常識・義務の範疇であり、社会的にも当然の行為であった。しかしそれでも女性の地位は比較的高いというのだからわからないものである。


 閑話休題。


 兎も角、異世界エルフに鎌倉武士の常識は通じない。(まあ逆に言えば異世界人の常識は鎌倉武士に全くもって通じないのだが。) そこのところを上手く説明出来なければ攻撃を一切せず防御に回っている矢三郎がロースト鎌倉武士にされてしまうであろう。


 その一方、遠巻きに矢三郎とペルを見ている者たちは攻撃を避けまくるだけの鎌倉武士と単純攻撃ばかりのエルフを見るのに飽きたのか、雑談していた。



「二人?ヤサブロウ様はおめさん以外にも一人

 母々さん持ったんだべか?」


「みたいだねェ 街守の娘で後継者とかなんかとか」


「おお!それぁカティア様のことだべ! こりゃ驚いたべ!

 あン方は(むかす)こごの村にも視察にこられたんだァ 叔父上に当だるクソボケ肥壺クソ領主様に比べだらそンりゃ全ぐ悪ぐねェお人だったんだも、つぅとお硬過ぎるお人だったべ〜…んだげど ヤサブロウ様の母々さぁになるっで言うなら安心だべゃ」


 そこまで一気に捲し立てて言葉を切った壮年の男、顔に向こう傷を受けて武辺者の面構えになり始めたシェルバ村長 ジョエル・芋畑は物凄く感動した顔つきで目を閉じてウンウンと頷いて矢三郎の漢らしさに打ち震えた。数秒後くわっと目を見開くや否や、尚もしつこく唾を飛ばして感動を言語化する。…プレ鎌倉武士のシェルバの男は鎌倉武士的に感情が全面に出るようになったのだ。


「流石は矢三郎様だァ!…豪気なことだべ! 三人も母々さぁ取って、それもただのおなごじゃ無ぐって、エルフの娘さぁに、街守様の跡取りの娘さぁに…おめさんか!」


「ははっ、不老長寿のべっぴんとお貴族様なんかと比べられたらあたしゃ何段下がるか!」


「う〜んにゃ、おめさんもその二人に並ぶべ」


 謙遜をジョエル芋畑村長にフルスイングで打ち返された三号さんは照れ笑いだ。「あたしはあんなド派手な夫婦喧嘩しないよ」と尚も謙遜するが芋畑村長も譲らない。 現代でいえば義母さんが息子が連れてきた彼女を「こんな美人がうちの家に〜」と褒めるのと似ている。この場合は「こんな有能そうな人がうちの村に〜」である。


 …さて、三号さんに「あんなド派手な夫婦喧嘩」と評された、エルフ娘の爆炎攻撃とそれを避けまくる鎌倉武士のコンビに戻ってみよう。



「待て待て!仔細がある!」


「仔細ですって?」


 ようやく攻撃の手を止めた妻に矢三郎がゆったりとした声で妻を宥めながら説得にかかる。脳筋ではあるが鎌倉武士は心理戦も得意なのだ。そうでなければ蒙古人の船に煮込んだウンコ投げ込んだり薙刀に兜乗せて敵に差し出して困惑してるところを殺すとか考えつかないであろう。



「うむ、俺は武士団の長、武士団なるは荒くれの群れ、棟梁なるは其を束ねる長也 」


「はい」



 メラメラと炎の細龍を大気中で踊らせ、顔が炎の反射で赤く染まったペルが冷たい声で半身の構えを取って警戒する矢三郎の言葉を肯定する。


「理に従えば棟梁たる俺の子であれば即ちそれは白石家の後継であり武士団を継ぐ者である」


「はい」


 若干冷静になってきたペルが声色を柔らかくして弥三郎の言葉をもう一度肯定した。怒りを長い間保っていられないというのは彼女と鎌倉武士との少ない共通点であった。(但し 鎌倉武士は怒りが怨みに変質した後は何十年も覚えていて虎視眈々と復讐の機会を狙うという点で異なる)


  尚も矢三郎は続ける。



「白石の血を絶やさぬ為には、何人か病や戦で死んでも良いよう、子を沢山こさえねばならぬであろう? その為には妻は一人では足りぬ…どうじゃ?」


「うーん…そうですね」



 “人間っちゅうんは何時も何時も感情に振り回されよるモンやけど、特にアレなのはウチも含めた女やで覚えとき!”


  …と言うのは作者が金言として心に留めている先輩の名言(迷言)であるが、矢三郎にとって幸運なことにペルは()()()()()()エルフであった。長命種のエルフは定命の人間とはだいぶ違った思考回路を持つ。そのエルフの中でも冒険者をやっていて且つ鎌倉武士の嫁になるようなエルフ娘の思考回路と感情が人間の常識で測れる筈がない。


「それは…道理ですね!!!」


「左様!故有っての事なのだ!」



「…えっそこで納得するのかよ」


 唐突に解決の方向に流れ出した事態に困惑する一般人視点、アゼルハート一人を置いてけぼりにどんどん夫婦の話は進んでいく。


「…わかりました それが矢三郎さんと、矢三郎さんがよく話してくれるご先祖さまたちのやり方で、矢三郎さんや私、何よりいつか産まれる子供たちにとって一番いいと矢三郎さんが思うなら、仕方ないです …でも理解はしても嫉妬はしますからね、女ですから!」


「応、北条政子(尼将軍)殿ほどでなければ、そこもまた()いところと受け入れようぞ」



「…あと、歩き巫女じゃなくてちゃんとペルって呼んでくださいね!」


「…む?覚えておこう」


「も〜、絶対ウソ!」


 初の夫婦喧嘩を終えた鎌倉武士とエルフ、二号さんに気が強い近隣一帯の次期支配者、そして突然鎌倉武士がゲットしてきた謎の三号さん、


 武士団、所領、嫁たちを得ても尚、鎌倉武士の異世界生活はまだ始まったばかりである!



メインヒロインとの痴話喧嘩?というか矢三郎が防戦一方になった初めてのエピソードでした。女房には勝てませんね。鎌倉殿もそうなのですから一介の地頭たる矢三郎が妻に弱いのも当然といえば当然なのです。鎌倉時代の武士の妻は家政を取り仕切る立場なのです。


…感想の一つ一つが作者のニトロブーストです! 一言二言でもいいので感想を頂けると幸いです!こまめに返信返せるよう頑張ります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ