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十八話 鎌倉武士、異世界にて切実に三大欲求の一つを求める。

まずは、皆様にご報告させて頂きます。


本作!なんとなんと、


ブクマ1,354件獲得



異世界転生/転移カテゴリ 日間 [文芸・SF・その他]で第一位を獲得致しました!


これも読者も皆々様の応援のお陰でございます!


今後とも、鋭意努力して参りますので、『鎌倉武士は異世界へ 〜武士道とは鬼畜道と見つけたり〜』を宜しくお願い致します!


ーーーーー


さぁさぁとうとうやって参りました十八話!二十話も目前といったところでありますが、書き溜めが遥か昔になくなって死ぬ思いで書いた十八話であります。


流石にキツいなと思ったので、本編は二日に一回ではなく、暫くは週に二回投稿を目安にしてさせて頂きたいと思います。


十分な書き溜めができれば二日に一回、ひいては毎日投稿へと…!


何故か異世界に転移した鎌倉武士 矢三郎!鎌倉武士的異世界ライフ初日にゴブリン100と奇跡的に全員悪人だった10人を地獄送りにした!


二日目の午前にはたまたま出会った冒険者たちの拠点であるヤークの街に到着、冒険者ギルド長と交渉()し、この街の冒険者では最高位の銀板階級の位を奪い取る!


矢三郎は異世界での野望の実現に着々と近づいていた!


その一方、亡国のゴブリン王にして現魔王、アルファの野望も第一段階を迎えようとしていた…


そして海の彼方で第三勢力が登場!


さあさあ、お待ちかねの異世界血吹雪絵巻第 十八話 ご開帳!


あ、一応 食事回ですが、二番目の陣営ではリアル飯テロがあります。バイオテロ。



 

「飯を、食わねば」



 何故か剣と魔法の異世界に転移してしまった鎌倉武士、白石(しらいし)矢三郎(やさぶろう)経久(つねひさ)は人間の三大欲求の一つを切実に求めた。



 他家との戦や一切の前兆無く発生する殺し合いを生き残る為に必要不可欠である武芸の技能、体力を維持する上でむくつけき鎌倉武士どもが重要視するのは鍛錬と食事である。


 白石家の家子や郎党たちを例に出すならば、彼らは日が昇る前からひたすらに弓術鍛錬やタンパク質確保も兼ねた狩猟、旅人殺し(襲撃した相手に戦いの心得があれば 有意義な良い鍛錬になり、死体から奪い取った金銭や武器を筆頭とする持ち物は何かしらの役に立つ。)、農作業(鎌倉時代には半士半農という括りは無く、源頼朝も言っているように、もののふでも農業従事は当たり前である) などで体を執拗に虐め、


 夕方には山盛りの玄米と塩辛く味付けされたやはり山盛りの獣肉を大量の酒と共に胃袋に流し込む。


 …矢三郎の生きた時代よりかなり時は下るが、戦国時代の武士は塩分過多な食品に囲まれた我々現代人が一日で摂取する五倍の塩分を摂っていたと言われている。


 当然、鎌倉武士も史料に残されているように「塩気の多い」食事を摂っていたわけで、昼間の鍛錬や農作業、人殺しで健康的な汗を流して失った塩分を取り戻す為 かなりの塩分を摂取したことだろう。


 肉の摂取量に関しても、棟梁自ら鳥や獣を狩り、魚を捕っていた鎌倉武士が日々口にしていたタンパク質の量は、仏教に染まったことや、畜産が大多数の地域で行われなかったこと、狩猟の機会の減少などによって薩摩などの一部地域を除き、肉を習慣的に食べなかった戦国時代の武士のそれを平均身長からも分かる通り、遥かに凌駕していたと推測できる。


 …つまり、結論を言うと、矢三郎の体内で鎌倉武士を動かす三大燃料、米、酒、肉が切れかけていると言うことである。



 ゴブリン百体の耳とロード級ゴブリンの首一つを換金し、速やかに悪趣味極まりない装飾が成されたギルドのロビーを抜け出したパーティの一行は、矢三郎の言葉に同調する。


「それは確かに」


「腹減った」


「なんか食いに行こうぜ」


「お主ら、糧食の蓄えはあるのか?俺は食い物は()()()も持っておらぬぞ。鹿や雉なぞでも狩りにゆくか?」


「自炊しなくても大丈夫ですよ。ギルドの食堂で何か食べましょう。」


「しょくどう?」


「ええと、ギルドが料理を作って冒険者に出してくれる場所のことです。」


「ほう、そんなものがあるのか?」


「はい。行ってみますか?


 味は新鮮な魔物の肉を使っているから絶品な上、冒険者には良心的な価格で作ってくれますよ。」


「良かろう。しかし 金子を払って飯を食うとは奇っ怪な事。」


 素朴なもののふである矢三郎にとって、料理と言えば平時は下人が作るもの、戦場では郎党や矢三郎自身が作るものであり、料理を売っている店があるなどとは想像したこともなかったのだ。


 矢三郎はわざわざ金を払って人の作った飯を食うかどとは、鬼の国には妙な風習があるものだ、と驚き 奇妙に思ったが、


 そこは突然 異世界の言葉を話せるようになっても動じず、異世界に2日も立たぬうちに適応し、恐喝と言った方が納得出来る白石家流交渉術を持って 無理矢理 銀板階級(シルバープレート)冒険者の位をギルドから奪い取って この世界ではわりとどこででも通用する肩書きをゲットした矢三郎である。


 相手は鬼なのだからそういうこともあるのだろうとあっさり理解する。



「然らば、さっさとその ”しょくどう”とやらにゆくぞ。」


 飢餓感に苛まれ、理性を保っているのがやっとになってきた矢三郎は、苛立ちを抑え切れていない声で言う。


「じゃあ、行きましょうか!」


 普通の人間ならビビるであろう苛立った状態の矢三郎に平然と天然エルフ娘のペルが声をかけ、案内を買って出た。



「あの悪鬼の広間を通るのは嫌じゃぞ。」


「あははっ、悪鬼の広間ですか。矢三郎さんは詩人ですねぇ。私もあそこはイヤなので、別のところから入りましょうか。」



 ーーーーー



「酒!米!肉!」


 パーティメンバーの案内でギルド食堂に辿り着いた矢三郎は、食事や筆仕事を床に座して行う鎌倉武士にとっては慣れぬ椅子に座り、彼がその生涯 20余年で食べてきた食物の殆どを占める酒、米、肉の三つを、『ぼうけんしゃ』とも異なる動きづらそうな黒と白の妙ちきりんな服、…我々現代人が燕尾服と呼ぶ服を着た食堂の店員に注文した。



「シュッとしてる」という形容詞がぴったりの、糊の強いパリッとした直線的な線で構成された燕尾服に身を包んだ若い店員は混乱した様子である。


「コメ」が何なのか知らないのだ。


 思わず彼はどのようなものか一切の想像がつかない固有名詞をオウム返しする。



「こ、コメ、でございますか?」


「米じゃ!鍋いっぱい持ってこい!」


 矢三郎は米以外に何があるというのだ。と言った様子で脳内にはっきりと画像としてイメージできる大量の米を求める。



「…そ、そのようなものは 当店では取り扱っておりませんが…」


「……なんじゃと?」


 矢三郎は思わず聞き返す。


「…………こ、米の話をしておるのだぞ?俺は」


「…は、はい、ですのでコメなどというものは…」


 鎌倉武士の最重要燃料にして主食である米がこの世界の少なくともここには存在しないという異常事態を理解した矢三郎は動揺する。


「………さ、然らば、お前達は米を食わずして何を食うというのだ」



「…に、肉とかパンとかスープです」



「ならば それを山盛り持ってこい!酒もだ!」



 矢三郎は縄文時代末期から弥生時代以降の日本人にとって 必要不可欠な主食が存在しないという異常事態に狼狽えるが、今回は異世界人(鬼ども)の主食で手を打とうと決め、不機嫌に人生初の注文をした。



「お酒の種類は何に致しましょう?肉の種類と焼き加減は?パンはバケットでよろしいですか?それとも黒パンに致しましょうか?」


 大雑把な注文に困惑した店員は、詳細な注文内容を求める。


「…ええいっ!めんどくさい! お主らが先に決めよ!」


 意味のわからない単語を早口でまくし立てる白黒服の男をぶった斬ってやろうと思わず右手の隣に立てかけた太刀を掴みかけたが、それでは飯が食えぬと矢三郎は空腹で消えかけている理性を働かせ、この「しょくどう」とやらについて知っているであろう「ぱーてぃ」の者共に注文を任せることにした。



「えーっと、なら 私はリンゴ酒を一瓶、肉はイノシシのステーキを。焼き加減はミディアムで。あとスープもください!パンはバケットをお願いします。」


 早く注文したくてそわそわしていたペルが、真っ先にかなり安くて腹に貯まり、エルフのアルコール耐性ではそこそこ酔えるメニューをオーダーする。


「ワシは山夷(やまえびす)の火酒を一升。他はエルフ娘と同じで構わん。」


 兇悪な形の手甲は外しているしわしわの老人、イヅマも素早く注文する。


 続いて、アゼルハートが口を開く。


「俺は岩山鹿のステーキをウェルダン、パンはライ麦パン、スープもくれ。あと、酒はちょっと贅沢して ドルイニオンの葡萄酒(ワイン)をくれ。」


「え?」


「は?」


「んん?」



「…アゼルさん、タダでさえお酒弱いのにドルイニオンの葡萄酒(ワイン)なんて代物を頼むんですか?下手なオログ(ハーフトロル)ですら卒倒する代物ですよ?」



「見栄張るなよ」


「無理したらいかんぞ」


「バカなの?」


 パーティメンバーの言葉にアゼルハートが憤慨する。


「…な、なんだよ!お前ら俺が呑めないってのか!? 舐めんなよッ! 聞いたよな?ドルイニオンのワイン 一本だ!」


「承りました」



 辺境の城郭都市、ヤークは深刻な冒険者不足に悩まされており、対策として 低ランク冒険者のほとんどが金とその日の食事を求めて冒険者をやっているという点に着目し、食事だけは安価で豪勢にしている。


 それ故にかなりの赤字である食堂で、半年に一度出るか出ないかの最高級の酒が注文されたことは、自分のボーナスに繋がるだろうかと考えながら、店員は注文を木炭で木の板に書き留める。



「私は芋酒を一升。あと表面をさっと炙った鹿肉を。」


「アバどうしたんだ?頼まないのか?」


 北人(ノルド)の子供は、油紙に包まれた高級感のある筆記体で文字の書かれたメニュー表を握りしめ、難しい顔で睨んでいたが、アゼルハートの問いに、意を決した様な表情で発言する。


「…ど、細龍(ドラウグ)の肉、が、食べたい…デス」


 パーティの面々に緊張が走る。


「矢三郎サンの奢りなんだぞ、少しは考えろって! 怒らせたらどーすんだ!?」


 コソコソ声でパーティの代表としてアゼルハートがアバに警告する。


 実は店に入る前に、ゴブリン退治の褒賞金では パーティの一同と矢三郎で山分けした場合、三日間の生活費程度にしかならず、パーティのメンバーが矢三郎に「この金額ではあまり食べられない」という旨のことを伝えると、矢三郎がギルド長 マリウス子爵から脅し取ってきた金を提供するというやりとりがあったのだ。


「しっ、仕方ないだろ!食べたいんだもん!ヤサブローがカンテゼーレの旦那からカツアゲした金見たか?あんな大金 あと何年拝めるか わからないぞ!


 今しか食えない!あんな高級品!」


 シグルズの子、アバという人間は この国に住む人間 誰にも実年齢は明かしておらず、サバ読んでいるが 実際には13歳になるかならないかであり、見た目からしても明らかにちっちゃいのに 故郷の北の果てから遠く離れた「大陸」西部の辺鄙な土地にあるヤークで冒険者をやっているような訳アリの、異国語である西部語があんまり話せない 上、山しか知らないコミュ障である。


 しかし、世間の荒波に揉まれた若きアバは、金銭の面では図太く逞しい。



 明らかに気が短い畏ろしげなもののふの奢りで最高級の肉を食おうとするほどには。



「そりゃそうだ!でも矢三郎サン怒らせたら、ブッ殺されちまうぞ!」


 農民出身のヘタレパーティ長、アゼルハートも、他人の奢りで高級品を食べたいというのは貧乏人の共有感覚で痛く同調するものの、相手が相手なのでアウトだと否定する。


「そんなことする人じゃねーよ!」


 アバが怒鳴る。


「いや!ぜってー殺すね!」


 アゼルハートが怒鳴り返す。


「殺さない!」


 アバが怒鳴る。



「何を、揉めておる?」


 早く食いたい中で何かごちゃごちゃ話している2人にあからさまに苛立った矢三郎が低いトーンで声をかける。


「矢三郎サーン!アバが細龍(ドラウグ)の肉を食べたいって言ってまーす!」


 アゼルハートが矢三郎の凶悪な視線に当てられて妙なテンションで叫ぶ。


「どらうぐ? なんじゃそれは?」


「小型のドラゴンです」


 ペルが説明を挟む。


「…どらごん?…なんじゃそれ」


 空腹と意味のわからない単語が連発される状況に矢三郎の我慢は限界を迎えかけており、放出される殺気は天然エルフ以外のパーティメンバーの姿勢を正させ、周辺で飯を食っていたパーティをゾッとさせるレベルだった。


「え〜っと、龍です」


「何!?龍の肉が食えるのか!?」


 不機嫌だった矢三郎のテンションが爆上がりする。矢三郎の所領には水龍の社があり、その龍を白石家の氏神として代々祀っている。


 氏神の同族を食えば、何か凄く滾るような気がするのだ。



「まあ…高いですけどね」


 銀版階級パーティ以上でないと討伐できない細龍の肉は、森のエルフ王愛飲のドルイニオンの葡萄酒とすら比べ物にならぬほどの高級品である。


 流石の天然エルフ娘も躊躇する。


「おい、そこな男、俺に龍の肉を寄越せ。あと、何でも良いから強い酒を持ってこい。ほかは何でも良いから山盛りじゃ!」


 しかし、細龍(ドラウグ)の肉の価値をあんまりわかっていない矢三郎はあっさり注文する。


 空腹で獣に成りかけている矢三郎の爛々とした眼光に気圧された店員は逃げ出したい衝動に駆られたが、高級細龍の肉×2 オーダーという大金を稼ぐビックチャンスに接客業魂を声を奮起させて尋ねる。


「そ、そちらのお客様はどう致しましょうか?細龍(ドラウグ)の肉を?」


「食いたいのだろう?食えば良い。」


「やった!ヤサブロー ありがとー!」



「では、今から注文に沿ってお作りしたしますので、暫くお待ちください。」


 注文を受けてから料理が完成するまでは30分ほどかかるとペルから聞いた矢三郎は、その時間をこの奇怪な世界の情報収集と暴力行為に当てた。


 ーーーーー


 (くろ)アングルドゥア(牙の砦)の名に恥じぬ、墨を一滴落としたかのような暗黒の広間で


 ゴブリンの魔王、アルファは献上された食事に当惑していた。


 詳細な描写は控える。


「これは、何だ」


「へ?肉ですぜ?」


「そうではない。蛆虫が湧いておるではないか。」


 魔王 アルファは、双翼龍(ワイバーン)に顎を砕かれ、爪で顔をズタズタに切り裂かれながらも 一人で、それも恐ろしく粗末な戦斧を使って双翼龍(ワイバーン)を斃した時に負った深い傷によって彷徨った死の淵から生還したその半生の中頃から己の強さを誇示するが如く染まり始め、今となっては完璧に赤く染まりきった鬣と繋がったやはり赤い髭を撫でながら困惑する。


「へえ?ウジムシ? ああ、ウジのことですかい!美味いですぜ!肉を齧るたびにプチプチはぜて」


 高濃度の魔素が漂うこの空間で生まれ育ってもなお小柄なスナガ種のオークが大振りなジェスチャーを交えて甲高い声でウジ虫の美味さを力説する。


「何たって、魔王様の砦の守護者たるガーシュ様が認めた新しい魔王様だ、俺たちの分も、たくさん食ってもらわねぇとな!」


 スナガとは対象的な、岩のような肌を持った山脈のように大きいオログ(ハーフトロル)が低い地鳴りのような声で大岩のようなぶっとい腕いっぱいの蛆虫が湧いた肉を山盛り勧めてくる。


「…うむ」


 立ち上がったアルファに恐縮した二人の対象的な白肌のオークたちからウジの湧いた肉を引ったくり、口に生えた鋭い牙でバラバラに噛み千切り、呑み込む。


 人間風の味付けをされた美食を王として君臨してきた半生で食してきたアルファにとって、多少身体が大きいだけの雑兵ゴブリンだった時代に死体を漁って食っていた蛆の湧いた肉は、懐かしい味わいだった。



『生きていれば、次がある』



 ーーーーー 全てを失っても、俺さえ生きていればやり直せる。



 そうだ。



 生まれ落ちた群れをオークにすら劣る低位の冒険者に襲われて失った雑兵時代も、築き上げた王国を太龍ですら屠れるであろう高位の冒険者に滅ぼされた君主時代も、


 大して変わらぬ。


 20そこらの群れを掌握した人生の最初期も、500の屈強なオークの兵士を手に入れた今も、俺が目指す高みと比べれば、


 大して変わらぬ。



 …余は雑兵。いや、ヤツらからすれば 我など虫以下であろう。


 自らの被造物が魔王などという訳のわからぬ存在に咼められるを見るに留めた忌々しい神々どもには。


 ヤツらが我がこの世界を掌握するを許すはずがない。


 咼められた忌み子が、正当な、祝福された子らを殺し、奴隷とするを許すはずがない。


 ヤツらは、何れ 何らかの形で余に干渉してくるであろう。その時は、


 ーーーーー 余が、必ず、惨たらしく殺してやる。



 怒りと憎悪の気配を纏い始めたゴブリンの魔王に身の丈 1m少しのスナガと5mのオログが畏怖し、後ずさり始めた時、魔王の副官が姿を現した。


「魔王様」


「ガーシュか」


 3メートルを超える強靭な巨躯を持つ、血で身体を染めた赤毛のオークが玉座の遥か下段で膝をつき、頭を下げる。


死人遣い(ナズガル)どもの長と、青の山脈の狩人(フェラル)どもの長が 到着致して御座います」


「通せ。」


 大戦争の第一段階の始まりだ。


 王国を築いた時のように、一つ一つ、積み上げていこう。


 遠からぬうちに忌々しい神々とやらの加護を受けた連中から耕地や城を奪い取り、やがては我ら闇の眷属が世界を支配するのだ。


 気が遠くなるほどの段階を超え、何れ 余が直々に、神々などというふざけたものは皆殺しにしてやる。



 ーーーーー



 プレタニケ島 正教七王国 聖エセック正教国領 王都近辺 草原地帯


「大異教徒軍」駐屯地 日暮れ前



「腹ァ減ったぞ」


「メシはどうなってやがる」


「今 炊事係が作ってるよ」


「ウソつけ、どこからも調理の煙が出てねぇじゃねーか」



 故郷の北方の地の主要交易品でもある毛皮とプレタニケ島の各地で略奪した鎖帷子や装飾品に身を包んだ大柄な北人(ノルド)達が空腹に絶えかね、北方語でぶつくさ言っている。


「じゃあ、近くの村から食料奪ってきてんだろ。普段ならもう飯が出来てる時間だがよ、今日は何しろ、またあの方が王国を滅ぼしたんだ。


 略奪し放題のお祭り騒ぎさ。この島は大陸の地方都市と比べて何もかもがショボっちいが、腐っても王都だ。クソッタレの『ゆーいつ神様』の教会に、お宝もザクザクってなもんよ。」


 恐ろしげな狼の毛皮を頭に被り、見事な金の髭を蓄えた一人が西の方角で派手に上がる煙を横目に言う。


「ははっ、違ぇねえや。俺たちも護衛で行けねーのが残念だ。まあ、サセック王国の時に散々 奪ったから良いけどな。


 …しっかし、あの人はホントにスゲェよなぁ。御父上(ラグナル)も凄かったが、あの方はもっと凄ぇ。」


「頭が良いんだよな。ありゃ、知識神の化身に違ぇねえ。ラグナルでもこの一万の軍勢は纏めきれねぇだろう。」


「頭だけじゃねーぞ。足は悪いがあの方の弓の腕前はかなりのもんよ。ゴルフリズ王との戦いで敵将の頭をあのバカでっかい弓で射抜いたのを見たぜ。」


「頭もいい、腕っ節も強ええ、足さえマトモなら完璧だな。」


「それは違うぜ。知識神は片目がねえだろ?それと同じだ。あの方は目の代わりに足が悪いんだ。」


「やっぱり、知識神の化身だな!」


「知識神の化身でも、顔は戦乙女みてえにべっぴんだけどな!はははっ」


「ヒゲがありゃもっと貫禄が出るだろうになぁ。ま、あの方ほど賢くて強けりゃ ナメるようなアホもいねぇから、貫禄なんざ必要ねェだろうが。」


 基本的に短期間での略奪活動しかしてこなかった脳筋の集まりである北人(ノルド)たちにとって、彼らの軍団を組織的に指揮し、連戦連勝、一万の大軍を率いて破竹の勢いで進撃し、国を都合 四つ滅ぼしている「あの方」と呼ばれる存在はさながら神々の一人ように映るのだろう。


 そんな退屈紛れに雑談を交わす北人(ノルド)達の遥か後方、広大な駐屯地の中央、一際大きな天幕の中に、「大異教徒軍」の総大将は居た。


 …プラチナブロンドとでも形容したら良いであろうか、そのような色合いの艶のある長髪を無造作に頭の後ろで束ねた恐ろしく華奢な青年が、馬や人を象った駒や、このプレタニケ島のあらゆる地域の地図、そして地図上の距離を測る道具などが素人目に見ると無造作に溢れかえている机に、難しい顔をして向かっている。


 その シミひとつないきめ細かい肌に熟練の彫刻師が彫り込んだかのような顔は、女と見まごうばかりの端正な美形である。


 …個人の武勇伝が物語(サガ)になるような北人の英雄には美形が多いが、(人を惹きつける魅力がないと伝説になるような冒険や略奪で生き残れるほど仲間が集まらないからだ) その男どもの美しさは、引き締まった若駒の様な健康的な漢の美である。


 しかし この青年の体格は、弓術を嗜む為 それに関する筋肉はがっつり付いているが、それ以外の部分は細く華奢で、旦那を尻に敷き、戦場に出る者も多い苛烈で逞しい北人(ノルド)の女性と比べると著しく細い。


 我々の視点から見ても彼の身体は弱々しく見えるが、それが船乗り脳筋マッチョマンだらけの北人の常識から見れば、その成長期を迎えても筋肉が盛り上がっていない華奢な体躯は尚更 不健康である。


 しかし、その卓越した戦術眼と海よりも深い知識、争いごとを調停できる得の高さ、ウォーロードにあるまじき穏やかな気性、整った顔立ちなど、北人達から支持されるに十分に値する人物である。


 …北人がアホアホで喧嘩っ早くて気性が荒いだけだとかは言ってはいけない。


 それに、彼が卓越した知性を持っているのは事実なのだから。




「兄さぁああぁああぁあ!!!!!!!!!!!!」




 突如響き渡った野太い叫び声に天幕がビリビリと震える。



 彼が女というには少し低く、男というには少し高い声で「なんだ騒々しい」と不満げに呟いた後、その大声が発せられた方へ首を回す。


 不愉快な感情を乗せた彼の目線の先には 熊の毛皮に身を包んだ、彼とは対象的な黒髪のデカくてゴツい青年が立っていた。


 大量の血を頭から被り、身体中に矢傷や刀傷を作りながらも、肩に大斧(ノルドアックス)を担ぎ、豪快な笑顔を顔に浮かべている。


 その傷だらけの大きな青年の姿を捉えた彼の目は、不愉快な冷たい目から、やや穏やかなものになる。


「何だ、お前かビョルン。また生傷作ってきて… ますます顔が怖くなるぞ。」


「向かい傷は男の勲章!ヴァルハラでも神々に褒めてもらえるぜ!


 …ところで兄さん、何してんだ?」



 外見からは絶対に気づくことは出来ないが、顔面についた数々の傷のせいで老けて見えるこの大きな青年は、彼の弟の一人である。


「補給線の配備。エセックの王宮でやっとここらの地図が見つかったから、これ使って早めに各部隊の兵站の補給地点決めとかないと。」


 珍しく酒と戦いと略奪以外に興味を示した弟に興味を持続してもらえるよう、伝えたい概念を簡略化して分かりやすく説明した後、彼は机に向き直ってカリカリと地図に何やら書き込む作業を再開する。


「へーたん…たしか飯のほきゅー地点のことだったよな? 飯なんて行く先々で奪えばいいじゃねーか。なんで兄さんが地図に絵を描く必要があるんだ?」


 ビョルンが絵と評したのは、地図に書き込まれたこれまでの行軍ペースから求めた今後の日ごとの行軍距離や、兵士たちが勝手に近隣の村々を襲うことなども計算に入れた 行軍予定図及び、補給ライン図だ。



「…略奪だけで戦が出来れば苦労せんわ たわけっ!


 …いいか、ビョルン、次に攻めるのは高地に住んでいる連中(ハイランダー)と、辺鄙な場所に住む余所者を憎む帝国人の末の小王国群だ。一万の大軍を食わせるほどの食べ物は絶対に手に入らない。


『国獲り』をするなら食い物の計画的な確保は絶対に必要なんだ。」


 彼は弟に兵站の概念を伝えようと四苦八苦する。




「よくわかんねえな」




 …残念ながら斧を振り回すことと酒のことしか考えていない北人の若者には兵站の概念は理解出来なかった。


「…まったく、お前たちがそんなだから兄さんは苦労するんだ! 父さんもそうだったが、お前たちも相当なアホアホだ。」


「父さんは賢い人だっただろ?」


「賢い人間はたった二隻で敵国に殴りこんだりしない!


 お前たちは小さかったから知らないだろうが、昔は 死んだ二人の兄さんや俺と母さんは色々と苦労したんだからな。





 …犬死しやがって、バカ親父」



 殺された彼らの父の復讐の為に集まった一万の軍を息子たちが動かして 比較的温暖で、豊かな耕地と富があるプレタニケ島を侵略しているのだから、犬死という訳では無いが、偉大な父の死は息子たちにとっては早すぎたのだ。


 亡くした父を悼んで、空気が少ししんみりしてきたが、湿っぽい空気を嫌う剛勇のビョルンが話題を変える。


「でだな、兄さん、飯持ってきたぞ。細っこいんだから、たっぷり食わねーと飢え死んじまうぞ」


 親戚のおっちゃんのようなことを言いながら、兄に歩み寄ったビョルンは、カゴに入れていた料理を無骨な腕いっぱいに収め、無造作に兄の机に置いていく。


「地図の上に皿を置くな!


 …今日は馬の肉を焼いたのとシチュー、パンか。


 肉は誰かが馬を潰したやつで、パンは故郷で作った航海食、シチューの材料は正教徒から徴発してきたものかな。」


「まあ、何でもいいから 食おうぜ兄さん。エールもあるしよ。」


 適当な腰掛を見つけてきて腰掛けたビョルンは二人分の角杯にエールを注ぐ。


 北人(ノルド)たちが略奪活動の時に食す、長期間の潮風に当たっても腐らないようにカチカチに固めたパンを獣の乳に水を加えながらじっくり野菜を煮詰めた大皿いっぱいのシチューに浸し、少しは柔らかくなったところで、ぼりぼり噛み砕く。


 水分が飛んでとろみが増したシチューの舌触りがまろやかで、非常に美味である。


 味から判断するに、ヤギの乳だろうか。ここら一帯では特産品なのかなんなのか知らないが、飼育されているヤギの数が多い。ヤギの乳は牛のものに比べると独特の臭みがあるが、パンに浸すと舌触りが良くて、北人達にも好評だ。


 何より、酒の付け合わせにピッタリである。


 兄弟はエールをぐびぐび飲みながらがつがつパンを齧り、塩辛く味付けされた馬肉を喰らう。


 しばらく 大陸式のマナーは一切 心得ていない北人(ノルド)たちの、ずるずるといった啜る音や咀嚼音、口の端から酒をこぼす音が聞こえる以外 無言での時間が過ぎたが、


 ふと疑問に思った兄がビョルンに尋ねる。


「…で?お前 何しに来たんだ?潰走する国王軍を追跡して国王を捕らえるように命じたはずだが。」


「ああ、そうそう!褒めてくれよ兄さん!俺 エセックの国王サマを取っ捕まえたぜ!」


 くちゃくちゃパンを()みながらビョルンが相変わらず大声で兄の疑問に答える。


「そういうことは早く言えアホ!」


 呑気な弟に怒った兄が頭に角杯をブン投げ、額に見事に角の尖った先が突き刺さる。


「痛え!」


「なんで飯なんて食わせるんだ!このアホ!」


「隙があれば兄さんに飯を食わせとけって母さんが」


「俺をなんだと思ってるんだ!飯ぐらい自分で食う!


  …早く王の所へ連れていけ!歩いてる暇はない!担げ!」


 鍛冶屋に特注した金属とレザーの器具で補強していてすらあまり上手く歩けない弱い足を持っているものの、それと同時に戦に天賦の才を持っている小柄な線の細い青年は、強靭な肉体とあんまり良くない頭を持った正反対の弟の肩に担がれ、捕縛されたエセック正教国王の元へ向かった。


 ーーーーー



 …さて、舞台は大陸西部 ヤークの街、「赤い鬣」ギルドが食堂へと戻る。



「…ホントによく、食べる、な」


「赤角」パーティの追跡者、北人(ノルド)のアバが呆れ顔で矢三郎を見やる。


 本命である細龍の肉が出てくるまでの間、矢三郎は空腹に耐えかね、隣のテーブルで食事を取っていた鉄板階級パーティである「赤脛(あかすね)」を襲撃、まず前衛の大剣使いを棍棒で殴り倒して 岩猪のTボーンステーキとエールを略奪、激昂した魔法使いのパーティ長を筆頭に次々に棍棒で昏倒させ、様々な種類の肉とスープ、シチューの類を奪った。


 それを目撃した「赤脛」と友好関係にある「赤頭(あかず)」パーティが敵討ちとばかりに矢三郎に襲いかかり、彼らも須らく棍棒一本でのされた。


 この他にもただでさえ血の気が多い冒険者共 二十数人が流血沙汰に大興奮し、矢三郎に剣や戦鎚、魔法攻撃を繰り出すも、それを棍棒一本で叩きのめした矢三郎はその全員から料理を奪い、「赤角(せきかく)」パーティの机に溢れんばかりにごちゃごちゃと並べた。


 さながら黒澤映画の店で起こる乱闘の如き、冒険者がぶっ飛んだり、皿が空を舞ったりする大乱闘にパニックになった食堂の店員たちは、ギルド長 マリウス子爵に指示を仰ぐべく 店員の一人を走らせるが、暴れている冒険者の風体を聞いた途端に、


「死にたくなかったら、あのお方のことはほっとけ。何か壊されても、赤字の食堂がもっと赤字になるだけだ。ハハッ 」


 と半泣きのマリウス子爵に言われた店員は、どうすることも出来ず、そのままの言伝を他の店員に伝えた。


 店員たちは暫く右往左往していたものの、


 明らかに殺人者の気配を纏った、冒険者二十数人をブン殴って気絶させるほどの強さを持つ畏ろしいもののふでこそあるが、金払いは良い矢三郎に接客魂を奮起させて追加の注文を取りまくった。


 ほかの客が全員のされてしまったので、矢三郎とパーティメンバーが注文した料理は通常よりも早く出来上がりそうである。



 …そして今の状況に至る。



「でも呆れちゃうよな、『腹が、減った!』つって突然隣の席 座ってたパーティに殴りかかってくんだもん」


 もちゃもちゃとちゃっかり矢三郎が奪い取ったパーティ長 アゼルハートの生活費10日分ほどもするコカトリスの骨付き肉を齧りながらアバが言う。


因みに、先程注文したメインディッシュの細龍のステーキは一個につきアベルハートの食費100日分である。


「なに、殺しとらんのだから良いだろう。」


「それはそうだけど…」



 相手を殺さず、恥をかかせて生き延びさせるなど、後ろから刺される危険があるのではないか、

  狡猾な鎌倉武士 矢三郎にしてはツメが甘いのではないかと思われるだろうが、



 今回に限っては相手を生かすことに意味があるのだ。



 魔王になった威風堂々たるゴブリン、アルファすら睨まれると思わず硬直する炯々とした、異世界に住む者達には、人間のものとはとても思えないその目で殺意を持って見られ、尚且つ、夜の10時頃に銀板階級(シルバープレート)冒険者を殺してから 凡そ10時間ぶりの戦闘に昂った矢三郎の浮かべる人殺しで飯を食っているもののふ特有の、殺しが楽しくて楽しくてたまらないという感情をそのまま鏡写しにした笑顔は、ゴロツキかそれより少しマシ程度の覚悟しかないヤークの冒険者たちを恐怖に陥れるには十分過ぎるものだった。


 事実、これより後に矢三郎がギルドで行う 白石家の所領でやっていたような傍若無人な振る舞いに文句を付ける冒険者は居なくなった。


 矢三郎が襲ってきた連中に己の強さを示すという意味以外にも、彼らを殺さなかった理由はある。…この場で殺すより、生かしておいた方が得だからである。


 矢三郎は天然エルフ魔術師娘のペルから、彼が白石家流の交渉の末に就任した銀板階級(シルバープレート)が、この街の中で最高位の冒険者であると聞いていた。


 力こそ全ての鎌倉武士の常識に沿うならば、矢三郎を力ある者が得る位である銀板階級(シルバープレート)だと知れば、ほとんどの者は彼に面と向かっては歯向かわないだろう、と踏んだ。


 しかし、一部の無謀な者、…矢三郎のような、強大な力を恐れぬ者は、この位を奪わんと襲ってくるかもしれない。


 …故に、先手を売って冒険者たちを半殺しにしたのだ。


 ーーー 俺の恐ろしさを敵となりうる者たちに直に叩き込み、二度と逆らえないようにする。恐怖は道具なのだ。


 周辺の地頭家と所領の取り合いをしていた時に何度も使った手だ。


 一度恐怖を叩き込まれれば、相手は二度と俺に歯向かわず、勝手に俺の恐ろしさを仲間に喧伝してくれ、噂に広まる俺の虚像はどんどん大きくなっていく。


 と、二手三手先まで考えての暴力行為であったが、何だかんだで飯を奪うためというのが行為に及んだ第一目標であった。


 メインとサブ両方の目的を果たした矢三郎は、龍の肉を心待ちにしながらも、略奪した料理を腹に流し込みながら 百のゴブリンと十人の人間を殺した時に消耗したエネルギーを急激に取り戻していた。



「お、この肉美味い」


 バジリスク肉の美味さに気づいたアバが勢い良く巨大な骨付きの脚を齧り始める。



「どれ、俺にも齧らせろ」


「いいよ、はい」


「代わりにこれをくれてやる。美味いぞ」


「何の肉?」


「知らぬ」



 戦場でひもじくなった時は皆でひとつの干し柿を齧り、平時でも皆で同じ鍋をつつく習慣のある白石家の侍と、エールを回し飲みしたりする北の民の二人は所謂間接キスに別段抵抗はないが、大陸の一般的常識の元に育った他のパーティメンバーは目の前で繰り広げられる齧りかけの肉の回し食いに「うわぁ…」という言葉がぴったりの様子だ。


「おお、美味いな。雉とヘビを足して二で割ったような味じゃ」


矢三郎の貧弱な語彙では、「塩っぱくて美味い」としか表現出来ないものの、一口齧る度に脂と旨味がどんどん出てくる珍味である。


「凄い!ご名答ですよ!コカトリスは鳥と蛇の間の子みたいな見た目の魔物ですから。」



 他のメンバーが肉の回し食いにドン引きする中でも やはり何も気にせずに、やはりちゃっかりと矢三郎が奪ってきたオニオンスープにパンを漬けて食べていたペルが、矢三郎の意外な味覚の鋭さに驚いたかのように、彼の言葉に答える。


「鳥と蛇の合の子…?鬼の世界には妙な生き物もおるものよのう」


会話の切れる頃合を図っていたかのように、一人の人間が姿を現す。



「お、お、お待たせ致しました、細龍のレアステーキお二つに、150年ものの葡萄酒お二つで御座います…」


「前例」の反省を生かし、劣情を催した冒険者に襲撃されないように男のみで構成された店員の一人がテーブルマナーもクソもなく 略奪した食べ物が乱雑にゴチャゴチャと置かれた机の、矢三郎の近くになんとか隙間を見つけ、曇りガラスの酒瓶とプレートに乗った表面をサッと炙っただけの血のように赤い、大きな肉を置く。


「おお、これが、龍の肉か…」


 感嘆した矢三郎は、じっくりとその肉を眺める。


その背後ではパーティメンバーの料理も同じタイミングで出来たらしく、続々と運ばれてきている。


 短刀と同じ持ち方で握りしめたナイフを、敵将の首に突き立てるように細龍の肉に突き刺すと、討ち取った首級を胴から切り落とす時 (さなが)らの動きで豪快に肉を切り取り、薙刀に突き刺した敵将の首を掲げるが如く、勢い良く赤い龍の肉を己の口元に運んだ。




今回は食事を中心に据えて鎌倉武士 矢三郎とゴブリンの魔王、そして新陣営を回る回と行った感じでしたが、鎌倉武士のライフスタイルについての紹介と血なまぐさい白石家の日課についても触れております。


…1度 詳しくグルメの解説的なことを矢三郎が脳内で考えるのも書いてみたんですが、源氏の惣領たる頼朝さえ塩鮭を「最も美味い食いもん」と評し、尚且つそれがド田舎の鎌倉武士なら食事に関するボキャブラリーがそんなにいっぱいあるはずねぇなと思ってやめました。


「塩っぱい=美味い」


…鎌倉武士とゴブリンと北の蛮族は食事回には向いていない。…つーか、なんちゅーメンツだ。どれが主人公かわからんぞコリャ。


食ってるもんも 他のパーティから奪った料理と蛆虫湧いた生肉と塩辛い焼いた馬肉とシチューに浸したカッチカチのパンだし。


今回は矢三郎がほかの冒険者を棍棒で殴り倒すのみでしたが、次回以降 割と色々と殺しまくると思われます。


明日 次話(?)投稿します。




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― 新着の感想 ―
[一言] 読み進めてます! こういうお話めっちゃ好きですっ><
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