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第十四話 銀板のろくでなし共と青鎧のバルバロイ

まぁっっつことに申し訳御座いません!


10日ほどプライベートの関係で、ド田舎に出向しておりました。


流石に電波は届くだろうし、普通に投稿しようと考えていたのですが、想像を超える山岳地で、圏外も圏外でした。


10日近くも投稿できず、返す返すも申し訳ありません。





ゴブリンの巣穴は爆破され崩落、ただの焼け肉の臭い漂う滑らかな斜面と化し、唯一生き長らえた巣の主は遥か彼方へ駆けて行った。


矢三郎が突然爆破敢行したことで少し騒ぎがあったが、なんだかんだで空から暖色が消えるまでの間にパーティメンバーたちはゴブリンの(おび)しい数の死体から切り取った耳を大きな袋に耳を収め、馬番をしていた二人の元へ帰り、馬に跨り、街道へ出ていた。


誰にも気づかれてこそいないものの、矢三郎が腕を千切り飛ばしかけた為に失血で憔悴しきった巨躯の剣士、ホルトーは青い顔で馬に繋がれた荷置き用のソリに臥せっている。腕の再生はゆっくりと進んでいるとは言え、血が足りないのだ。



「耳を切って袋に入れるとは良いやり方じゃ。かさ張らず、そのうえ功を誤魔化せぬ。」


ホルトーの馬に乗った鎌倉武士、矢三郎(やさぶろう)は感心したように言う。割りとあっさりこの世界の馬を乗りこなし、突然異世界語を話せるようになったことにも動じず順応するあたりは、流石である。


「二個揃えて持ってかないと一体分の手柄にならないんだぜ?耳だけ切り取る方が難しいっての。」


ソリを牽引する馬に乗った追跡者(トラッカー)、アバが笑いながら言う。


「ふん、相手が鬼ども(お主ら)に仇なす小鬼どもだから使える手じゃ。…人と人との戦では耳を切り取るは上策ではない。女子供の耳を切り取って手柄とせんとする食わせ者も多いからな。」


俺も戦でほとほと困り果てたわいと、矢三郎は呟く。


「なら、アンタの戦場じゃ、耳以外で何を証拠に持って帰る?戦士の首や死体丸ごとじゃ大きすぎるだろ?しかも重い。」


アバが聞く。


矢三郎は笑いながら答えた。



「鼻を切り取るのだ。」


アバはその言葉を不思議がった。


「…?鼻でも男か女かわからないだろ?」


矢三郎は自分の上唇を摘み、言った。


「上唇ごと鼻を削ぐのだ。男には大抵口髭が生えておろつ?誤魔化しようがない。白石の御家の知恵じゃ。」


「へぇ、合理的。」


「…おぞましい会話で盛り上がってるんじゃねえよ、アバ、矢三郎サン!」


はくばにのったアゼルハートが2人の隣に乗り付けて言う。


「応、パーティ長か。」


「何だ、折角 為になりそうな話を聞いてたのに、おぞましいなんて。


……うわ、 おい、アゼルハート、前にいるアレ。」



アバの北の入江の民特有の真っ白な肌に一筆書きの金の眉を顰め、その下の鷹の蒼い瞳をその方向へ向けた。そこに居たのは鎖帷子(チェーンメイル)に申し訳程度の粗鉄の鉄板が付けられたアゼルハートのものとは比べ物にならない高級な流線型の美しい黒い鎧を纏った男と、ケープを身に纏った豊満な体つきで長い杖を持った、恐らく魔術師であろう女、そして、背中に大剣を背負った大男だ。


ーーー その何れも胸に小さな銀のプレートを光らせている。



「…うわ、アレじゃねえか」


アゼルハートは露骨に嫌そうな声を出す。


「アレですね」


どこかズレていて、常にのらりくらりしているエルフの女魔術師、ペルも珍しく露骨に気分を損ねる。


「折角 大手柄だったのに、アレが来ちゃったかぁ…」


「アレアレでは分からぬわ!説明せい!」


元々気が長い方ではない矢三郎ががなる。


「『赤鎧』だよ。」


「『あば』よ、何じゃそれは?」


「ウチのギルドに所属してる、銀板階級(シルバープレート)冒険者だけで構成された目の前に居やがるあの3人組の精鋭パーティのこと。腕は立つけど、目下のパーティの手柄を分捕るような、クソ意地汚い奴ら。」


「アゼルのバカが、あの腕の立つヤツらに目をつけられて以来、目の敵にされてるんですよ。」


精霊遣いのササラが話を半分も分かっていない矢三郎に噛み砕いて説明する。矢三郎がゴブリンに対して行った鬼畜の所業を見ていないこの冷静な黒髪の女は、割りと臆することなく彼と会話できるのだ。


「何じゃ、ヤツは揺すられとるのか。」


「良く今の話でわかりますね。」


「そりゃ俺も領民にやっとったからな。」


「赤鎧の連中め、予め待ち伏せておったな。冒険者にろくな奴が居らんのは昔から変わらぬか。」


「イヅマのじいさん、起きてたのかい」


「そりゃ、寝とったら馬から落ちるわい。…矢三郎殿、折角 討伐を手伝ってもらったが、あのギルド長では今度もまた押し切られて手柄を渡してしまうじゃろうから、報酬は約束できんやも知れぬのぅ」



「ほう、それは困る」



「あ、なんか悪いこと思いついた顔」


アバが悪戯っぽく笑いながら言う。


ーーーーー


「赤鎧」パーティ長、『剣奴(けんど)』ことエドバーは嗜虐的な笑みを浮かべながら萎縮したアゼルハートに話しかける。


「アゼルくぅん、今日はゴブリン退治だったんだってェ?」


「…っス」


萎縮し、ビビってこそいるものの、その目は未だに反抗的である。


「見せてよ、お手柄をさぁ。鉄板階級(アイアンプレート)になったんだろ?…当然、相応の数の耳は取れたんだよなァ?」


アゼルハートは唇を噛み、目を逸らす。


(クソ野郎が!高貴な方たちからの依頼受けまくって懐ホカホカの癖に、俺たちみたいな雑魚パーティにたかりやがって! …折角 みんなで努力して勝ち取った手柄ッ!


…そして、矢三郎サンの手助けがあったからこそ得られた手柄! ここでスカンピンになったらあの人に何をされるかわかったもんじゃねえ!…刺し違えてでも倒すし……いや、即死魔法が撃てるクソビッチ魔術師がいるパーティだ!敵いっこない…クソッ!諦めるしかないのか…! )



「寄越せって言ってるの。分かる?アンタらみたいな雑魚パーティより、私たちエリートの財布が潤う方が世の為になるでしょ?…身体中の穴という穴から血を吹かせて殺すわよ?」


ケープで身体をすっぽり覆った禍々しい気配を纏った女がアゼルハートに言い放つ。


「…クソ、後ろのソリに積んでありますから、勝手に取ってって下さいよ。」


「ペッ、最初からそう言えばいいんだよ」


大剣を背負った大男がアゼルハートの肩に唾を吐きかけ、先に馬車の方に歩き始めた二人に続いた。




ーーーーー




「何でッ!何でこうなるんだァアァアア!ヤバいよ!ヤベーよ!コイツら銀板冒険者だぞぉおおお! オレはただ、偉くなりたいだけなのにぃいいぃいい!!!!!!」


アゼルハートは街道のど真ん中で絶叫した。


足元に転がる無惨な死体に変わり果てた三人の銀板階級(シルバープレート)冒険者の死体を見てのことであった。




まあ、冒険者なんてカタギの人間がやるような仕事じゃないですからねぇ。そりゃクズばっかになりますわ。


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